プログラム準備金による節税効果〜ソフトウェアを軽視する政府?〜知らなきゃ損する税制講座(4)

» 2001年02月07日 12時00分 公開
[杉山靖彦,@IT]

今回のおもな内容

▼少ないチャンスを有効に活用したい「プログラム準備金」

▼「プログラム準備金」適用の注意点1 〜 受付先と受付期間

▼ 「プログラム準備金」適用の注意点2 〜 財務体質との関係


 情報化時代に必要な基礎知識を身に付けてもらうことを目的として545億円もの予算を組んだ「IT講習会」が、ソフトウェアの使用許諾権を軽視したような問題を引き起こしてくれました。

 なんと、主会場となる小・中・高校のパソコンにインストールされているソフトウェアについて、マイクロソフト社から使用許諾を正しく得ないまま、見切り発車していることが明らかになったというのです。

 マイクロソフト社は、「アカデミック・パッケージ」や「アカデミック・オープン・ライセンス」というライセンス形態による「IT講習会」でのソフトウェアの使用を許諾していません。しかし、主会場となる小・中・高校の多くでは、このライセンス形態でのソフトウェア導入が多いのです。

 このような問題からも、政府のソフトウェアやその使用許諾というものに対する理解の甘さをつくづく感じてしまいます。「IT革命」というものの、政府はインフラ整備(=公共事業)にばかり力を入れているように感じますが、ソフトウェア軽視では「IT革命」も絵に描いたもちに終わってしまうと思うのは私だけでしょうか。

少ないチャンスを有効に活用したい「プログラム準備金」

 さて、前置きが長くなりましたが、政府はハードウェアやインフラ整備しか考えていないかというと、中には非常に有効な施策も幾つかあります。その1つが「プログラム準備金」という税制です。

 「プログラム準備金」とは、ソフトウェアの引き渡し後に発生するバグ対応にかかる費用(補修費)を準備することを目的とした準備金のことです。

 この制度を利用すれば、青色申告書を提出するソフト開発会社は、汎用プログラムのうち制御プログラムの開発に要する支出に備えるため、収入金額に対し一定の金額を「プログラム準備金」として積み立て、その積み立てた金額を税金の計算上は費用として処理することができるので、結果的に“節税効果”を得ることができるというわけです。

<対象者>

青色申告書を提出するソフトウェア業やデータベース業を営む法人またはシステム・インテグレータ認定法人


<適用期間>

昭和62年4月1日から平成13年3月31日までに開始する事業年度


業種
<対象となる費用>
<積立限度額>
ソフトウェア業を営む法人
汎用プログラムのうち制御プログラムの開発に要する費用 収入金額の13% (収入金額50億円超の部分は5%)
汎用プログラムのうち制御プログラムの開発以外に要する費用 収入金額の23% (収入金額100億円超の部分は15%)
情報システム構想、企画、設計、評価、監査または情報システムの利用者に対する教育、指導に関する役務の開発に要する費用 収入金額の9%
データベース業を営む法人
データベース構成に要する費用 収入金額の9%
システム・インテグレータ認定法人 総合情報処理システム・サービスに係る情報処理システムの欠陥につき、その引き渡し後において、その法人が自己の責任により無償で行う補修に要する費用 収入金額の10% (収入金額100億円超の部分は5%、10億円まで)

 「プログラム準備金」として積み立てた金額は、積立をした事業年度の翌年度から4年間据え置き後、4年を経過したものから均等に取り崩し、収益として計上する必要があります。

取り崩し額=積立をした事業年度別の金額×(その事業年度の月数/48カ月)


 従って、節税効果といっても“課税の繰り延べ”ということにすぎないのですが、将来の費用に対して税制上前倒しで経費化が認められるものが少ない現状においては、有効な制度といえるでしょう。

 注意していただきたいのは、この税制の適用期間が平成13年3月31日までに開始する事業年度をもって終了することになっている点です。

  制度としては、ほぼ2年間延長されることになりそうですが(本国会で可決予定)、汎用プログラムのうち制御プログラムの開発費用に係る積み立ては収入金額50億円以下の部分に限られるとともに、データベースの構成に要する費用に係る積立率は9%から8%に引き下げられるという点が変更されることになるでしょう。

変更点
変更前
変更後
汎用プログラムのうち、制御プログラムの開発に要する費用 収入金額の13% (収入金額50億円超の部分は5%) 収入金額の13% (収入金額50億円以下の部分に限る)
データベース構成に要する費用 収入金額の9% 収入金額の8%

「プログラム準備金」適用の注意点1 〜 受付先と受付期間

 さて、「プログラム準備金」の税制について解説してきましたが、その適用を受けるにはいくつかの注意が必要です。

 その1つ目が、事業年度終了の日までに証明書や認定書が発行されていなければ、適用を受けることができないという点です。下記にその受付先と受付期間を示しておきますので、詳しくはそちらに問い合わせてみてください。

<基本プログラム、汎用プログラムおよび情報処理システム>

登録申請の受付先:財団法人 ソフトウェア情報センター

受付期間
第1回 2001年4月1日〜4月14日
第2回 2001年7月1日〜7月14日
第3回 2001年10月1日〜10月14日
第4回 2002年1月1日〜1月14日

<データベース>

登録申請の受付先:経済産業省 商務情報産業局 情報処理振興課

受付期間: 事業年度終了日の30日前まで

<システム・インテグレータ>

登録申請の受付先:経済産業省 商務情報産業局 情報処理振興課

受付期間:毎年9月末まで

「プログラム準備金」適用の注意点2 〜 財務体質との関係

 2つ目の注意点は、新会計制度(税効果会計)の導入にまつわる財務体質との関係が挙げられます。

 節税上は有効な「プログラム準備金」であっても、新会計制度(税効果会計)の導入に伴い、「プログラム準備金」積立時においては、財務体質が悪化したように見えてしまうという点です。

 一方で、有税償却をしているような企業にとっては、逆に税金の先払いをしているということから財務体質が改善されているように見えてしまいます。

 これは、2000年までであれば、「プログラム準備金」は貸借対照表上の資本の部に計上され、積み立てた額がそのまま自己資本の増額につながったのですが、「プログラム準備金」として積み立てた額の40%(実効税率)はいずれ支払うであろう税金ということで、税効果会計の導入に伴い、負債の部に計上されることになってしまったためです。

 確かに、「プログラム準備金」は税金の繰り延べにすぎず、将来支払うべき税金を負債の部に計上することが理論的といえば理論的なのですが、財務体質を歪めて表してしまうのはいかがなものかと思います。

 このような現象が起こるということも、この「プログラム準備金」という税制を適用する場合には、押さえておきたいポイントですね。

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