Red Hat Enterprise Linux 4

RHEL3とRHEL4のベンチマーク比較

 高機能化の弊害としてパフォーマンスの劣化が見られることも多いが、RHEL3から4へのバージョンアップではパフォーマンスの改善が大きくうたわれている。そこで、いくつかのベンチマークテストを実施し、どの程度の改善が見られるのかを簡単に検証してみた。ベンチマークテストは、以下の環境で行った。

  CPU: Pentium 4-2.4GHz(L2 512kbytes、FSB 533MHz)
  メモリ: 512Mbytes DDR(PC2100)
  チップセット: Intel 845G
  ハードディスク: ATA100 80G

HDBENCH cloneによる簡易テスト

 まず、おおよその目安としてHDBENCH cloneによるテストを行ってみた。HDBENCH cloneはハードウェアの性能評価を行うツールなので同一ハードウェア上でのソフトウェア同士の性能比較には適さないのだが、試してみるとそれなりに差が表れた。

画面5 HDBENCH cloneの結果(RHEL3 update4)

画面6 HDBENCH cloneの結果(RHEL4)

 当然ながらCPUやメモリの性能評価に大差はないが、ディスクI/O(DISK READ/WRITE)で25%程度の向上が見られた。

iozoneによるファイルシステムの計測

 次に、iozoneを使用してディスクI/Oの詳細なテストを行ってみた。izoneはファイルシステム用ベンチマークソフトで、http://www.iozone.org/からソースやRPMなどのバイナリをダウンロードできる。今回はRPMファイルを使用した。

 iozoneは1回のシステムコールをレコードサイズ単位で実行し、これを指定のファイルサイズまで繰り返し読み込みや書き込みをを行う。今回は-aオプションを指定()して自動モードとし、レコードサイズを4k〜16Mbytes、ファイルサイズを64k〜512Mbytesの組み合わせで計測した。


iozone計測結果(グラフ拡大
グラフ1 RHEL3の書き込み性能結果 グラフ2 RHEL3の読み込み性能結果

グラフ3 RHEL4の書き込み性能結果 グラフ4 RHEL4の読み込み性能結果

注:iozone実行時に指定したオプションは以下のとおり。
「-i 0 -i 1 -Rab」

 今回はATA100接続した廉価なIDEハードディスクを使用したが、全体的に20〜25%程度のパフォーマンス改善が見られた。また、最大値も同様に上昇しているのが分かる。

mysqlbenchによるアプリケーション・スレッドの計測

 スレッドやディスクI/Oなど、システム全般のパフォーマンスが顕著に表れるRDBMSを利用したベンチマークテストも行ってみた。今回は、MySQL+mysqlbenchを採用した。mysqlbenchは、PostgreSQLで使用されているpgbenchをMySQLに移植したもので、http://www.mysql.gr.jp/frame/modules/bwiki/?Contribからダウンロードできる。

 RHEL3、4ともにMySQLが同梱されているが、前者は3.23、後者は4.1と世代が異なるバージョンであったため、MySQL ABからダウンロードしたMySQL 5.0.3のRPMファイルを両者にインストールした。my.cnfなどはデフォルトのままとし、チューニングも施さない。結果は以下のとおりとなった。

グラフ5 mysqlbenchの結果。接続の確立に要した時間を含めた場合と含めない場合をそれぞれ計測
注:MySQLが稼働しているホスト上で測定した。ストレージエンジンはMyISAM。

 ディスクI/Oほど顕著な差は出ていないが、RHEL3に対してRHEL4では性能向上が見られる。評価機のワークメモリが少ないため同時接続クライアント数を52より多くすることはできなかったが、クライアント数(同時処理数)に影響されることなくトランザクションが一定以上の性能を保持しており、処理に改善が施されていることがうかがえる。

 試行回数も少なく、厳密なベンチマークテストとはいえないが、それでもRHEL4のパフォーマンス向上を見ることができた。

コラム 評価版ISOファイルの入手方法
 レッドハットは、ISVやSIerを通したパートナー販売を重視する方向にある。そのため簡単にRHELを入手するというわけにはいかないが、30日限定評価版のISOファイルが提供されている。既存ユーザーはRed Hat Networkを通じて、新規ユーザーは下記URLから入手できる。

http://www.redhat.com/software/rhel/eval/

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Index
プロダクトレビュー
 Red Hat Enterprise Linux 4
  Page 1
RHEL4における変更点
 カーネル2.6の採用
 SELinuxの搭載
 デスクトップ環境
 管理ツール
  Page 2
RHEL4の製品構成とサポート
 収録されているパッケージとそのバージョン
 サポート期間と製品サイクル
  Page 3
RHEL3とRHEL4のベンチマーク比較
 HDBENCH cloneによる簡易テスト
 iozoneによるファイルシステムの計測
 mysqlbenchによるアプリケーション・スレッドの計測

Linux Squareプロダクトレビュー


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