書評

デザイン、ユーザビリティ、厳密性
プロフェッショナルなWeb制作に役立つ5冊

新野淳一
@IT編集局
2000/05/22

この5冊
Webサイト・マネジメント
WEBサイト・デザイン改訂版
カラー版 HTMLタグ辞典
Webサイトユーザビリティ入門
正しいHTML4.0リファレンス&作法

 インターネットを通じてさまざまなサービスを提供する商用のWebサイト構築では、Webサイトのデインザインは決定的に重要だ。一般の利用者は、トップページへアクセスしてから数十秒でそのWebサイトが魅力的かどうかを判断するという。その上で、Webサイトには利用者が探している情報をすぐに見つけられたり、簡単に商品を購入できるような優れた操作性も必要だ。つまり優れたWebサイトのデザインを行うには、魅力的な外観、機能、操作性、ファイルサイズなど、ときには相反する要素について考慮しつつ作業を進めなければならない。

 書店にはWebサイトの構築に関するさまざまな書籍があふれているが、こうしたWebサイトのデザインを総合的に論じたものはなかなか見あたらない。そうしたなかで、ここでは高度なWebサイト構築の参考になる本を紹介していこう。そのいくつかはデザイナー向けであり、いくつかはエンジニア向けではあるが、こうした本を読んでいくことで、Webサイト構築の全体をとらえることができるようになると思う。

チームマネジメントの事例紹介と方法論

WEBサイト・マネジメント

David Siegel著 伊豆原弓訳
日経BP社 1998年
ISBN4-8222-8042-X
6000円

 Webサイトの構築は、個人ではなくチームで行われることがほとんどだ。特に企業が構築するWebサイトでは、マーケティング、宣伝、営業などがさまざまな観点から注文をつけてくるはずだし、そうした意見を外観や機能に反映するには、優秀なデザイナーとエンジニアの助けも必要とされる。全体をコーディネートするリーダーも必要だ。 「WEBサイト・マネジメント」は、こうしたWeb開発チームの運営についての成功事例、失敗事例、そしてそこから学び取れるノウハウを教えてくれる。

 全体はPartIとPartIIの2つに分かれている。PartIでは、実在の15の企業や部門が、Web制作会社と協力してWebサイトを構築していく過程が明らかにされる。デザイナーの熱意によってWeb上で製品を魅力的に見せることに成功したランドローバーや、わずか4週間で見事な求人サイトを立ち上げたルーセントテクノロジーの例、そしてWeb制作チームに新しい社員や外注先などが参加し、6カ月ものあいださまざまな変更や調整が続けられた結果、完成まで長い時間と労力が必要だったビール会社の例などがある。

 PartIIでは、「クライアントは火星から、デベロッパーは金星からやってくる」と著者の言うWeb制作チームの心構えや役割分担、制作パートナーの見極め方、そしてプロジェクトの進め方について著者の方法論が提示される。特に、プロジェクト進行におけるフェーズごとの仕事とそれを遂行するための要件の説明は、混乱したり後戻りする状況に陥りやすいプロジェクト進行の参考になるだろう。

Webデザインのノウハウを解説

WEBサイト・デザイン改訂版

David Siegel著 古賀秀之訳
日経BP社 1998年
ISBN4-8222-8041-1

5000円

 上記の本と同じ著者がWebページのデザインに絞って解説した本が「WEBサイト・デザイン改訂版」だ。グラフィックイメージの作成やページレイアウト、タイポグラフィーなど、求めるデザインをいかにHTMLによって実現すればいいのかを教えてくれる。

 この本のなかで著者がもっともページを割いているのは、パーソナルサイトやギャラリーなど具体的な例を挙げ、その中でどのようなデザインテクニックを使っているのか、全体の構造を見渡しながら紹介している部分だ。実際のHTMLのサンプルコードも載せているため、単にデザインのサンプル集で終わっていない点もいい。通常のWebサイトデザインでは先にデザインイメージができあがり、それをどのように実現するかが問題になる。そうした工程にこの本はマッチするはずだ。

便利なHTMLリファレンス本の定番

カラー版 HTMLタグ辞典

アンク著
翔泳社 1998年
ISBN4-88135-696-8
1500円

 Webページの制作にかかわるなら、HTMLのエレメント、いわゆるタグの知識と、それがWebブラウザ上でどのように見えるのか、といったリファレンス本を最低1冊は本棚に置いておくべきだろう。書店へ行くと、この種の本がずらりと並んでいる。その中で選んだのは、「カラー版HTMLタグ辞典」だ。

 すべてのタグについて簡潔な説明と実際のコーディング例が示されており、その表示結果がInternet Explorer 4.01とNetscape Navigator 4.06の両方の画面で示してあるため、いちいち自分で試す手間が省ける。どのタグには互換性がないか、見え方が異なるかといったこともすぐ分かる。スタイルシートの使い方と主要なタグについても説明してあるため、一般のWebページ作成に使う範囲のタグは網羅していると考えていいだろう。レイアウトも見やすく、しかも本の題名にあるように全ページがカラー。これで1500円は安いと思う。

Webサイトユーザビリティ入門

Webサイトユーザビリティ入門

J.M.スプール、T.スキャンロン、W.シュローダー、C.シュナイダー、T.デアンジェロ著 篠原稔和監訳 三田仲人訳
トッパン 2000年
ISBN4-8101-9018-8
2000円

 Webサイト制作チームの中で、もっとも議論が分かれるのは使いやすさ(ユーザビリティ)のデザインではないだろうか。この問題は一般のデザイナーにもエンジニアにも解決できない。しかも、助言が得られるような専門家も非常に少ない。 「Webサイトユーザビリティ入門」は、こうした分野の数少ない参考書の1つだ。Webサイトの中で目的の情報にたどり着くナビゲーションや、必要な情報を検索するなどの点に的を絞り、どのような外観と構造を持つWebサイトならば利用者を迷わせることなく誘導できるのか、ディズニーやC|Netを含む10のWebサイトに対するユーザービリティの結果を中心に考察している。

 本書では、アイコンやメタファーはあまりナビゲーションの役に立たず、分かりやすい説明やシンプルな構造が重要であること、余白の多いページほど情報を見つけにくくなっていることなど、興味深い結果が語られる。もちろんここで語られている結果をそのまますべて受け入れる必要はなく、またそうするべきではないと思われるが、ユーザービリティに関する自分が抱いていたイメージを見直し、冷静に考え直すのに役立つだろう。

正しいHTMLを書くために

正しいHTML4.0リファレンス&作法

ビレッジセンターHTML&SGML研究チーム著
ビレッジセンター 1999年
ISBN4-89436-111-6
1200円

 最後に紹介する「正しいHTML4.0リファレンス&作法」は、他のHTMLリファレンスとは趣が異なる。「巷にHTMLタグ・リファレンスはあふれているけれど、残念ながら正しい知識で書いていると思われるものは少ない」(「はじめに」より)、という著者の主張を反映し、本書は著者がHTMLの仕様書を読み、その内容に従ってできるだけ正確にHTML4.0の仕様を解説することを目的にした本だ。

 特に序章から第二章において、タグという用語が一般的に誤解されているという指摘から、HTMLの論理構造、HTMLバージョンの中でもさらに仕様が3種類に分かれていることなど、既存の解説本ではあまり触れられていない点について言及しつつ、正しくHTMLを記述する方法について説明してくれる。各エレメントのリファレンスも、厳密ゆえに分かりやすいものではなく画面写真もないが、正確にHTMLを記述したいというエンジニアの要求に応えるものになっている。しかも著者はこうした厳密性を読者に一方的に押しつけるのではなく、できるだけその理由を記述して理解を得ようとしている点にも好感を持てる。

 今後PC以外のさまざまなデバイスがインターネットに接続されるようになれば、Webページは従来のWebブラウザからきちんと見えればそれでいい、という訳にはいかなくなってくる。Webページがさまざまなデバイスをサポートしなければならなくなったとき、WebページがHTMLの仕様に沿ってどれだけきちんと記述されているか、という点は重要さを増していくだろう。また、XHTML 1.0の発表によって、HTMLからXMLへとスムーズに移行していく道筋も整いつつある。Webページの記述の正確さは、こうしたXMLへの移行を確実に行うための条件でもあるはずだ。

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