[HP Application Server 8.1編]

アイ・ティ・ブースト
本松慎一郎
2002/5/24

「とにかく知りたい人のためのStep by Stepシリーズ」は、製品の使い方を解説する中で製品評価のポイントもピックアップしていく。製品評価担当者、製品を使った開発を行うエンジニアの方々をはじめ、製品選択の際の参考にしてほしい。(編集局)

第1回 HP Application Server 8.1の評価ポイント
 
 Bluestoneを継承したHP Application Server 8.1

今回の内容
Bluestoneを継承したHP Application Server 8.1
無償版でも負荷分散に対応が特長
エンタープライズ用途に対応する拡張版
HP-ASの動作環境

 「HP Application Server 8.1」(以下HP-AS)は、Hewlett Packard(HP)が提供するJ2EEアプリケーションサーバです。HPのアプリケーションサーバとしては、一昨年のBluestone Software買収後に提供された「HP Bluestone Total-e-Server 7.3」がありますが、今回、アーキテクチャが大幅に変更され、それに伴って製品名も変更されました。

 HP-ASの評価ポイントとしては以下の項目が挙げられます。

評価ポイント

  • J2EEテクノロジを採用し、 マルチ・プラットフォーム対応で、開発の容易性や移植性が格段に向上
  • Core Services Framework(CSF) テクノロジ上に構築されている。サービス指向のアーキテクチャを採用することにより、サービスをプラグ&プレイでアプリケーションサーバに追加していくことができる
  • JSP 1.2/Servlet 2.3準拠
  • EJBとORBサービス対応
  • EAR、WAR、EJB-JARなどのパッケージングとデプロイを行うRadPakツールの搭載

 HPは、HP-ASの標準版をライセンス無償にしました。無償であるからといって性能が劣るわけではありません。アプリケーションサーバがコモディティ化(普及化)する中で、HPがとった大胆な戦略といえます。

 HP-ASには、無償の標準版のほか、有償の拡張版が提供されています。拡張版は、標準版の機能に加え、分散トランザクション処理やメッセージング機能など、エンタープライズに向けた機能が付加されています。標準版と拡張版の機能を下表に示します。

機能 仕様 標準版 拡張版
CSF(Core Services Framework) JNDI 1.2.1、JMX
JSP JSP 1.2
サーブレット Servlet 2.3
Enterprise Java Beans EJB 1.1 および EJB 2.0の大部分 ※1
Object Request Broker
(Orbix 2000)
RMI/IIOP 1.0
セキュリティ JAAS 1.0、X.509

他社コネクタのサポート
JCA 1.0
トランザクション・サーバ JTA 1.0.1、JTS 1.2、OTS 1.1

(1フェイズ・コミット)

(2フェイズ・コミット)
XA-互換 JDBC ドライバ JDBC 2.0
Java Messaging Services JMS 1.0.2
Load Balance Broker
Dynamic Application Launcher
ステート管理(メモリ上)
パーシスタント・ステート管理(JDBCもしくはファイル経由)
Hp RadPak開発ツール EJB CMP 1.1
WebGain VisualCafe 4.5 プラグイン
WebGain TopLink 4.0との統合
※1:以下のEJB 2.0の機能をサポート
・MDB(Message Driven Beans)、XA対応JMSのサポートを含むRMI/IIOPによる相互接続
・外部のCORBAオブジェクトからのEJBへのアクセス
・ローカル・インターフェイス
・ホーム・メソッド
・CMP 2.0(WebGain Toplink 4.0 との統合による)

 無償版でも負荷分散に対応が特長

 標準版は無償ですが、他社の有償製品に遜色ない機能をもっています。たとえば、負荷分散の機能があげられます。

■J2EE 1.3を実装

 JSP 1.2、Servlet 2.3や、JAAS 1.0、JCA 1.0など主なJ2EE 1.2から機能追加された部分が実装されています。EJB 2.0についても中心的な拡張であるMDB(Message Driven Beans)やローカル・インターフェイスなどがサポートされています。メッセージングサービスを利用しないようなアプリケーションであれば、J2EE 1.3を見越した開発が行えるスペックを持ちます。

■負荷分散に対応

 標準版でも、メモリベースのステートサーバを搭載しており、複数のサーバ間でセッションを維持することができます。さらにDynamic Application Launcherによる動的なアプリケーションサーバプロセスの起動、LBB(Load Balance Broker)による負荷の小さいサーバへのリクエストの振り分けなど、大規模なシステムにも適用可能な機能を持ちます。

■独自の開発環境「RadPak」

 独自の開発環境であるRadPakによる開発を行うことができます。RadPakもHPによって無償で提供されていますがJSP/サーブレットに加え、EJBコンポーネントの作成も可能です。

 RadPak以外にもWebGain社のVisual Cafe4.5と連携した開発もサポートされています。

■充実したドキュメンテーション

 ドキュメントの充実も特徴の1つです。管理者用ドキュメント(Administrator's Guide)、開発者向けドキュメント(Developer's Guide)、技術解説ドキュメント(Technical Guide)など1000ページ近くのPDF文書が付属します。またそれらとは別に、3つのレベル(Beginner、Intermediate、Advanced)に分けたTrial Mapに沿って、HP-ASの使い方を学べるようになっています。

 エンタープライズ用途に対応する拡張版

 拡張版は、エンタープライズ用途に対応したさまざまな機能を持っています。拡張版のみにある機能は以下のとおりです。

■サーバダウンでもセッション情報を保持

 Persistence Session State Managementは、セッション情報を永続性のあるストレージ上に保存する機能です。ファイルやJDBC経由でのデータベースに保存することが可能です。負荷分散した環境下では、あるアプリケーションサーバがダウンしてもほかのマシンにそのサービスを切り替え、セッション情報を継続的に利用することが可能です。ショッピングカートに放り込まれた商品はサーバが停止して別のサーバ切り替わってもショッピングカート上からは消えません。高可用性を提供するうえで必要な機能となります。

■JMSへの対応

 HP Message Services(HP-MS)は、JMS(Java Messaging Service)のフル機能を提供します。HP-MS Message ServerはCSF上で稼働し、TopicやQueueのプロバイダを提供します。また、message persistence、durable subscribers、そしてtransactional messagingを提供します。サーバレスなモードも用意され、raw IP multicast、lightweight reliable multicast protocol(LRMP)、multicast/TCP hybridなどを提供します。JAASやSSLを利用したセキュリティサービスも利用可能です。

■複数データベース間でのトランザクションを保証

 標準版ではシングルフェイズ・コミットのみのサポートとなりますが、拡張版では2フェイズ・コミットをサポートします。複数のデータリソースを利用した場合でもトランザクション性を持たせることが可能です。さらにネステッド・トランザクションも提供します。これらの機能により、より柔軟にトランザクションを扱うことができるでしょう。

 HP-ASの動作環境

 HP-ASのもう1つの大きな特長として、幅広いOSへの対応があります。標準版の動作環境を整理すると以下の表のようになります。

CPU Intel Pentium III 400MHz以上
メモリ 128Mbytes以上
OS Microsoft Windows 2000、Microsoft Windows NT 4.0 SP6、Solaris 8、HP-UX11i、Linux 7.1
Java JDK 1.3.1以上
HDD 300Mbytes以上

 今回は、HP-ASの評価ポイントを説明しました。次回はいよいよインストールを行い、HP-ASの機能検証を行っていきます。

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