Ultra DMA/66の性能を徹底検証

3.Ultra DMA/66の実力を測る

3-2. 転送モード間の比較

澤谷琢磨
2000/07/13

 Ultra DMA/66対応ハードディスクは、Ultra DMA/66ばかりでなく、それ以下の転送モードでデータ転送を行うことも可能だ。その際、どの程度性能低下するのかを確かめるために、Maxtor 53073U6とIntel 82801AA IDEコントローラの組み合わせで、下表の各モードの性能を測定した。モード間の性能差を調べることで、Ultra DMAモード4(Ultra DMA/66)がサポートする66Mbytes/sという転送レートと、データ転送タイミングの効果を知ることができる。測定には、基準のPCとMaxtor 53073U6の組み合わせを用いた。

モード名 サポートする最大転送速度[Mbytes/s]
Ultra DMAモード4
66
Ultra DMAモード2
33
PIOモード4
16.6
テストした動作モード
 
ランダム アクセス

 ランダム アクセス時間は、ハードディスク ドライブ内部での性能を測定しているので、外部バスの転送速度には影響されないはずだ。Ultra DMAモード2の値が少し速いが、これはキャッシュのアルゴリズムなどの影響が現れたものと考えられる。

 
バースト転送速度

 Ultra DMAモード4、Ultra DMAモード2のバースト転送速度は、規格に近い値が得られている。バースト転送速度は、ハードディスクのコントローラとPCのIDEコントローラ、そしてIDEの転送モードの組み合わせで決定されるのは前述のとおりだ。Maxtor 53073U6とIntel 82801AAの組み合わせでは、ほぼ規格どおりの性能が引き出せる設計になっていることが確認できた。

 PIOモード4の転送速度は最大16.6Mbytes/sとされているが、テスト結果ではその1/5以下の性能しか現れていない。これはPIOモード時の場合、CPUが主体的にデータの転送を行っているのが原因とされる。PIOモードでは、データ転送用プログラムをCPUが実行することで、IDEデバイスとメイン メモリの間のデータ転送を実行している。しかし、CPUによるIDEなどのI/Oデバイスへのアクセスはあまり速くはなく、またプログラムを読み出すオーバーヘッドもあるため、全体として転送速度は低くなってしまいがちである。さらにPIOモードではCPU占有率が100%近くに達するため、PC全体としての処理性能も低下すると考えられる。

 これに対してUltra DMAモードの場合、データ転送にかかわる処理のほとんどは、IDEコントローラが主体的に行う。つまり、IDEデバイスとIDEコントローラ間、およびメイン メモリとIDEコントローラ間それぞれでのデータ転送は、IDEコントローラにより制御されるため、CPUにはほとんどデータ転送に関する負担をかけずにすむ。また、CPUに比べてIDEコントローラのほうが、より高速にデータ転送を実行できる。そのため、Ultra DMAモードでは、規格に近い値が現れている。

 
平均転送速度(読み出し)

 平均読み出し速度は、Ultra DMAモード4、Ultra DMAモード2ともにほとんど同じだ。Maxtor 53073U6の内部転送レートのカタログ値は、43.2Mbytes/sと公表されているが、これは最大の値(おそらく記録円盤の最外周の速度)で、記録円盤全体で平均してしまえば内部転送レートはもっと低くなるはずだ。しかも、内部転送レートは記録円盤自体からハードディスクのコントローラまでの値で、ディスク コントローラからホスト側においては、もっと低い値しか得られない傾向がある。これらの理由のため、Maxtor 53073U6の場合、Ultra DMAモード2の転送レートでも十分間に合ってしまうのだ。PIOモード4はUltra DMAモードの1/8以下の性能だが、これはバースト転送の項で述べたのと同じ理由で低速なのだと考えられる。

 
平均転送速度(書き込み)

 Maxtor 53073U6の書き込み転送速度は、ピーク値でも20Mbytes/s程度で、平均の読み出し速度と同様、転送レートがUltra DMAモード2の33Mbytes/sもあれば十分間に合う速度だ。書き込みの性能では、ハードディスク上のバッファ メモリが大きく影響することを考えると、ハードディスクの記録円盤に対する書き込み性能はもっと低いはずだ。Maxtor 53073U6をUltra DMAモード4、モード2のどちらで使用しても、PCのIDEコントローラが同じ場合には性能差は生じない。PIOモード4はここでも低速だ。Intel 82801AAは前世代のIDEコントローラと比べ、容量の大きな書き込みバッファを持っている。そのため高い書き込み性能を誇るのだが、PIOモードではこのようなIDEコントローラの機能はいっさい使われていないことが分かる。

結論:ディスクはUltra DMA/66を必要としていない

 今回テストに用いた最速のMaxtor 53073U6ですら、Ultra DMA/66の66Mbytes/sという転送速度は必要とせず、Ultra DMA/33対応コントローラで十分間に合っている。このことから推測すると、ここ2〜3カ月間で発売されるUltra DMA/100対応ハードディスクの大半は、実際にはUltra DMA/100はおろか、Ultra DMA/66対応インターフェイスも必要としないだろう。ただし、一部のハイエンドIDEハードディスクは、確実にMaxtor 53073U6の性能を上回ってくることから、その際初めてUltra DMA/33対応インターフェイスでは間に合わなくなり、Ultra DMA/66対応インターフェイスが必要になってくると考えられる。 

 
     

 INDEX
  [実験]Ultra DMA/66の性能を徹底検証
  1. Ultra DMA/66、Ultra DMA/100登場の背景
  2. 実験前の下準備
    2-1. 機材を揃える
    2-2. 設定の確認
    2-3. デバイス ドライバを設定する
  3. Ultra DMA/66の実力を測る
    3-1. ハードディスク間の比較
  3-2. 転送モード間の比較
      コラム Windows 2000における転送モード間の比較
    3-3. IDEコントローラ間の比較
      コラム Windows 2000におけるIDEコントローラ間の比較
    3-4. Windows 98標準ドライバとベンダ製ドライバとの性能比較
    3-5. アプリケーション ベンチマーク テストで性能差は現れるのか?
  4. Ultra DMA/66は必要なのか?
 
「PC Insiderの実験」


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