書評

書籍で学ぶVoIPとSIP

鈴木淳也
2003/9/12


今回紹介する3冊
図解入門 よくわかる
最新IP電話の基本と仕組み

IP電話でわかる最新ネットワーク技術
視点を変えたQ&A本
企業ネットワークの設計・構築技法 ――広域イーサネット/IP電話の高度利用
SIP教科書

 VoIPは、近年のネットワーク業界において大きなテーマの1つだ。IP-VPN、広域イーサネットによる企業インフラ改革の波が押し寄せた後、企業が次に目指すのはデータ通信インフラによる音声通話のコスト削減だろう。実際、技術・製品、サービス・ノウハウともにそろいつつあり、「機は熟した」という状態なのだ。

 業界でのブームに呼応するように、関連書籍も多く書店の棚に並び始めた。今回は、VoIP入門から、技術者、あるいは導入担当者が読んで役に立つような技術書まで、幅広く紹介していくことにしよう。いますぐ導入にかかわらないというユーザーであっても、今後の参考のためや、トレンドをつかむうえで、ぜひ一読されることをお勧めする。

まずはVoIPの基礎概念と用語を理解しよう

図解入門 よくわかる
最新IP電話の基本と仕組み

湯山尚之著
秀和システム 2003年7月
ISBN4-7980-0572-X
1600円(税別)

 VoIPとは何だろう、なぜこんなに業界でもてはやされたりするのだろうか?――こんな疑問を感じたら、まず本書からスタートしよう。「図解入門 よくわかる最新IP電話の基本と仕組み」は、VoIPの基本概念である、「なぜ既存電話に比べて安いのか」「実現できることとできないこと」などを押さえつつ、その中核を成す技術であるSIP(Session Initiation Protocol)の仕組み、そして実際の活用方法まで段階的に教えてくれる。

 図版や構成が分かりやすいだけでなく、IPセントレックスに関する記述など、最新のトピックスなどについても漏らさずカバーしているところが評価できる。VoIPの理解に必要な用語が一通り登場しており、その解説も付いているため、VoIP(IP電話)入門の書籍としては一番のお勧めだろう。話題の一環としてVoIPをちょこっとかじりたいという人から、VoIPの勉強をこれから始めようという技術者まで、広く万人が読めるといえる。

 本書だけでもかなりの知識が入ると思うが、この分野に興味を持ち、先のステップに進みたいのであれば、後で紹介する「企業ネットワークの設計・構築技法」がお薦めだ。だが内容的にはかなり難しくなるため、本書ほど気楽に読むことはできないだろう。

VoIPの活用方法を紹介

IP電話でわかる最新ネットワーク技術

米田心文 著/森井昌克 監修
翔泳社 2003年2月
ISBN4-7981-0356-X
2000円(税別)

 VoIP入門のためのもう1冊が、「IP電話でわかる最新ネットワーク技術」だ。図版を多用して基礎から分かりやすく解説していくというコンセプトは、前述の「図解入門 よくわかる最新IP電話の基本と仕組み」とほぼ同様だ。その違いは、本書の方がVoIPの活用例や導入方法に関する記述が多い点である。

 本書では、実際のアプリケーション例(TV会議など)も取り上げつつ、導入に必要なステップを提示したり、システムに関するアイデアの提供も行ってくれる。その意味で、やや企業のシステム担当者寄りの内容であるといえるかもしれない。

視点を変えたQ&A本

Q&Aで学ぶVoIP

藤島信一郎著
リックテレコム 2003年8月
ISBN4-89797-728-2
2500円(税別)

 ある意味、内容的には入門書ではあるのだが、中身をQ&A形式に並べ替えることでノウハウ本のように作り替えてしまったのが「Q&Aで学ぶVoIP」だ。

 Q&Aの構成がうまく機能しているのが、本書の最大の特徴だ。時間のない技術者が要点を学ぶには、必要な情報を手早く入手できるのが一番。本書は、そんなリファレンス的な使い方をするには最適である。実際、基礎概念から技術仕様、導入に関するものまで、必要な情報を満遍なくカバーしており、ある程度以上のニーズに対応できる。

 発行年月が2003年8月と、今回紹介する全書籍の中で最も新しいのもポイントである。VoIPは、いま最もホットなトピックであり、情勢が刻々と変化している。特に最新事情に言及した書籍であれば、この時期というのは大きな意味を持ってくる。可能であれば、書店などで「図解入門 よくわかる最新IP電話の基本と仕組み」との違いを見比べて選んでほしい。

最新のVoIP導入事例を紹介した書籍

企業ネットワークの設計・構築技法
――広域イーサネット/IP電話の高度利用

松田次博著
日経BP 2003年3月
ISBN4-8222-8153-1
4200円(税別)

 ここまで紹介したのは入門書だが、「企業ネットワークの設計・構築技法」はまさにこれからVoIP導入を行おうとしている企業が、その導入の指針とするための技術書である。

 本書では、IPパケットやSIPの動作に関する記述はもちろんのこと、企業の音声/データ統合ネットワークをいかに設計、構築するかの技法について細かく解説している。その際、具体的な例を図示しつつ説明を続けているところが非常に評価できる。そして本書の最大の目玉は、東京ガスへのIPセントレックス導入事例の紹介である。本書の著者である松田氏はNTTデータの社員であり、同プロジェクトの責任者として導入を進めていたという経緯がある。まだ本格的なVoIP導入を行った企業は少ないが、その先進事例が読めるだけでも本書の価値は十分にあると考えられる。

 松田氏は、以前にも「企業内データ・音声統合網の構築技法」という著書を出しているが、本書はその続編に当たるものだ。「企業内データ・音声統合網の構築技法」では、その話題の中心はフレーム・リレーやATMなどだったが、「企業ネットワークの設計・構築技法」からは、時代のすう勢に合わせてIP-VPNや広域イーサネットが話題の中心となっている。両書を見比べるだけでも時代の変化が感じられ、非常に興味深いものである。

SIPにフォーカスした技術書

SIP教科書

千村保文/村田利文 監修
IDG 2003年5月
ISBN4-87280-487-2
3600円(税別)

 MSNメッセンジャーにしろ、IP電話にしろ、今日話題を集めているVoIPの技術ベースとなっているのは、SIPと呼ばれる通信プロトコルである。SIPの特徴は、SIP自体はセッションを確立するのみで、実際に音声通信のクオリティを維持するのはSDPなど、ほかのプロトコルが支えている点である。本書の「SIP教科書」は、このSIPならびに周辺プロトコルにフォーカスを絞り、その仕組みについて解説した技術書である。

 H.323との違いから始まり、SIP通信の概要、周辺プロトコル、メッセージ・フォーマット、ENUM(電話番号のこと)とのマッピング、IPv6への対応などが説明されている。もちろん、SIPの専門書籍であるため、その内容はほかのどの解説書よりも詳しいものとなっている。SIPを使ってアプリケーション開発をされる方などには、ぜひお勧めしたい内容だ。

 本書の読者対象は、SIPについて理解を深めたい技術者、もしくはSIPサーバなどのアプリケーションを作成する開発者である。普通のネットワーク・エンジニアであれば、むしろ「企業ネットワークの設計・構築技法」の方を読むべきだろう。VoIPネットワークの構築で最も重要なのは、いかにEnd-to-Endで高い音声品質の通信を実現するかにあるため、SIPそのものよりも、全体としてきちんと動作するネットワークを設計できるかに注目すべきだからだ。

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