連載:IEEE無線規格を整理する(7)
〜ワイヤレスネットワークの最新技術と将来展望〜

コンセントでホームネットワークを構築する電力線通信


千葉大学大学院  阪田史郎
2006/3/2


IEEE無線企画を整理する連載第1回目「無線ネットワークの規格、IEEE 802の全貌」では、拡大するIEEE 802規格の全貌を、第2回では、実用化が始まった「標準化が進むRFIDと日本発ucode」について説明してきた。ZigbeeやBluetoothなどの無線PAN(パーソナル・エリア・ネットワーク)についてまとめた。第3回「ZigbeeとBluetooth、UWBをめぐる動き」、第4回目「高速化とメッシュ化へ進展する無線LAN」「無線MAN」に続き、「情報家電ネットワーク」「2010年の情報家電ネットワークを予想する」をお伝えした。


 前回は、「2010年の情報家電ネットワークを予想する」で、短距離無線、無線PAN、無線LANが活用されるホームネットワークをお伝えした。今回は、注目が集まる情報家電ネットワーク(以下、ホームネットワーク)への各業界の標準化動向、プラグ&プレイ、電力線通信などの標準化動向、ホームシステムがユビキタスシステムの市場拡大の牽引役を果たしていくための課題について述べる。

 1. ホームネットワークの標準化動向

 ホームシステムに関する技術は多岐にわたるが、実システムへの適用、すなわち産業界による実ビジネスや一般利用者に与える影響力は、ITU(International Telecommunications Union - Telecommunications)やISO(International Organization for Standardization)のような国際(デジュール)標準化機関による標準に比べ、業界(デファクト)標準化機関による標準の方が大きい。国際標準化機関における議論は、全般的に概念的、抽象的なレベルにとどまっているものが多い。

   業界標準化動向

(1) DLNA(Digital Living Network Alliance)

 家庭の情報家電をホームネットワークを通して接続し、その上でさまざまなサービスを提供するためのプロトコル群の規格を策定するための業界アライアンス。2003年6月にDHWG(Digital Home Working Group)として設立され、2004年6月に名称がDLNA(Digital Living Network Alliance)に変更された。このアライアンスの目的は、音楽、写真、ビデオなどのデジタルコンテンツを、家電、PC、携帯端末などの機器間で容易に共有するための相互接続性のフレームワークを構築するため、公開された業界標準をベースとした設計ガイドラインを開発し、関係する業界や商品カテゴリにまたがるデジタル環境を融合することにある。従って、DLNAで新しい標準規格を策定することは想定しない。

 プロモータ企業として、富士通、HP、インテル、ケンウッド、レノボ、マイクロソフト、NECパーソナルプロダクツ、ノキア、松下電器、フィリップス、サムソン、シャープ、ソニー、STマイクロエレクトロニクス、トムソン、TIの14社(アルファベット順)が名を連ね、2004年8月末現在140社余りがアライアンスに参加している。

 2004年6月に、家電共通の相互接続フレームワークに関する動向を踏まえ、IPネットワークの家庭用プラットフォーム、商品、アプリケーションの詳細に関し、「ディジタルホーム設計ガイドラインV1.0」を発表した。基本的なパーソナルメディアとエンターテインメント目的のシナリオに焦点を当てている。今後、新しいシナリオや商品に順次展開、見直しを図っていく。

 設計ガイドラインV1.0に採用される主要技術は、

・ IPネットワーク: TCP/IPプロトコルスイート。将来はIPv4とIPv6の共存を想定
・ 物理ネットワーク: Ethernet(100BASE-TX)、無線LAN(IEEE 802.11b/a/g)
・ データ転送: HTTP
・ デバイスの検出・制御インターフェイス: UPnP
・ オプションとして、ブリッジングなどによりIEEE 1394対応機器とも接続

である。表1表2に、それぞれDLNAにおける想定機器の例、各メディアの通信フォーマットを示す。表3に、DLNAのネットワークアーキテクチャを示す。

デジタル
ホームサーバ
PC、STB(SetTop Box)、PVR、放送チューナ、HDDを備えたステレオ・ホームシアターなど
デジタル
Media Transport
(HTTP)

ホームレンダラ TVモニタ、ステレオ、ホームシアター、プリンタ、PDA、マルチメディア対応携帯機器、無線モニタ、ゲーム機など

表1 DLNAで想定する機器の例

必須
メディアフォーマット
LPCM(音楽)、JPEG(写真)、MPEG-2(ビデオ)
オプショナル
メディアフォーマット

AAC、AC3、ATRAC3plus、MP3、WMA9(音楽)
PNG、GIF、TIFF(写真)
MPEG-1、MPEG-4、WMV9(ビデオ)

表2 DLNAにおける各メディアの通信フォーマット

 2005年には、サーバからプレイヤへのプッシュ配信機能、デバイスとしてのプリンタなどの追加をDLNA 1.5として発表しており、2006年には著作権保護を目的としたDTCP-IP(Digital Transmission Content Protection-Internet Protocol)機構や予約録画(EPG:Electronic Program Guide)などを追加したDLNA2.0を2006年に発表する予定である。

Content Sharing Framework コンテンツ共有のためのプロトコル群
Media Formats
(Images、Audio、 Video)
・相互接続性と機器共生のためのコンテンツ
 フォーマット
Media Transport
(HTTP)

・コンテンツの伝送と再生制御方法

Media Management
(UPnP AV)
・コンテンツの検索と選択、管理方法
Device Discovery & Control
(UPnP Device Architecture)
・ネットワーク上の機器発見と制御方法
Networking & Connectivity
(IPv4、Ethernet、 IEEE 802.11)
・機器間の物理的な接続手段と基本的な
 TCP/IPプロトコル群
表3 DLNA ネットワークアーキテクチャ

目次:IEEEを整理する(7)
<page1> 1. ホームネットワークの標準化動向/(1) DLNA(Digital Living Network Alliance)
  <page2> (2) UPnP(Universal Plug and Play) /(3) OSGi Alliance/国際標準化動向
  <page3> 2. 今後の動向/3. ホームネットワーク普及に対する課題/4. 2006年に利用が開始されるPLC



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