第12回 読者調査結果

〜2004年度注目の通信サービスとは?〜

小柴 豊
アットマーク・アイティ
マーケティングサービス担当
2004/5/19


 技術革新が絶え間なく続く通信市場の動向を把握するため、@IT Master of IP Networkフォーラムでは、同分野のサービス利用状況を定期的に調査している。企業ネットワークはいま、どのように変容しつつあるのか? 今春実施した第12回読者調査の結果から、その状況をレポートしよう。


通信サービスの利用状況はどう変わった?

 初めに企業向け通信サービスの利用状況について、1年前の2003年3月時点と今回の調査を比べた結果が、図1だ。今年の特徴として、“回線サービス利用率No.1”の座が、ついに「ISDN」から「xDSL」に移行した点が挙げられる。ISDNの商用サービス「INSネット64」が開始されたのは、1988年。以来15年にわたり、企業インフラとして導入が進んだISDNであったが、2001年以降の急激なブロードバンド普及を背景に、その役割を終えつつあるようだ。

 また1年前と比較した利用率の伸びに注目すると、「FTTH」が伸び率158%でトップとなった。xDSLより通信速度や信頼性に勝るFTTHは、企業向けブロードバンド回線の本命といえる。今後提供エリアなどの改善状況によっては、xDSLを追い抜く日もそう遠くはないかもしれない。

図1 通信サービスの利用状況推移(2003‐2004)

2004年度の通信サービス導入予定は?

 次に上記項目に選択肢を追加して、“2004年度に導入が予定される通信サービス”を尋ねたところ、「VoIP/IP電話」の導入予定率が最上位に挙げられた(図2 黄棒)。ブロードバンド回線や、IP-VPN/広域イーサネットといった低価格・広帯域な拠点間通信網の導入が進んだことで、音声系/データ系ネットワーク統合の素地は整いつつある。VoIP/IP電話は、ユーザーが新しいネットワーク・インフラのメリットを享受するための、最も現実性の高いサービスといえそうだ。

図2 通信サービスの利用状況/04年度導入予定(N=326)

IPセントレックスの利用意向は?

 ところでVoIP/IP電話関連サービスといえば、通信事業者などがIP網経由でPBX機能を提供することで、社内PBX運用コストを削減する“IPセントレックス”が話題になっている。そこでVoIP/IP電話の導入者・予定者に、同サービスの利用意向を聞いた結果が、図3だ。該当者の20%がIPセントレックスを「すでに利用している」または「2004年度中に利用予定」と答えているほか、54%が「検討/情報収集している」など、歴史の浅いサービスの割に高い関心を獲得していることが分かる。

図3 IPセントレックスの利用意向(VoIP/IP電話導入者・予定者 n=126)

IPセントレックス サービスの選定重視点とは?

 続いてIPセントレックスの利用者・予定/検討者に、同サービス選定時の重視点を尋ねたところ、該当者の75%までもが「社内PBXの運用管理費用と比べたコスト削減効果」を挙げている(図4)。以下「社内PBX機能がIPセントレックスでも完全に実現できること」といった機能要件が続いているが、やはり現時点でのIPセントレックス需要の中心価値は、“VoIP/IP電話導入に伴うコストダウンの最大化”にあるようだ。

図4 IPセントレックスサービス選定の重視点(IPセントレックス利用・検討者 n=93)


ネットワーク機器の利用状況は?

 さて通信サービスの利用状況は先述したが、今回の調査では、同様にネットワーク機器の利用状況/導入定も聞いてみた。その結果、現在は回線利用状況を反映してか、「ブロードバンドルータ」の導入率が73%でトップとなった(図5 青棒)。それ以外には、IPネットワークの基礎を構成する「レイヤ2スイッチ」「レイヤ3スイッチ」や、セキュアな拠点間接続/リモートアクセスを実現する「VPN装置」などが、上位に挙げられた。一方、2004年度の導入予定を見ると、「VoIPゲートウェイ/IP-PBX」「ギガビットイーサネット関連機器」および「VPN装置」が、上位3機器に選ばれた(図5 黄棒)。

図5 ネットワーク機器の利用状況/04年度導入予定(N=326)

SSL-VPN装置の導入意向は?

 図5で現在導入率/導入予定率とも上位に挙げられた「VPN装置」分野では、昨年来Webアプリケーションやメールなどの通信をSSLで暗号化してVPN を構築する“SSL-VPN技術”が広まり、多くのベンダから製品が提供され始めた。そこでVPN装置の導入者・予定者に、SSL-VPN装置の導入検討状況を聞いた結果、「すでに導入している」「2004年度中に導入予定」または「検討/情報収集している」人が、合計で該当者の60%に上った(図6)。ターゲット層においてまだ同製品を意識していない人も2割強(「分からない」+「不明」合計)存在するだけに、今後製品認知が浸透していけば、さらに市場は活性化するものと思われる。

図6 SSL-VPN装置の導入意向(VPN装置導入者/予定者 n=161)

今後のVPN導入形態とは?

 では技術の多様化が進むVPNは、今後どのような形態で企業に導入されていくのだろうか? IPSecベースのVPNとSSL-VPNを比較して、VPN装置導入者・予定者の意見を聞いた結果、「拠点間接続はIPSec/リモートアクセスはSSL-VPNで使い分けられる」に最も支持が集まった(図7)。 同じVPN分野とはいえ、IPSecとSSL-VPNには、それぞれ導入メリット/デメリットがある。しばらくは、状況に応じて補完的に使い分ける形の導入が進みそうだ。

図7 今後のVPN導入形態 (VPN装置導入者/予定者 n=161)

調査概要

  • 調査方法:Master of IP NetworkフォーラムからリンクしたWebアンケート
  • 調査期間:2004年3月2日〜4月2日
  • 有効回答数:326件

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