連載:アニメーションで見るパケット君が住む町(5)
「インターネットに接続する」ってどういうこと? PPPの仕組み

綱野衛二
Roads to Node
2009/8/12

5-2  都市間をつなぐステーション

 インターネット世界は、都市と都市の集合体である地域の連合体であることが分かったかと思います。

 都市の集合体を作るためには、都市と都市をつながなければなりません。どうやってつないでいるのでしょうか?

PPP駅員「はいっ、私の出番でしょうか?」

 特にPPP駅員君だけの話ではないですが、彼が普段いるステーションが都市間の接続を担う役割をしています。

 ステーションは市内の「出入り口」となる場所です。市内から市外へ出る荷物、市外から市内へ入ってくる荷物は必ずステーションを通る必要があります。

 ステーションにはルート君が駐在していて、彼が荷物を運ぶ経路を決定します。

ルート君「僕の仕事の詳細はまた先の回でね」

 そうですね。 ともかく、ポイントとして覚えておいてほしいのは、「都市と都市はステーションでつながっている」「都市から出るまたは都市に入るためにはステーションを通る」ということです。

図5-4 ステーションの役割

 さて、ステーション間はどのようにつながっているか、という話なのですが。 一般的には、鉄道会社が保有する「線路」でつながっています。ステーションには線路用のプラットフォームがあり、そこから列車を出して荷物を運びます。 線路は鉄道会社のものですので、列車で荷物を運ぶのにはどうしても輸送料が必要となります。言い方を変えれば、「荷物を運ぶ列車」が走る「線路を借りている」形になります。

 市内運輸は自社のトラックで行いますので輸送料は掛かりませんが、都市間の交通は線路に頼るため輸送量が必要となります。 最近では、鉄道会社もいろいろなサービスを開始していています。代表的なものを挙げてみましょう。

  • 1つの都市(のステーション)と1つの都市(のステーション)間の専用輸送列車サービス
  • 複数の都市間をつなぐ輸送網サービス

 専用輸送列車サービスは、なんといっても専用なので使い勝手もよく、確実なのですがその分輸送料が高めなのがネックです。最近は、輸送網サービスが人気となっています。 輸送料の基本は「1回で運ぶ荷物量」です。専用輸送列車ならばそれに加え「輸送距離」が掛かります。輸送網サービスなら「つなぐ都市の数」の料金が必要となります。

パケット君「トラックで運んだらダメなのかなぁ。そうすればお金が掛からないのに」

 都市内ならば問題ありませんが、都市間はどうしても距離が離れているため道路ではダメなんですね。ただ、最近は都市間に高速道路を引いてある場合もありますのでそちらを使う場合もあります。ただし、高速代が必要ですよ。

図5-5 鉄道会社のサービス

 都市と都市、つまりLANとLANをつなぎ、より大きなネットワークを作ります。これをWAN(Wide Area Network)と呼びます。

 LANは複数のコンピュータが相互に接続可能ですが、WANの場合はコンピュータ同士というよりもLAN同士をつなぎます。LAN同士をつなぐ場合、LANの代表のコンピュータがLAN内のデータを受け取り、ほかのLANへ送り出すという動作を行います。

 この代表のコンピュータ、上の例でいえばステーションの役割ですが、これは「ルータ(Router)」と呼ばれる機器になります。

 ルータはLANの代表として、LANから送信されるデータの出口となり、LANに入ってくるデータの入り口となります。なので、「ゲートウェイ(Gateway)」とも呼ばれます。 ルータはネットワークをつなぐための必須機器です。その役割と機能は先の回で説明いたします。

 LANとLANをつないでできるのがWANですが、つなぐために必要なケーブルに問題があります。それはLANとLANをつなぐケーブルを自前で敷設することができない、という点です。LANはビル内、私有地内のネットワークですので、コンピュータをつなぐケーブルは自前で用意すればよいのですが、WANの場合LANとLANが地理的に離れてしまっているためそうはいきません。

 そのため、「ケーブルを借りる」ことになります。貸し出す側の企業は「電気通信事業者」と呼ばれます。電気通信事業者はケーブルを施設できる企業、NTTやKDDIのような電話会社や電力会社などや、これらの企業からケーブルを借りて付加価値を付けて貸し出す企業もあります。電気通信事業者がWANを構築するために行うサービスを一般的に「WANサービス」と呼びます。

 WANサービスは形態、料金など多岐にわたります。個人向けにはADSLや光ファイバなどの回線を貸し出しプロバイダへの接続を行う「接続サービス」があります。企業向けには接続サービス以外にも、LANとLANを1対1で接続する「専用線サービス」や、複数のLANを相互につなぐ「VPN(Virtual Private Network)」や「広域イーサネット」などのサービスがあります。

 これらの通信事業者のWANサービスを受けて、個人ならばプロバイダへ接続してインターネットへ接続可能になりますし、企業ならば支店と本店など拠点同士をつないだネットワークを構築することが可能になります。


5 インターネット世界の都市間交通事情
  5-1 「市」と「地域」でインターネット世界
5-2 都市間をつなぐステーション
  5-3 PPP駅員のお仕事
5-4 おさらい 〜 実際のネットワークに当てはめると


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