ユビキタス時代に華開くか!? 最新IP技術の実像に迫る
特集:モバイルIP技術詳解

福永勇二
インタラクティブリサーチ
2002/11/16

Part.5 これからのモバイルIP

モバイルIPがIPv6を後押しする

 今年の7月に横浜で行われたIETF会議では、IPv6ネットワークでのモバイルIPについて認証方式のメドがついたという。これを受けて、今後、おそらくIPv6ネットワークの広がりに並行する形で、モバイルIP利用が広まっていくものと思われる。同時に、モバイルIPがIPv6への乗り換えを促す1つのセールスポイントにもなりそうだ。

 今後のモバイルIP普及を左右するホットな話題としては、より高速なハンドオーバーの実現を挙げることができるだろう。ハンドオーバーとは「通信を継続したまま接続したネットワークを切り替える」ことを指す用語だ。

幅広い携帯でのモバイルIP利用を実現させる「ハンドオーバー」

 例えばカフェのテーブルで、無線LAN機能の付いたPDAで音楽を聴いている人がいるとする。この人が別の無線LAN基地局を備えた隣のブティックに移動したときのことを考えてみよう。もちろんPDAや無線LANはすべてモバイルIPに対応しているという前提だ。

 まず無線LANカードが新しい無線LANエリアに入ったことを検出し、自動的にこのネットワークに接続をする(ESS IDなどは同一だったと仮定)。PDAはフォーリン・エージェントからのメッセージを受信して自分が新しいアドレスに移動したことを検出。新しいネットワークに関する情報をホーム・エージェントに位置登録する。この結果、ホーム・エージェントには新しいアドレスが登録され、別のネットワークへ移動したにもかかわからず、引き続きストリーミング音楽を聴くことができる。

 この一連の動作が広い意味でのハンドオーバーだ。本稿のようにモバイルIPに限った話であれば、ネットワーク移動の検出から位置登録の完了までがハンドオーバーにかかわる動作ということになる。モバイルIPがターゲットとする利用形態は幅広い。ノートPCのLANケーブルを人間が差し替えてネットワークを切り替えるようなケースから、この例のように瞬時にネットワークが切り替わるケースまでさまざまだ。

 ハンドオーバー速度は、特に後者のようなケースで大きな意味を持つ。ハンドオーバーに必要な時間が短ければ短いほど(高速なハンドオーバー)、より速い端末移動に対応することができる。また移動速度が同じであれば、ネットワーク切り替え時の通信途絶時間(パケットロス)はより短くて済む。このようにハンドオーバーの高速化は、モバイルIPの実用性を高めるうえで、重要な命題の1つとなっている。

階層モバイルIPでフォーリン・ネットワーク内サーバに位置情報を登録させる

 ハンドオーバーの高速化に対するアプローチとしてよく知られているのは、階層モバイルIPと呼ばれる方式だ。この方式では位置登録のたびにホーム・エージェントへの登録を行わないのでハンドオーバーの高速化が狙える。

 具体的には、フォーリン・ネットワーク内にホーム・エージェントと似たような機能を持つMobility Anchor Pointと呼ばれるサーバを設置し、そのサーバに位置情報を登録することで、ハンドオーバーを高速化しようというものだ(図12)。

図12 サブホーム・エージェントのようなサーバ機能を持つMobility Anchor Point

 ホーム・エージェントからのパケットは、まずこのMobility Anchor Pointで受信して、次に登録されている位置情報に従って移動端末に転送される。Mobility Anchor Pointはいわばサブホーム・エージェントのような機能を持っており、この働きにより、他フォーリン・エージェントとの互換性を保ちながら、より高速な位置登録を実現することができる。

 ハンドオーバーの高速化に関しては、このほかにもさまざまなアプローチの研究成果がいくつも発表され続けている。だが、まだこれといった決定打はない。携帯電話ネットワークのように、設計段階からハンドオーバー性能が仕様化されているものに比べ、モバイルIPのハンドオーバーはいささか軽く扱われてきた感が否めない。その分、今後もしばらく試行錯誤が続くだろう。

 だがその結果、PHS程度までハンドオーバーが高速になれば、モバイルIPをベースとした移動IP通信のアプリケーションが一気に増える可能性も秘めている。IPv6普及と高速ハンドオーバー、この2つが今後のモバイルIP普及を占うかぎとなりそうだ。

Index
特集:モバイルIP技術詳解
  Part.1 「モバイルIP」が必要な理由
・PHSによるインターネット接続とホットスポットでの無線LAN接続との場合を比較してみる
  Part.2 モバイルIPとはどのような技術か?
・手紙の転送の例を基に、モバイルIPの動作を理解しよう
  Part.3 モバイルIPのメカニズムを技術的に検証する
・エージェント間のメッセージのやりとりなど、プロトコル・レベルでのモバイルIPの動作を理解しよう
  Part.4 モバイルIPの課題とそれを解決する技術
・IPv6、実装面など、モバイルIPが抱える問題を検証する
  Part.5 これからのモバイルIP
・モバイルIPをどのように展開するか!?
 


「Master of IP Network総合インデックス」



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