Ultra DMA/66の性能を徹底検証

3.Ultra DMA/66の実力を測る

3-4. Windows 98標準ドライバとベンダ製ドライバとの性能比較

澤谷琢磨
2000/07/13

 Promise Ultra66のようにカード製品として市販されている製品の場合は、ほぼ必ずベンダ独自(この場合はPromise Technology製)のデバイスドライバが付属している。それに対し、Intel 82801AAやVIA VT82C686Aのようにマザーボード上に実装されるIDEコントローラの場合、Windows 98やWindows 2000自体にデバイス ドライバが付属しているため、ベンダ独自のデバイス ドライバは不要だ。ただ、グラフィックス ドライバなどのように、Windows付属のデバイスドライバは、安定性重視で設計されており、ベンダ独自のデバイス ドライバに比べると性能が若干落ちる場合がある。

 IntelとVIA Technologiesともに自社のチップセット向けIDEデバイス ドライバをリリースしているので、これらをインストールすることにより、IDEコントローラの性能をさらに高められるのではないかと予想し、ベンチマークテストを行った。テストは、基準のPC(Intel 82801AA搭載)と、VIA VT82C686A搭載の比較用のPCで行った。OSにはWindows 98 SEを使用している。

Intel UltraATA Storage Driverの場合

 Intel Ultra ATA Storage Driverのベンチマークは、ほかのベンチマークと同じ条件では、HD Tachの実行に失敗したため(測定を始めるとすぐにクラッシュする)、HD TachのAdvanced Size Checkをオフにした状態で測定している(Intel Ultra ATA Storage Driverのインストール方法については、「TIPS:IDEコントローラの状態をチェックするには」を参照のこと)。HD Tachは書き込みテストの際に自動的にAdvanced Size Checkをオンにするため、書き込みテストは実行できなかった。原因は不明である。この設定では、アクセスするディスク領域が8Gbytesに制限されるため、標準設定で行ったほかのベンチマークよりもよい値が得られる。Intel Ultra ATA Storage Driverのベンチマーク結果は、参考値程度としていただきたい。

ランダム アクセス
 
バースト転送速度
 
平均転送速度(読み出し)
 
平均転送速度(書き込み)
*1 今回のコンフィグュレーションでは、書き込みテストに失敗したのでN/A(測定不能)としている。

■Intel UltraATA Storage Driverはインストールする必要なし

 HD Tachの実行に失敗する原因は、HD TachのインストールするVxDドライバが、Intel UltraATA Storage Driverに対応していない可能性が高い。もしかするとIntel UltraATA Storage Driverには、何かしらの欠陥やあるいは標準ドライバとの非互換部分があるのかもしれない。ただ、このベンチマーク テストの結果だけでははっきりとしたことはいえない。

 今回、Intel 810E採用のSuper Micro 370SEDマザーボードでも同じ実験を行ったのだが、Windowsインストール後、Intel Ultra ATA Storage Driverを入れると、なぜかUltra DMA/66(Ultra DMA モード4)では動作しないというトラブルに遭遇した。Windows標準のドライバでは、Ultra DMA/66で動作していたにもかかわらず、Intel UltraATA Storage Driverインストール後に動作しなくなった原因は、Super Micro 370SEDのBIOSが、ホスト側のIDEケーブルの検出情報(80芯ケーブルか40芯ケーブルか)を保持したPCIレジスタを、Intel UltraATA Storage Driverの要求する形式で用意していないためと考えられる。Intel側のミスか、Super Micro側のミスかはともかくとして、OS標準のドライバと比較して、性能向上は見込めるものの、その割合はそれほど多くないので、あえてIntel UltraATA Storage Driverをインストールする必要はないだろう。

VIA IDE Busmaster Driverの場合

 VIA IDE BusmasterドライバはVIA Technologiesのドライバ ダウンロード ページからダウンロード可能だ。しかし、Windows 9x用VIA 4-in-1 Driver(AGPミニポート ドライバなど基本的なドライバを1つにまとめたドライバ ソフトウェア)をインストールしても、IDE Busmasterドライバ本体はインストールされないため、今回は単体で配布されているバージョンのIDE Busmasterドライバを追加インストールしてテストを行った。

 今回比較したのは、VIA IDE Busmasterドライバのバージョン2.1.47と、Windows 98 Second Edition標準のIDEドライバだ。事前にVIA 4-in-1 DriverとVIA INF Updateをインストールしてある。

ランダム アクセス

 ランダム アクセスの性能は、どちらのドライバを用いても性能差は生じなかった。これはランダム アクセスの性能は、ハードディスク内部で決定される部分が大きいためだ。

 
バースト転送速度

 もともとバースト転送速度が66Mbytes/sに届かないVIA VT82C686Aだが、VIA IDE Busmasterドライバインストール後は性能がより低下してしまった。値はMultiword DMAモード2の16.6Mbytes/sに近い値なので動作モード設定のミスのようにも見えるが、どのような設定を試してもこれ以上の転送速度にすることはできなかった。

 
平均読み出し速度

 VIA IDE Busmasterドライバは、バースト転送速度と同様に平均読み出し速度も、Maxtor 53073U6本来の性能を引き出せていない。Windows 98付属ドライバの性能は、ほぼMaxtor 53073U6本体の性能といってよいだろう。

 
平均書き込み速度

 書き込み速度もVIA IDE Busmasterドライバの結果は、かんばしくない。

結論:意外とデキがよいWindows 98標準IDEドライバ

 VIA IDE Busmasterドライバは、ベンチマークの結果から判断する限り、インストールしないほうが賢明のようだ。VIA 4-in-1 DriverがデフォルトでIDEドライバ本体をインストールしないのは(実際にはIDE関連のレジストリの一部を変更しているが)、自社製ドライバの性能がそれほど高くないことをVIA Technologies自身が認めているためかもしれない。

 Intel Ultra ATA Storage Driverは、Intel自身が「インストールすると性能が向上する」として配布している以上、何らかの性能上の利点が存在すると予想されたのだが、今回のベンチマークの結果を見るかぎり、それほど大きな性能向上は見込めなかった。HD Tachの測定が失敗したのは、単にHD TachのVxDドライバがIntelドライバのベンチマークに対応していないだけなのかもしれない。とはいえ、大幅に性能が向上するわけではないので、ほとんどの場合Intel Ultra ATA Storage Driverをインストールする必要はないと考える。ただしこのドライバは、Windows NT 4.0でIntel 815Eで採用しているIDEコントローラ「Intel 82801BA」をUltra DMAモード5(Ultra DMA/100)で動作させることが可能だ。IT管理者としては、Intel Ultra ATA Storage Driverの存在だけは知っておいたほうがよいだろう。

関連記事
PC TIPS IDEコントローラの状態をチェックするには

関連リンク
VIA Technologies VIA Technologiesのドライバ ダウンロード ページ
 
 
     

 INDEX
  [実験]Ultra DMA/66の性能を徹底検証
  1. Ultra DMA/66、Ultra DMA/100登場の背景
  2. 実験前の下準備
    2-1. 機材を揃える
    2-2. 設定の確認
    2-3. デバイス ドライバを設定する
  3. Ultra DMA/66の実力を測る
    3-1. ハードディスク間の比較
    3-2. 転送モード間の比較
      コラム Windows 2000における転送モード間の比較
    3-3. IDEコントローラ間の比較
      コラム Windows 2000におけるIDEコントローラ間の比較
  3-4. Windows 98標準ドライバとベンダ製ドライバとの性能比較
    3-5. アプリケーション ベンチマーク テストで性能差は現れるのか?
  4. Ultra DMA/66は必要なのか?
 
「PC Insiderの実験」


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