書評

SNMPを使ったネットワーク管理に役立つ3冊

アットマーク・アイティ 編集局
鈴木淳也
2001/11/10

今回紹介する3冊
SNMPインターネットワーク管理
オープンソースを使ったネットワーク監視術
TCP/IPネットワーク管理 第2版

 ネットワーク・システムは微妙なバランスの上に成り立っている。ちょっとしたミスや、予期しないような変動要因によって、いとも簡単に動かなくなってしまうこともあり得るものだ。ネットワークを安定したインフラとして機能させるためには、日ごろからネットワークの挙動を監視し、いざトラブルが発生した場合(もしくは発生が予想されそうな場合)には、迅速に対処できる運用管理体制が大事となる。

 SNMP(Simple Network Management Protocol)は、ネットワーク上に散在するネットワーク機器や各種サーバのリソースから情報を収集する仕組みを提供する。SNMPを利用することで、定常的なネットワーク情報の収集や、いざというときの迅速なトラブル対応が可能となる。今回は、SNMPの仕組みや利用法を学び、実際の運用管理への応用に役立つ書籍を紹介していこう。

SNMPを利用するネットワーク管理者必携のバイブル

SNMPインターネットワーク管理

Mark A.Miller 著/トップスタジオ 訳
ハラパン・メディアテック/宇野俊夫 監修
翔泳社 1998年
ISBN4-88135-667-4
5200円(税別)

 「ルータ」や「スイッチ」など、ネットワーク機器においては必ずと言っていいほどスペック表に書かれているのが「SNMPへの対応」である。だが、実際の業務において、SNMPがどのような仕組みで動作していて、いかに利用すべきかについて知るのは、思った以上に困難だ。大きな理由としては、まず「情報ソースの不足」が挙げられるだろう。関連する書籍は少なく、より詳細な情報を入手しようと思えば、それこそRFCをひっくり返してみるような作業が必要となる。

 本書は、そんなSNMP関連の情報をまとめて入手できる、貴重な1冊である。全7章で構成されており、第1章はSNMPによるネットワークの管理体系について、第2章〜3章はSNMPの情報管理データベースであるMIBについて、第4章〜5章はSNMPとSNMPv2について、第6章はSNMPの下位レイヤのサポートについて、そして最後の第7章では、SNMPを使っていかにネットワーク管理を行うかを、サンプルケースをもとに解説している。最初は本書の厚さに驚かされるが、第7章以降、全体の約半分は、実は関連資料集である。RFCなどの詳細情報の入手先から、SNMP/MIBのコマンド/オブジェクト一覧などが網羅されており、リファレンスとしての機能もばっちり備えている。

 全体としての難易度はかなり高めではあるが、SNMPを使ったネットワーク管理を実践しようと考えている管理者の方であれば、ぜひとも押さえておくべきだろう。「専用の管理ツールがあるから、SNMPをそこまで学習する必要はないだろう」という意見もあるかもしれないが、さらに上級の管理者を目指すのであれば、ツールがいかに動作しているのかまでを把握しておいて損はないはずだ。

同梱のCD-ROMにGUIツールを掲載したSNMP管理の実践書

オープンソースを使ったネットワーク監視術

冨成昭彦 著
セレンディップ/小学館 2001年
ISBN4-7978-2021-7
2400円(税別)

 前出の「SNMPインターネットワーク管理」がSNMPの体系的な解説書であるのに対し、本書は実際にSNMPを使ったネットワーク監視テクニックを教える実践書となっている。本書の最大のポイントは、同梱のCD-ROMに収録されたオープンソースのGUIツールをベースとしたネットワーク管理法の解説にある。実際にツールを用いた解説を読むことで、SNMPの実像がよりはっきりと分かることだろう。

 解説で使用されているのは、MRTG(Multi Router Traffic Grapher)というオープンソースのGUI管理ツールである。SNMPでルータなどから情報を収集して、簡単なグラフを作成する機能を持っている。本書では、UNIXにおける「cron」と組み合わせることで、5分ごとに定期的にトラフィック状況を収集する方法などが解説されている。またさらに、シェル・スクリプトや関連ツールを組み合わせることで、「WANを経由した遠隔地のネットワークの動作状況」や「サーバ上のリソース(例えばHDDの空き容量など)の監視」を実現している。解説に際しては、SNMPの管理マネージャをインストールするサーバはRed Hat Linuxをベースとしているため、SNMP対応のネットワーク機器さえあれば、すぐにでも動作を試せるところが嬉しい。MRTG自体はオープンソースで提供されるツールであるため、SolarisなどのほかのUNIX環境でも実験が可能だ。

 「SNMPをいかにネットワーク管理に使うか」を知るには手ごろであり、SNMPの実装例を見たいというネットワーク管理者にはお勧めだ。価格も比較的安価なので、ネットワーク系書籍としては購入しやすい。

ネットワークのトラブルシューティングにはこの1冊

TCP/IPネットワーク管理 第2版

Craig Hunt 著/村井 純 監訳/安藤 進 訳
オライリー・ジャパン 1998年
ISBN4-900900-68-0
5800円(税別)

 ネットワークの運用管理には、2つの側面がある。1つは、これまで紹介してきたような、SNMPを利用することでネットワークを定常的に監視し、いざという場面に備える事前防衛的な側面。そしてもう1つは、実際にトラブルに見舞われたときに、いかに問題を解決していくかという、トラブルシューティング的な面だ。そのトラブルシューティングの場面において役立つのが本書である。実は、本書で網羅されている内容は、タイトルにあるSNMPとはあまり関係ない。だが、「ネットワーク管理」を考えたときに、役立つ情報が満載であり、ここで紹介させていただくことにした。

 本書は大きく分けて、TCP/IPの基礎(SMTPなどのアプリケーション・プロトコルも含む)、SendmailやDNSなどの設定法、セキュリティ、そしてトラブルシューティングのパートで構成されている。トラブルシューティングのパートにおいては、routeなどのネットワーク・コマンドを使用した障害個所発見・対策の方法が記述されている。カバーするジャンルが広いため、全体としてはやや突っ込みが弱い部分もあるが、トラブルシューティングの基本を押さえるには必要十分な内容だろう。

 数多く存在するネットワーク系書籍において、意外に良書に巡り合えないのが「ネットワーク管理」に関するものである。その中で、基礎となる内容がひととおりカバーされている本書は、まず最初に押さえておきたいところだ。実務にあたっては、本書の内容をベースに、さらなる情報収集に努めてほしい。


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