FreeS/WANによるIPSecの導入と運用[前編]
LinuxでIPSecを使おう

インターネット上でも安全な通信が可能な暗号化通信。これを実現する技術の1つが「IPSec」である。LinuxでIPSecを利用するには、「FreeS/WAN」というIPSecスタックを用いることになる。まず、これをインストールすることから始めよう。

宮本 久仁男<kmiya@coe.nttdata.co.jp>
NTTデータ COEシステム本部
システム技術開発部第三技術開発担当
2002/2/26

FreeS/WANの概要

 FreeS/WANはLinuxにおけるIPSecスタックの実装であり、IPSecの仕様の大部分を満足する作りとなっています。具体的な構成についてはこの後述べていきますが、Linuxカーネルにも手が入るため、導入にはそれなりの手間とスキルが必要となります。本稿では、FreeS/WANの概要から導入、そして動かすまでを一通り説明します。なお、IPSecそのものについては技術解説 IT管理者のためのIPSec講座」に分かりやすい説明があるので、そちらを参考にしてください。

 IPSecの仕様の中には、実装が必須の部分とオプションの部分とがあります。FreeS/WANでは、必須であってもセキュリティが弱いなどの理由で実装していない項目があります()。こういった部分に留意して運用する必要はあるものの、LinuxにおけるIPSecカーネルの定番であることに変わりはありません。

注:例えば、DESによる暗号化はセキュリティ上の理由で実装されていません。

FreeS/WANの構成

 FreeS/WANは、大きく分けて3つのものから構成されています。

  1. KLIPS
     KLIPSは、カーネルにIPSecの暗号化通信機能を提供します。Linuxカーネルに対するパッチという形で提供されるため、導入するにはカーネルの再構築が必要となります。

  2. PLUTO
     PLUTOは、IPSecの鍵交換をつかさどるIKEデーモンです。ユーザープロセスとして動作するため、カーネルに対する変更は特に必要ありませんが、動作に当たってはKLIPSが機能していることが前提になります。

  3. 管理用コマンド/スクリプト類
     KLIPSとPLUTOの制御のために、多くのコマンド/スクリプト類が用意されています。通常は「ipsec」というスクリプト経由でこれらのコマンド/スクリプト類を使用します。システム管理者がipsec以外のコマンドを直接実行する必要はありません。

 
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Index
FreeS/WANによるIPSecの導入と運用[前編]
− LinuxでIPSecを使おう −
Page 1
FreeS/WANの概要
 FreeS/WANの構成
  Page 2
FreeS/WANのコンパイルとインストール
 FreeS/WANのアーカイブの入手
 FreeS/WANのアーカイブの展開
 カーネルパッチの適用
 設定およびコンパイル
 カーネルのインストール
 リブートと確認
 ほかのマシンへの展開

Linux Square全記事インデックス


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