特別企画:Net & Comイベントレポート

IP電話が標準のサービスとなるために
〜VoIP推進協議会の取り組み〜

富嶋典子
アットマーク・アイティ 編集局
2004/2/11


   “普及期”から“本格活用期”に入るのはいつ?

 IP電話で音声パケットなどをやりとりするためのプロトコル、SIP(Session Initiation Protocol)の標準化がIETFによって進められ(参照:RFC 3261)、VoIPが「企業内の電話回線とIP網を統合する」と、多くのベンダや通信新事業者が対応製品やサービスを提供するようになってからほぼ1年が経過した。が、まだまだ先進企業でしか導入されていない印象が強い。まして、実際に導入した企業での“使い勝手”や“音声品質”に関する情報はあまり伝えられない。

 VoIP技術を推進するために協議することを目的として設立された団体、VoIP推進協議会は、2月4日、NET&COM2003(主催:日経BP社)で「IP電話“普及期から本格活用期へ”」と題したセッションを行い、“IP電話が普及期から本格活用期へと移る”ための活動内容と見通しが報告がされた。また、企業が安心してIP電話が使えるステージを迎えるために必要なサービス基盤についても、VoIP推進協議会が提唱する条件が語られた。その模様をレポートしたい。

   現状のVoIPサービスに不満は88%

 VoIP推進協議会会長 志岐紀夫氏(三菱電機情報ネットワーク株式会社 代表取締役社長)は、ベンダやxSPを主とする会員向けに行った2003年12月の調査結果を発表した。

 総務省からの依頼を受けて、アンケートを会員144社に配布し、96社の回答を取得。集計結果では、現状のサービス状態が十分でないと感じているとの回答が88%。現状では使い勝手がよくない部分があり、品質、サービス内容が悪いと感じているという。今後の方向性に関する設問では、「IP電話の特性を生かし、多様な新しいサービスを複合的に提供し、サービスの多様化と事業収益構造の多様化を図っていくことが必要」と90%が回答したという。さらに、必要措置として、回答者の半数以上から、事業者間の相互接続のインフラ整備、通信事業者とハード・ソフトベンダの提携、多機能型IP電話端末の開発などのサービス開発が挙げられたという。

   業務が「効率化」できるアプリケーションの利用状況調査

 また、会員が期待するアプリケーション応用分野では、業務高度化、効率化を支援したり、電話会議やグループ通話を可能としたりする「新しい電話としての利用」が挙げられた。VoIP推進協議会ではIP電話を導入した先進企業における実態調査を開始する。

 志岐氏によると、対象とする先進ユーザー企業を選定後、実際にユーザー企業を訪問し、企業での活用事例を現場で見せてもらうことによって、導入モデルとしてまとめる予定という。志岐氏は、「実際の企業でのIPネットワークとの融合の現場では、音声データや、資料データ、画像データのやりとりをどのように行っているのか、また、どのようなアプリケーションが構築され、どのように利用されているのか、導入企業に訪問してヒヤリングをしたい」と述べた。

 現場でのVoIP利用状況のリスニングによる企業における実態調査は数十社に対して行われる予定で、2004年7月に向けて取りまとめを行なう予定だという。導入を考える企業にとって、指針となるであろうヒヤリング結果の公表が待たれる。

   SIPでのキャリア疎通の実証実験がスタート

 技術的な面では、これまでHATS推進会議(高度通信システム相互接続推進会議)との共同でH323パケットとSIPを使って相互接続通話の実証試験や各種電話アプリケーション機能の相互接続試験を実施してきたが、今後はSIPのみによる相互試験を計画しているという。2003年までに実証実験の対象となった電話アプリケーション機能は、発信者番号表示、保留・転送、DTMF受発信、NAT超え、FAX送受信などであった。

 2004年はさらにサーバ間接続、端末間接続、キャリア疎通など、SIPプロトコルを利用してこれまでの再試験を行い、キャリア間接続試験も行う予定だ。キャリア疎通について、志岐氏は「より広く繋がることで利便性が向上することになり、相互接続は必要。これまで事業者の様々な事情で繋ぎあわないケースもあったが、これは改善されつつある」と述べ、実験を今年7月までに行う考えを明らかにした。

   「2007年に3000万回線」に到達するための「標準化」

 通信事業者により050番号のPSTN(Public Switched Telephone Network:従来のアナログ公衆電話網)回線からの着信が2003年10月、IP電話と携帯電話の接続が11月に確立された。それらの後押しもあり、IP電話は2004年1月に500万台を突破したという。協議会では2007年には3000万回線に及ぶと予測しており、志岐氏は、「現在の6000万という固定回線数の約半数がIP電話になる」と話した。

 そのための課題として志岐氏は、現在の固定電話が国内一律通話料金で標準化されていると指摘し、将来的にIP電話も均一料金となることが望ましいと述べた。そのためには、固定電話と同等の安心をユーザーが得られるよう、インフラの国内津々浦々までのブロードバンド化、緊急通信としての利用技術の確立、ENUM(=電話番号をドメイン名に変換し、DNSを検索することで、対応するアプリケーションをURI形式で得る仕組み)の活用、IP電話アプリケーションの標準化、料金の一律化なども将来的な視野に入るという。

   ベストエフォートの最低値の提示

 協議会では広告表示に関する自主基準の策定にも乗り出している。ISPなどのIP電話サービス品質に対し、志岐氏は「ネットワークがIP化してくると、ベストエフォート表示になるのは仕方がないが、『ベストエフォート』は最大限パフォーマンスを出すよう努力するが、うまくいかないこともある、という意味。ユーザーに固定電話に変わるサービスを提供する場合、ベストエフォートの限界も提示する必要がある」と語った。協議会は2004年3月に、災害発生時のIP電話の品質評価を実施するとともに、IP電話の通話品質測定のガイドラインを策定する予定だ。

 一方、電気通信サービス向上推進協議会(電気通信事業者協会、テレコムサービス協会、インターネットプロバイダー協会で構成)では2003年12月に広告表示の自主基準を公表している。IP電話サービスのコストに関して、アクセス回線使用料、モデムレンタル料、工事費用なども請求されるなどの明記すべき「料金表示」、音声が聞きづらいことがあるなど通話品質が低下する場合がある場合にはその旨を表示する「品質表示」、緊急通報ができない場合や、一般固定電話、携帯電話、PHS、国際電話等の回線への通話の可否を明らかにする「通話可能な範囲表示」を明記することを自主基準とするものである。志岐氏は「IP電話の本格活用期に向け、事業者が技術的な問題解決に取り組むべき問題ではあるが、サービス提供者側として守る必要があると考える」と述べた。自主基準の適用範囲は、「一般消費者を対象とした通信事業者の広告」に留まるが、企業向けサービスでも同等の自主基準があれば、ユーザー企業にとって、招きかねない誤解を回避し、選択がより明確になるだろう。


 以上、企業が安心してIP電話サービスを利用できる日を迎えるためには、企業でのVoIP/アプリケーション利用の模索や、通話品質を高める技術向上、キャリア間相互接続の実証実験による問題解決、通信事業者の広告自主規制などが重要であることをお伝えした。それら条件がクリアされ、サービス基盤が整ったとき、IP電話は標準化されたサービスとなるのだろう。未来の一端を握るであろうVoIP推進協議会の活動に期待し、今後の報告を待ちたい。

 VoIP推進協議会とは、社団法人 テレコムサービス協会が2001年4月に設立し、電気通信事業者82社とハード・ソフトベンダ59社が参加する団体。IP電話普及のために、VoIPに関する問題を検討したり、制度についての要望を協議したりする。内部には、ユーザーへの手引き書を作成するサービスワーキンググループ、ガイドライン作成や品質評価マニュアルを作成する品質ワーキンググループ、ライフライン実現のための品質評価技術を行うTAO研究開発ワーキンググループ、HATS推進会議との共同による相互接続の実証実験を行う相互接続ワーキンググループがあり、それぞれが活動を行っている。

 

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