ホスティングサービス利用時のIPv6対応方法
Webサイト運営者から見たWorld IPv6 Day

おがわ あきみち
2011/8/18

6月8日に行われた「World IPv6 Day」に、「全日本剣道連盟」と「Geekなぺーじ」という2つのサイトの運営者として参加した経験を基に、IPv6対応に必要な手続きや得られた発見を紹介します。

 マネージド型ホスティングサービスでのIPv6対応

 6月8日に、World IPv6 Dayという世界的なイベントがありました。World IPv6 Dayとは、簡単にいってしまうと、世界中のWebサイトが参加する「IPv6に関連するデバッグ大会」です。

【関連記事】
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 私は2つのエントリにかかわりました。1つは、全日本剣道連盟が参加するための設定作業です。もう1つは、それとは別の「Geekなぺーじ」という個人サイトとしての参加です。

 2つのサイトでは、それぞれ異なる方法でIPv6接続性を確保しました。ただし、共通していることが1つあります。「マネージド型のホスティングサービスを利用してIPv6接続性を実現したこと」でした。

 物理サーバをOSを含めて自分ですべてを管理していたり、VPSにOSをインストールして管理すれば、比較的容易にIPv6環境を用意することが可能です。しかし、すべてがサービスプロバイダによって管理されたマネージド型のホスティングサービスを利用する場合だと、IPv6で配信可能なWebを用意できる環境はまだ限られています。

 今回は、それら2つのサイトで行ったWorld IPv6 Day対応の方法を紹介します。いずれのケースも「何とか実現した」という感じで、あまり美しい方法ではないかもしれません。しかし、同じような条件で急遽IPv6対応の準備をすると、おおむね似たような作業をすることになるのではないでしょうか。

 ドメイン移転から始めた「全日本剣道連盟」の対応

 全日本剣道連盟のWorld IPv6 Day対応作業は、まずドメイン移転から開始しました。

 World IPv6 Dayで参加を申し込んだドメインは、全日本剣道連盟が業務で利用している「kendo.or.jp」ではなく、.jpドメインができた時に確保したまま利用していなかった「kendo.jp」です。このkendo.jpドメインの管理のために契約していたホスティング事業者ではIPv6対応ができないため、さくらインターネットへ移転を行いました。

 ただし、さくらインターネットのマネージドサービスを契約しただけでは、IPv6対応はできません。さらにIPv6/IPv4トランスレータを準備し、さくらインターネットのドメイン管理用CMSを利用して、kendo.jpにAAAAを登録する必要がありました。

 AAAAの登録は、さくらインターネットが提供しているオンライン設定ページにおいて、kendo.jpのゾーンを編集して行いました。ゾーン編集の詳細は、さくらインターネットのオンラインマニュアルをご覧ください。

画面1 さくらインターネットのゾーン編集画面

【関連リンク】
SAKURA Internetオンラインマニュアル - さくらで取得したドメインのゾーン編集を行う
http://support.sakura.ad.jp/support/manual/rs/setdom_zone.shtml

 あとで気が付いたのですが、さくらインターネットのドメイン管理用CMSは非常に柔軟なので、AAAAに任意のIPv6アドレスを登録可能です。外部サーバとしてIPv6/IPv4トランスレータを用意することで、応急処置的にIPv6に対応することも可能でした。

 さくらインターネットに限らず、DNS上でAAAAもしくは任意のレコードを登録可能なサービスを提供しているドメイン管理業者を利用していれば、今回のkendo.jpのように、IPv6/IPv4トランスレータを用いた簡易なIPv6対応が可能です。

図1 kendo.jpのIPv6対応

 これらの作業は、さくらインターネットのスタッフの方々にいろいろと質問をして、教えていただきながら実現しました。終わってみれば思ったよりも簡単でしたが、質問をせずに1人で全部できたかというと、おそらくできなかったと思います。それを踏まえると、まだまだIPv6対応は簡単とはいえないかもしれません。

アクセスログの解析は……

 全日本剣道連盟のIPv6サイトへの訪問者数は多くはありませんでした。6月8日のユニークユーザー(同じIPv6アドレスを持つアクセスを1ユーザーとしました)が約120、その後は毎日約30ぐらいです。

図2 kendo.jp ユニークユーザーの推移

 IPv6での訪問者数は多くはありませんでしたが、「全日本剣道連盟がWorld IPv6 Dayに参加する」というミスマッチさによるインパクトは大きかったらしく、いくつかの媒体で紹介していただけたほか、ソーシャルメディア上でチラホラと話題になっていました。

 さて、このアクセスログはIPv6/IPv4トランスレータのログです。IPv4で提供されているWebサーバでは、ログにはIPv6/IPv4トランスレータのIPv4アドレスしか記録されません。実際のアクセス元を知るには、IPv6/IPv4トランスレータのログを解析する必要がありました。

 X-Forwarded-Forを利用してWebサーバに送信元アドレスを伝えるという方法もあるのですが、今回はIPv6/IPv4トランスレータのログを解析する方が実現が簡単だったので、その方式にしました。

 kendo.jpの運用は非常に単純であり、アクセス数も少なかったので、このようなアクセスログ解析方法でも大丈夫でした。しかし大規模な運用を考えるのであれば、IPv6とIPv4でのアクセスログの扱い方を考慮しておくことが非常に大事だと思われます。

 

Webサイト運営者から見たWorld IPv6 Day
マネージド型ホスティングサービスでのIPv6対応
ドメイン移転から始めた「全日本剣道連盟」の対応
  「Geekなぺーじ」の対応は事業者に問い合わせて
自分の手を動かして体験することの大切さ
「Master of IP Network総合インデックス」


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