The Rational Edge

『オープン』の正体 (後編

by Douglas Heintzman
SWG Technical Strategy
IBM Software Group

2003/10/22

 オープン・ソース・ソフトウェア(OSS)に代表される『オープン』という概念に関し、『オープン』の正体 (前編)では、その歴史的背景や類型の整理を行った。後編では、『オープン』概念(おおむね、OSSについての)現状分析および今後の課題を考察する。(編集局)

■OSSプロジェクトにおける健全性と持続性

 Linuxに代表されるオープン・スタンダードの人気が高まると「オープン・スタンダードやオープン・ソースは、ソフトウェア階層のどのレベルにまでコモディティ化して食い込み、またその早さはどの程度のものなのか?」という興味深い疑問がわいてくる。この疑問に答えるには、多くの要因を検討しなくてはならないのだが、最も重要な点は「(1)コミュニティの健全性と持続性」「(2)業界主要ベンダの参加」という2つの視点から考えることだろう。

 オープン・ソース・コミュニティの規模や相対的な見地からみた健全性については、基盤/プラットフォームプロジェクトに焦点を絞ったソフトウェア開発コミュニティの作業と、ソフトウェア群の上位レベルで進めるプロジェクトに焦点を絞った業界の主要企業の作業を区別する必要がある。ここで、今日の基盤製品のOSS(オープン・ソース・ソフトウェア)プロジェクトにドライブをかけている上記2つの要因(「(1)コミュニティの健全性と持続性」「(2)業界主要ベンダの参加」)について考えてみたい。

◎健全な大規模開発者コミュニティ

 前編で述べたように、Linux、Eclipse、Mozilla、Globus、Apacheといったプロジェクトには、健全かつ巨大な規模を誇る開発者コミュニティがある。それぞれのプロジェクトに関係するコミュニティが一応の成功に至った背景には、ビジネス的な観点と開発者の側の観点からみた成功要因が絡んでいる。

<<ビジネス的な観点>>

【1】上述した大規模なオープン・ソース・プロジェクト(を活用したITシステム)は、エンドユーザーに事業価値の増大を提供すると認識され始めている。このようなコミュニティでのプログラムは、開発のプロセスにおいて、モジュール性の確保と標準への準拠を常に想定している。モジュールの再利用可能な性質、標準への準拠という要素は、企業や政府関係組織が新たにITシステムを構築するに際し、有効に作用することが多い。

【2】これらのオープン・ソース・プロジェクトは、少なくとも1社の大手ソフトウェア・ベンダが積極的に発起人の役割を担っており、プロジェクトに対し、多大な支援を行っているものだ。かつての状況と比較すれば、オープン・ソース・プロジェクトに携わることで得られる利益も増大している。商業ソフトウェア・ベンダ各社は、オープン・ソース・プロジェクトの活動を通じて、(一般的な意味での)ソフトウェアの中でコモディティ化されるレイヤがあることを発見し、プロジェクトに参加するベンダ群(あるいは個人)とともに、共同で投資することで、効率的な投資償却ができると認識し始めている。従来、インターフェイスなどは、ベンダ独自の規格が存在し(それはベンダの競争力の源泉でもあった)たが、オープン・ソース・プロジェクトに参加することで、各ベンダの独占は排除され、複数のプラットフォームでサポートできる共通の規格(まさに標準)の開発を推進するようになっている。このことは特にLinuxに当てはまる。

【3】進行中の『基盤』製品のプロジェクトのサポートに不可欠な高度スキルは、ソフトウェア開発コミュニティの中で難なく手に入るだろう。これらのスキルは、ハッカー・コミュニティ()、技術者(エンドユーザーも含む)、無償でサービスを提供するビジネスモデルを有する企業、ソフトウェア・ベンダ各社、学界などが供給する。また、さまざまなスキルを有する人材は、OSSのコードを使用しながらコンピュータサイエンスの概念を教授する教育機関からも輩出される。従って、今後は高度な教育を受け、オープン・ソース環境やオープン・ソース・プロジェクトで蓄積された技術に慣れ親しんだプログラマが、各種専門学校や大学から続々と輩出されてくることになるだろう。

【4】(設計、開発、テスト、文書化などの)改善に向けた開発プロセスの長期的な計画が必要とされている。オープン・ソース・コンピューティングの将来をテーマとしたようなカンファレンス、市場の関心、そして年々増加する世界的なコラボレーションなどで示されるオープン・ソース・コンピューティングの未来は、長期的な視野に基づく開発プロセスの重要性を指摘する。

<<開発者の観点>>

【1】コードを洗練させながら開発していくことに強い関心がある。強力なオープン・ソース・プロジェクトは、プログラマが自分のスキルやテクニックを披露できる「美しいカンバス」のようなものである。プログラマの中には、カンバスの上で発揮した手腕によって良好な評価を獲得し、実績を積み上げることで将来の自分の雇用者の関心を引こうという目的を持つ者もいる。

【2】ユーザーと開発者がオーバーラップしている。あるオープン・スタンダードのプロジェクトあるいは、あるOSSプロジェクトに、さまざまなバックグラウンドを持つ企業やプログラム開発者が参加することで、(そのプロジェクトで開発しているプログラムの)コード群に、各産業分野からのニーズが直接反映されるようになる。さまざまな人間が集まることは、プロジェクトのビジネス的、技術的問題を浮き彫りにし、解決を早めることにもつながる。コミュニティの健全な発展へとつながる重要な要素である。

【3】多様で対話のあるコミュニティ。膨大な数のプロジェクト参加者から提出されるさまざまなアイデアは、プロジェクトに頻繁な革新、最適化、迅速なバグ修正という恩恵をもたらす。

【4】プロジェクト/コーディング全体で発揮される強いリーダーシップ。オープン・ソース・プロジェクトの「保守担当者」(リリースごとに搭載するものと削除するものを決定する担当者)には、強力なリーダーシップの保持が不可欠だ。Linuxのオペレーティング・カーネルを作り出したLinus Torvalds氏は、このようなリーダーシップを持つ人物の素晴らしい例だろう。強力なリーダーシップはプロジェクトに、集中と活気を導入し、プロジェクトの正しい方向性を維持するのに役立つ。プロジェクトが成功するか否かは、強力なリーダーシップにかかっているといっても過言ではない。成功を収める重要なプロジェクトは、強力なリーダーシップを引き寄せ、その強力なリーダーシップが、プロジェクトの健全性を維持する。

 以上のことから、冒頭で紹介した『基盤』製品の代表的なプロジェクト(Linux、Eclipse、Mozilla、Globus、Apache)は健全であり、持続性もあるプロジェクトと規定することができる。

◎業界大手の参加

 存続力のあるOSSソリューション(プロジェクト)への業界大手企業の参加という2つ目の要因も非常に重要だ。Linux、Eclipse、Mozilla、Globus、そしてApacheは、どれも参加者(企業)が積極的で、業界の中で規模も影響力が大きい部類に入るソフトウェア・ベンダが支援をしている。Linuxコミュニティでは、HP、IBM、サン、そしてオラクルなどを積極的な貢献者と見なしている。Eclipseコミュニティには、ボーランド、IBM、オラクル、サイベース、モンタビスタ、そしてレッド・ハットをはじめとする多数のベンダが参加している。Mozillaも、ネットスケープ、AOL、IBM、レッド・ハット、そしてサンが参加している。また、GlobusはIBM、マイクロソフト、そしてシスコが後援している。さらに、Apacheにはアップル、IBM、サン、コラブネット、そしてレッド・ハットなどが積極的に貢献している。もちろん、これらは構想に関与する多数の貢献者(企業)のほんの一部にすぎない。そのほか、ブラウン大学、マサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学など、多数の教育機関からも参加している。

 ますます多くの大手ソフトウェア・ベンダがオープン標準やオープン・ソース・ムーブメントに関心を示し始めている理由は何だろうか? 本質的には、これらのコミュニティへの投資には次の3つの理由からビジネス的に大きな意味があるためだ。

【1】オープン・スタンダードの短期間の採用を促進。オープン・スタンダード支持の戦略判断を下し、オープン・スタンダードの広範な普及をビジネスモデルの基盤にしている企業では、自社だけでなく業界全体でも採用が促進されるよう、オープン・ソース・プロジェクトをサポートしている。

【2】戦略的ビジネスツールとしてのOSSの利用。企業がITシステムにOSSを採用することで、競合他社の「独占」を排除し、競争が存在する市場を創出しながら、新たなビジネス・チャンスを切り開くことができるようになる。OSSをサポートするベンダは、OSS関連サービスのほか、オープン・ソース・プラットフォームをベースにしたコンポーネントを販売することで利益を得る。そして、これらのベンダの顧客は、必要に応じてベンダ(1社に限らず)の提供する追加コンポーネントやサービスでシステムを拡張できることに満足している。OSSは、あるベンダが独自の基準点を設けて管理していた技術の構造上の問題(改変不可など。技術を独占していた企業にとっては利点だが)を排除することで、「市場の格差を排除」する。

【3】企業間のマインドシェアの拡大。オープン・ソース・コミュニティへの積極的な参加は、企業間の提携関係を強化し、広範囲にわたる開発者との関係構築を助けてくれる。

 以上のように、ベンダがオープン・ソース・プロジェクトに参加することの重要性を軽視することはできないことがわかるだろう。プロジェクトに参加しているベンダは、高度で熟練を要するプログラミングの専門知識や技術をプロジェクトに提供することになる。このようなベンダの関与は、オープン・ソース・コミュニティに安定をもたらし、技術の長期的な存在価値を示してコンシューマを安心させるのである。また、ベンダが提供する技術資源は、オープン・ソース・コミュニティそのものに勢いをつける。例えば、ここ3年のスパンでみると、AOLがNetscapeのベースとなるコードをMozillaに寄贈したり、IBMがEclipseフレームワークをEclipse Projectに寄贈したことで、2つの新しいOSSムーブメントが実現した。さらに、これらのベンダの出資は、政府によるオープン技術の標準化の動きに向けた「資金源」となることもある。最近の例としては、Linuxの米国政府によるセキュリティ標準認定に向け、オラクルとIBMが関与(数百万ドル規模の出資になると思われる)すると発表している。

■ミドルウェアOSSプロジェクトの課題

 ミドルウェアOSSは、多くの企業(その多くは商業ミドルウェア製品の開発を目指す小規模企業だが)に潜在的なビジネスチャンスを示す。周知のとおり、チャンスは競争を誘発し、競争は革新を生み出すのである。ミドルウェアOSSプロジェクトの中には、そのような小規模企業を取り込みながら、基盤製品の開発を推進していくものもある。われわれはすでに、アプリケーション・サーバの基本機能がApacheプロジェクトに移植された例を目にしている。これらの機能は、多くの企業や政府関係組織にとって非常に有用であり、近い将来、広範囲に利用される可能性が高い。

 しかし、ミドルウェアOSSプロジェクトの多くはまだ、大企業、中堅、小規模企業を問わず、ビジネスシーンに大きな影響を与えられずにいるといっていい。理由はさまざまだが、いまだ影響力を持ち得ないプロジェクトには、健全性や存続可能なコミュニティの存在、主要ベンダのサポートといった、『基盤』製品のプロジェクトを成功に導く特性を持ち合わせていないのである。

 さらに重要なことは、現在の多くのミドルウェアOSSプロジェクトには、スケーラビリティ、信頼性、大企業のサポート、複数言語の対応、堅牢なマニュアルの存在、統合化された開発ツールといった、企業のニーズに応える機能や特性が欠如している点が挙げられる。主要ソフトウェア・ベンダ各社の支援を得ているOSSプロジェクトと比較すると、多くのミドルウェアOSSコミュニティは、テスト用ツールの購入や政府の標準準拠テストを受けるための資金を調達するのが困難であることも明らかになっている。セキュリティという、重要な懸念材料もある。一般的な商業製品のアーキテクチャは、OSSのミドルウェアプロジェクトには不可能な方法でセキュリティ処理を施している。OSSのミドルウェアプロジェクトがターゲットとするようなビジネス市場は、代表的なISVの独占市場といってもいいのだが、このようなISVは、市場が要求するビジネス仕様のソフトウェア製品に必要な要素(セキュリティをはじめとした機能)をあらかじめ組み込むことで、競争の激しい市場での生き残りを図っているのである。

 近年、商業アプリケーション・サーバのベンダ各社は、技術革新に猛烈な意欲をみせている。特にミドルウェア市場は、技術革新の波の渦中にあり、今後も頻繁な進化を続けていくだろう。

■ライセンスの概要

 OSSプロジェクト成功の鍵を握るライセンスが果たす役割については、さまざまな議論が戦わされている。OSSライセンスを「ガン」に例える極論も業界の一部企業から出ている。ライセンスをめぐる議論は誇張されているというのが筆者の意見だ。OSSプロジェクトでは、著作権情報の公表や(一部で要求される開発者の記載以外、何の義務もない非常に柔軟な)BSD(Berkley Software Distribution)タイプのライセンス、配布する修正物のソースコードを同じライセンスで公開する必要のあるGPL(GNU General Public License)まで、さまざまなタイプのライセンスがある。一部には、この制限が知的財産権を制限するとの意見や、これを「ウイルス的」と表現する声もある。だが、修正物のソースコード公開が要求されるのは、コードを自分の組織の外に再配布する目的がある場合だけだ。エンドユーザーにとっては、ソースコードの修正を公表するという要求はさほど重要なものではない。

 さまざまなOSSライセンスに取り組んできた業界には膨大な経験がある。たいていの場合、これらのライセンスは業務ソリューションへのOSS統合を妨げるものではないとの共通認識がある。

■オープン・コンピューティング、オープン・スタンダード、そしてオープン・ソースを成功へと導いているのは何か?

 オープン・コンピューティング、オープン・スタンダードが成功した理由は明らかだ。これらはネットワーク化された世界において必要不可欠な機能であり、ビジネスで非常に重要な柔軟性と俊敏性の両要因に絶対不可欠な要素だからである。

 しかし、話がOSSの人気となると説明がややあいまいになってしまう。これまで述べてきたように、OSSプロジェクトは、それぞれ異る特徴を持っており、すべてが市場で成功を収めたわけでも、市場で成功するポテンシャルを秘めているわけでもない。実際、成功したカテゴリに分類されるOSSプロジェクトの数は非常に少ない。企業や政府関係組織がOSSに期待する一般的な理由はいくつかあるし、具体的には特にLinuxなど、『基盤』製品のプロジェクトに目を向けている明確な理由もいくつかあるのだが。

◎一般的なメリット

 一般に、企業や政府関係組織はOSSの次のような特徴に価値を見いだしている。

【1】修正時の柔軟性。一部の企業や政府関係組織では、特定の業務的あるいは技術的要求を満たすため、ベースとなるコードに対して専門的な修正を要求する。OSSはこのような修正に対する柔軟性を実現している。NSA(米国家安全保障局)の取り組みがまさしくこれで、同局はセキュリティを高めたLinuxを作り出している。

【2】費用対効果。TCO(導入から管理までの全コスト)については議論も多いが、導入時のコストに関してOSSは非常に有利だ。ライセンス関連で大幅なコスト削減を実現したとの事例を公表している企業もある。その一方で、スキルの希少性から、サポート費用や保守費用が上昇し、コスト上の優位性を帳消しにしてしまうとの意見もある。スキルの供給量や賃金が事例によって異なるため、経済的な効果は異なってくる。残念ながら、OSSと商業ソフトウェアの両方のTCOを比較した明確なデータはまだない。

◎具体的なメリット:Linuxの場合

 『基盤』製品のプロジェクトという具体的な事例、特にLinuxの場合には、企業や政府関係組織は次のような価値を見いだしている。

【1】複数プラットフォームのサポート。一部の企業や政府関係組織は、複数のアーキテクチャをまたぐ共通の運用環境を導入することの利点に気付いた。また、1台の特定のアーキテクチャにとどまらず、アプリケーションを拡張できる可能性にも利点を見いだしている。例えば、Linuxは、携帯電話からスーパーコンピュータまでのあらゆるシステムで動作する。企業がインテル・プラットフォーム上でアプリケーションを導入すると、アプリケーションをIBMのpSeriesやサンのSPARCファミリといったミッドレンジシステム、あるいはIBMのzSeriesメインフレームシステムに対応させるべく拡張する必要が出てくる。プラットフォームを移行する理由としては、ほかにも信頼性、扱いやすさ、企業/部門の合併、セキュリティ、あるいは専門技能の活用といったものがある。このような運用環境に応ずる柔軟性があれば、企業や政府関係組織は組織内のITのサポートを自らの業務要求に適合させ、業務要求の変化に応じてITのサポートを変えることができる。

【2】標準化の実施/奨励。標準への準拠はコミュニティ開発ソフトウェアの自然かつ必然な特性だ。このことから、一部の企業や政府関係組織はオープン・スタンダードとオープン・コンピューティングの奨励、もしくは実施の手段としてOSSを採用する判断を下してきた。例えば、LinuxやApacheを導入することは、最も重要なインターネット標準の導入を意味する。基盤レイヤで標準に徹底的に準拠することにより、コンフィグレーションや、アプリケーションおよびベンダの選択が非常に柔軟になる。

【3】監査能力/セキュリティ。一部の企業や政府関係組織は、コードの基盤部分の仕組みを見ることができれば、そのコードの信頼性やセキュリティに対する確信が高まると考えている。この透明性に関する議論は、美的価値観としては理にかなっており、これがOSSを選択する根本的理由だとする意見も多いが、OSSが本質的に商業ソフトウェアよりセキュリティが高い、あるいは安定していることを示す信頼できるデータはいまだ存在しない。Linuxは完成度の高さ、大手ソフトウェア・ベンダ各社の関与、多数の検査担当者といった点で最高の条件を提示してくれるが、結局は、バグやセキュリティホールが非常に短時間のうちに発見され、修正されることを意味するに過ぎない。その一方で、多くの分野においては、アーキテクチャや多くの商業ソフトウェア・ベンダ各社が実施する品質管理手法のおかげで、商業ソフトウェアの方が信頼性/セキュリティ性能が高いことも明白なのである。セキュリティをプログラムの中に組み込み、プログラムのセキュリティを個別に評価することは、プログラムの信頼性向上を図るためには、必ず行われなくてはならないことだ。いずれにせよ、セキュリティに重点を置かなくてはならないのが基盤レイヤなのだ。

【4】経済発展要素としてのLinux。この状況は政府とLinuxに特定のもので、一般的には開発途上国で見られる。政府が自らの購入力を利用し、OSSプラットフォームを中心に進化するエコシステムを取り巻く自国の技術やビジネス活動を活気づけるために必要とされる十分な影響を与える。これにより、国内のソフトウェア業界が活気づくことを期待しているのだ。Linuxの採用を加速させ、スキルの開発や投資の中心となって活動するLinux検証センター設立を政府が後援するケースも目にする。

■オープン概念と企業、組織の未来

 オープン・コンピューティング、オープン・スタンダード、OSS、そしてオープン・スタンダードを組み込んだ商業ソフトウェアは技術の進化を可能にするものであり、企業や政府関係組織がその価値を認識しているため、どれもが成功を収めている。企業や政府関係組織は、柔軟性やオンデマンドへの柔軟な対応実現に努めていく。オープン・コンピューティング・プラットフォーム(ハードウェアとソフトウェアの両方)は、オンデマンド・コンピューティングへと向かう長い道のりを行くのに絶対不可欠な基盤だ。eビジネスの進化に標準が果たしてきた役割は十分立証済みである。標準に対応するオープンな商業プロジェクトやオープン・ソース・プロジェクトの一環として、オープン・スタンダードが果たす役割は、敏感で焦点の絞られた弾力性のあるeビジネスの進化のかなめとなるだろう。 

 企業や政府関係組織は、オープン・コンピューティング、オープン・スタンダード、そして複数のオープン・ソース・プロジェクトに取り組んでいる。IBMはこれらの概念に取り組むという戦略的判断を下し、オンデマンドへと向かう顧客をサポートできるよう自社のハードウェア、ソフトウェア、そしてサービスビジネスを調整しているのである。

【Notes】
ここでは、「ハッカー」という言葉は本来の意味で使われている。本来、「ハッカー」とはコンピュータに関心を持つ高いスキルのある人物を指す言葉で、犯罪行為を行う人物のことではない。


本記事は「The Rational Edge」に掲載された「An introduction to open computing, open standards, and open source」をアットマーク・アイティが翻訳したものです。


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