特集:MANと光伝送技術の最新トレンドを探る

 - MANの登場と光伝送技術の進化、10Gbpsイーサネット -


近藤卓司
ノーテルネットワークス
2002/6/1


Part.3 10Gbpsイーサネットの登場とRPR


WAN向けでの使用が想定された「10Gbpsイーサネット」

 これまでのイーサネットがLANでの使用を前提に作られていたのに対し、IEEE802.3aeとして標準化される10Gbpsイーサネット(以下「10GbE」と略す)は、最初からWANでの使用を前提として作られているのが特徴だ。10GbEは、PHY(PHYsical sublayer)と呼ぶ物理層の違いにより7種類の規格が決められている。PCS(Physical Coding Sublayer)と呼ぶ符号化などの違いと、PMD(Physical Medium Dependent)と呼ぶ光波長などの違いの組み合わせだ。PMDの違いによって使用できる光ファイバの種類も異なる。規格の名称としては、それぞれ10GBASE-SR/LR/ER/SW/LW/EW/LX4と呼ぶ(図7)。

図7 10GbEでは、PHYという物理層の違いで7種類の規格が用意されている

 PHYには、ギガビット・イーサネット (以下「GbE」と略す) の速度を単純に10倍した10GbpsのLAN PHYと、WIS(WAN Interface Sublayer)と呼ぶ方式によりSONET OC-192フレームにデータを入れるWAN PHYの2種類がある。LANの環境とは異なり、WANではすでに通信事業者によって作られたネットワークがある。特に北米では、ほとんどの通信事業者の長距離バックボーンに、SONET OC-192を多重するDWDM光伝送装置が導入されている。SONET OC-192フレームを用いることにより、既存の設備にプラグ&プレイで接続できるのがWAN PHYだ。

 LAN PHYの中でも「シリアルLAN PCS」は、10Gbpsのデータを64B/66Bと呼ぶ方式で符号化することにより、実際の伝送速度は10.3125Gbpsとなる。WAN PHYは、WISによりOC-192のペイロード(9.58464Gpbs)に64B/66Bで符号化したデータを埋め込むため、実際に使える帯域幅は9.2942Gbpsとなる。LAN PHYとWAN PHYで、使える帯域幅が異なることに注意が必要だ。LAN PHYには、WDM技術を用いたWWDM(Wide WDM)LAN PCSもあり、10Gbpsのデータを4つに分けた2.5Gbpsのデータを8B/10Bと呼ぶ方式で符号化することで、実際の伝送速度は3.125Gbps×4波長となる。

 PMDは850nm/1310nm/1550nmを用いるシリアルPMDと、1310nm付近を中心とした4波長(1275.7nm/1300.2nm/1324.7nm/1349.2nm)を用いるWWDM PMDがある。マルチモード・ファイバ(MMF)、シングルモード・ファイバ(SMF)のどちらか、あるいはWWDMは両方を用いることができ、結果的にPMDの違いにより伝送距離が異なる。最大40km飛ばすことができ、「MAN」にも適用可能な伝送距離を提供する。さらに距離を飛ばすことのできるベンダ独自規格の製品も、一部出荷されている。

 これだけ多くの規格があると使い勝手が悪いと思われがちだが、標準には含まれない便利な製品の開発も進められている。その1つが、「UNI-PHY」と呼ばれるLAN PHYとWAN PHYのどちらでも、設定などにより切り替えることができるチップセットだ。もう1つが、「XENPAK」と呼ばれる、GbEのGBICと同様にプラグ型でPMDを取り換えることができるモジュールだ。現在、先行出荷されている製品にはこれらの技術はまだ実装されていないが、今後出荷される10GbEはこれらを用いることにより、ユーザーは自分の使いたい規格に柔軟に変更することができるようになるだろう。

10GbEに高い耐障害性をもたらす「RPR」

 10GbEは確かに高速でWANにも適用できる技術であるが、GbEと同様にポイント・ツー・ポイントで帯域を占有する回線を提供するのみだ。長距離伝送においてはポイント・ツー・ポイントで飛ばすことも重要だが、「MAN」では多くの拠点で帯域を効率的に共有し、かつ信頼性を高める必要がある。こうしたGbEにも当てはまるイーサネットに足りない機能を実現するのが、IEEE802.17で標準化が進められている「RPR(Resilient Packet Ring)」だ。RPRは「MAN」で好まれるリング型のトポロジーを使用し、帯域幅を非常に効率よく用いながら、SONET/SDHと同様の50ミリ秒以内のプロテクション機能を提供する。

 RPRは、すべての拠点間で共有するリング帯域幅の必要な区間だけを用いるスペイシャル・リユーズという方法で、全体として使用できるリング帯域幅を何倍にも拡大する(図8)。先に紹介したSONET/SDHのプロテクションは、単純にいえば半分の帯域を空けておく必要があるが、RPRでは、通常時はすべての帯域が使用できる独自のプロテクション方式を採用している。送信側でトラフィックを流す方向を決め、障害時は送信側で切り替えるステアリングと呼ぶ手法だ(図9)。またRPRには、イーサネットにはないサービス・クラスの概念が盛り込まれている。これは、あるユーザーに対してある帯域幅を保証するなど、ATMで実現されていた機能だ。RPRの物理層には、ほかの規格が流用される。候補として挙げられているのが、イーサネットとSONET/SDHだ。10GbEをリング型に接続し、信頼性の高い「MAN」を構成するという使い方も可能だ。

図8 RPRでは、スペイシャル・リユーズという方式により、リング内の帯域の必要な区間だけを用いることで、全体として使用できるリング帯域幅を何倍にも拡大できる

図9 RPRのプロテクションでは、SONET/SDHの場合とは異なり、片方向にのみトラフィックを流し(送信側で方向を決める)、障害時には送信側で方向を切り替える


SONET/SDHもさらに進化する

 SONET/SDHも、10GbEやRPRに負けないさらなる進化を見せている。代表的なのは、ITU-T G.7041として標準化が進められているGFP(Generic Framing Procedure)だ。これまでベンダ独自の手法で行っていた「Ethernet over SONET/SDH」の標準化に加え、サーバやストレージ周りの独自インターフェイスであるファイバ・チャネル、ホスト周りのESCON(Enterprise System CONnection)、FICON(FIber CONnection)などを運べるように拡張する動きだ。WDM技術を用いれば、こうしたさまざまなプロトコルを多重することは可能だ。ITバブルの崩壊から、既存のSONET/SDHインフラを生かそうとする動きもあり、注目度が高まっている。

 ただし、ここでGFPに従来のSONET/SDHをそのまま使うと問題が出てくる。GbEは1Gbpsだが、OC-12(622Mbps)に乗せるには足りないし、OC48(2.4Gbps)に乗せると半分以上が余ってしまう。この問題を解決するのが、SONET/SDHの基本単位であるOC-1(52Mbps)あるいはOC-3(156Mbps)を、任意の数で束ねて用いることができる「バーチャル・コンカチネーション」と呼ぶ技術だ。バーチャル・コンカチネーションを用いることにより、GbEは7本のOC-3(156Mbps)を束ねて非常に効率よく運ぶことができる。

 また、これまでIPの技術であったMPLSも、イーサネットをはじめとするレイヤ2プロトコルを運ぶ技術として拡張に力を入れ始め、「MAN」を構成する技術の選択肢が広がってきている。こうして最新の光技術を見ていくと、「MAN」で覇権を得るためにイーサネット、SONET/SDH、WDM、IP/MPLSの技術が融合されていく様子が感じられるだろう。今後も、最新の光技術が投入される「MAN」に注目が必要だ。

Index
特集:MANと光技術の最新トレンドを探る
Part.1 アクセス回線のブロードバンド化とMAN
・MANとは何か?
・MANの登場と市場の変化
[コラム] ダーク・ファイバとは?
  Part.2 WAN/MANを構成する光技術
・バックボーン技術の基本「SONET/SDH」
・SONET/SDHの特徴は強力な耐障害機能
・SONET/SDHの最新事情
・複数の波長を1本の光ファイバに束ねる「WDM」
  Part.3 10Gbpsイーサネットの登場とRPR
・WAN向けでの使用が想定された「10Gbpsイーサネット」
・10GbEに高い耐障害性をもたらす「RPR」
・SONET/SDHもさらに進化する
 


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