連載:アニメーションで見るパケット君が住む町(7)
インターネット世界の住所の書き方


綱野衛二
Roads to Node
2009/12/8


7-2 市内を「区」に分割しよう

 インターネット世界のビルには「市の名前」と「番地」から「ビル所在地」という住所が決定されます。しかし考えてみると、市が広い場合、これでは大変ですね。

パケット君「そのとおり!! もし市内にビルが1000棟あったら、『ビントサーフ市1番』〜『ビントサーフ市1000番』まであることになっちゃうよね。1000棟もあったとすると、市内交通の量も多いし、1000棟の中から届け先を探すのも大変だよね」

 そうですね。番地が1000もあると、どの番地をどのビルに割り当てたかということを覚えるのも大変そうです。

 さらに、イーサ配送君のお仕事を思い出してみましょう。イーサ配送君はARP君に頼んでビル名を教えてもらっています。ARP君はビルの間を回って、ビル所在地とビル名を一致させています。ものすごく大変な仕事ですね。

ARP君「大変ッス。なので、できれば市内も分割してほしいッス」

 そうですね。市が大きい場合、それを分割すると管理も楽になりますし、ARP君の仕事も楽になります。「インターネット世界」を「地域・市」に分割するように、「市」も分割するわけですね。

 そこで、「市」を「区」に分けるという作業を行います。「区」を小さな「市」と同じ扱いにするわけです。市と市をつなぐのがステーションの役割でしたが、「区」をつなぐのもステーションに任せます。

図7-4 大きな「市」を「区」に分割して扱いやすくする

パケット君「『ビントサーフ市サンノゼ区』『ビントサーフ市サンタクララ区』とかに分けるわけだね。ポイントは、区はちっちゃい市扱いってところだね」

 そうですね。運輸上では大きさ以外に「市」と「区」の違いはありません。


 ネットワークが大きい場合、それを1つのネットワークとして運用しようとすると、いろいろと問題が生じます。

  • ネットワーク内にのみ送信するARPなどのブロードキャスト(全員あて)が、台数が多いため頻発し、ネットワークの利用率が上がってしまう
  • 多くの機器のIPアドレスを管理しなければならないため、管理が大変になる

 これらの理由やセキュリティなどの問題のため、多くのネットワークでは、ネットワーク内の機器をグループ化します。機器のグループとは、すなわちネットワークです。つまり、ネットワーク内ネットワークを作ることになります。このネットワーク内ネットワーク、小さなネットワークを「サブネット」と呼びます。

 ネットワークもサブネットも扱いとしては等しくなります。考えてみれば、大きなネットワークも、インターネットという巨大なネットワークのサブネットともいえるわけですから。よって、サブネットをつなぐためにはルータが必要となります。

 サブネットをIPアドレスで表現するために、IPアドレスの「ネットワーク番号」「機器の番号」の構成を変更して、「ネットワーク番号」「サブネット番号」「機器の番号」の形にします。

 ただし、IPアドレスは32ビット固定長ですし、ネットワーク番号はレジストリによって決定されていますので変更できません。よって、機器の番号分のビットのいくつかをサブネット番号として使用します。このことを、よく「機器の番号のビットを借りてサブネット番号にする」と表現します。

図7-5 ビットを借りてサブネット番号にする

 ここで問題になるのは、「どこまでがネットワーク(とサブネット)の番号なのか」という点です。ネットワークからほかのネットワークへ送信するためには、必ずルータに中継してもらう必要があります。

 中継の際は、「あて先が自分と同じ(サブ)ネットワークかどうか」という点が非常に重要になります。「あて先が自分と同じ(サブ)ネットワークかどうか」を知るためには「どこまでがネットワーク(とサブネット)の番号なのか」が分からないといけません。

 例えば住所の場合、「ビントサーフ市バークレー区1番」ならば「ビントサーフ市」の「バークレー区」の「1番」という具合に、見た目で区切りが分かりますが、ビット列のIPアドレスではそうはいきません。

 そのため、「どこまでがネットワーク(とサブネット)の番号なのか」を把握できるようにする値を、IPアドレスと一緒に書く必要があります。これを「サブネットマスク」と呼びます。

図7-6 サブネットマスクを見ると、自分と同じネットワークかどうかが分かる

 サブネットマスクはIPアドレスの「ネットワーク(とサブネット)の番号のビットを1」「機器の番号のビットを0」にした値で、IPアドレスと同じように8ビットごとに区切って記述します。なぜこのような形にするかといえば、ビット列に対してAND演算という計算を行うと、ネットワーク番号の部分が分かるようにするためです。

 また、「ネットワーク(とサブネット)の番号の長さ」を記述する方法もあります。こちらは「プレフィックス長」または「CIDR(サイダー)表記」と呼ばれます。


7 インターネット世界の住所の書き方
  7-1 パケット君が使う住所
  7-2 市内を「区」に分割しよう
  7-3 ビル所在地から考える荷物の動き
7-4 「ビル所在地」のおさらい


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