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ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)
【エー ディー エス エル】

2000/05/22

 銅線(メタリック)のアナログ電話回線を使い、高速なデジタル データ通信を行うDSL(Digital Subscriber Line:デジタル加入者線)技術の1つ。銅線のアナログ電話回線では、通常音声の伝送に4kHzまでの周波数しか利用していないが、能力としては数MHzまでの周波数が利用できる。現在は使っていない音声よりも高い周波数帯を幅広く使うことで、高速なデータ転送を行おうというのがxDSLである。DSL技術には、データ転送の方式の違いでADSL(Asymmetric DSL)のほか、SDSL(Single line DSL/Symmetric DSL)、HDSL(High data rate DSL)、VDSL(Very high data rate DSL)などの種類があり、総称してxDSLと呼ばれる。主なxDSL規格は表のとおり。

名称 名称 ケーブル数 通信速度 最大伝送距離
ADSL Asymmetric DSL 1組 16k〜1Mbits/s(上り)/1.5M〜10Mbits/s(下り) 5.5km程度
SDSL Single line DSL 1組 160k〜2Mbits/s(対称) 7km程度
HDSL High data rate DSL 2組 1.5M〜2Mbits/s(対称) 7km程度
VDSL Very high data rate DSL 1組 1.8M〜2.3Mbits/s(上り)/13M〜52Mbits/s(下り) 1.5km程度
xDSLの主な規格

 このうち最近、東京都内と大阪市、大分市の一部でNTTの一般回線を使った試験サービスが開始され、注目を集めているのがADSL接続サービスである。ADSLは、「Asymmetric Digital Subscriber Line(非対称デジタル加入者線)」の名前のとおり、NTTの交換局からユーザー宅に向かう「下り」と、逆の「上り」のデータ転送速度が異なっている。「下り」の最大データ転送速度は1.5Mbits/sから10Mbits/sと高速だが、「上り」は「下り」の10分の1程度に抑えられている。

 現在、NTT地域会社が提供しているADSL接続サービスには、大きく分けて、NTT地域会社がADSL装置を設置する「第1種サービス」と、ISPがADSL装置を設置する「第2種サービス」の2種類がある。さらにそれぞれに対し、音声電話サービスとデータ通信サービスを共用する「タイプ1」と、データ通信サービス専用にする「タイプ2」の2種類が用意されている。このうちNTT-MEやNTTコミュニケーションズが試験サービスを行っているADSLサービスは第1種サービスで、タイプ1、タイプ2ともに「下り」が512kbits/s、「上り」が224kbits/sに設定されている。また、同様に試験サービスを行っている東京めたりっく通信は第2種サービスで、「ADSL標準接続」で「下り」が640kbits/s、「上り」が250kbits/s、「ADSL高速接続」で「下り」が1.6Mbits/s、「上り」が270kbits/sと2種類のサービスを提供している。

 ADSLでは、1組の電話回線で既存の音声電話サービスとデータ通信を共存させるため、音声帯域とデータ帯域を分離する「スプリッタ(周波数分離装置)」という装置がユーザー宅に必要となる(利用する回線で音声を使わなければスプリッタは不要)。さらにスプリッタに通話用の電話機と、データ通信用の専用モデム(ADSLモデム)を接続する必要がある。

ADSLの接続構成
NTT-MEやNTTコミュニケーションズが提供してるのは、NTT地域会社がADSL装置を設置する「第1種サービス」を利用したものだ。東京めたりっく通信が提供しているのは、ADSL装置を同社が設置する「第2種サービス」である。第2種サービスのほうが、ISPによる通信速度や接続料金などの設定の自由度が高くなるが、反面、ADSL装置をNTTの収容局に設置する必要が生じる。

 同じ銅線の電話回線を使いながら、ADSLがISDNよりも高速なデータ転送が可能なのは、ISDNよりも幅広い周波数帯を使うとともに、「DMT(Discrete Multitone)方式」または「CAP(Carrierless Amplitude/Phase Modulation)方式」という変調/符号化方式を採用していることによる。

 DTM方式とは、データ転送に使用する帯域を4kHz単位といった一定の周波数で細かいサブキャリアに分割し、それぞれのサブキャリアに対し振幅変調を行うというものだ。CAP方式とは、データ転送に使用する帯域を「上り」と「下り」に分け、それぞれに対しV.34モデムで用いられているQAM方式と同様、振幅変調と位相変調を行うものである。DTM方式は、ノイズに強く、帯域の設定が容易であるというメリットがある。一方のCAP方式は、V.34モデムで使われている変調/符号化方式の延長線上にあり、回路もDMT方式に比べると簡単だ。また、消費電力が小さいというメリットがある。DMT方式とCAP方式の間には互換性がないばかりか、同じ方式を採用していてもADSLモデム メーカーによって互換性がないのが現状だ。そのためユーザーは、ADSLのサービス プロバイダが指定したADSLモデムを使うことになる。

 また、ADSLはISDNと使用する周波数帯が重なっており、ISDNを使用している電話回線ではADSLは利用できない。そのうえ、ADSLとISDNの回線が同一のケーブル束になっているような状況では、ISDNとADSLが干渉して、期待通りのデータ転送速度が実現できない、という問題も発生ある。さらに、ADSLの通信距離は5.5km程度と言われているが、これもケーブルの状況や受けるノイズなどにより短くなるという。そのため、接続が行えても、規定の通信速度が得られないこともある。

 このような問題に加え、最近では、建物や地域によって、ケーブルの途中からNTTの収容局までが光ファイバー敷設されているところもある。このような場所では、残念ながらADSLは利用できない。電話線のファイバー化が進んでいることから、ADSLが利用できない場所は増加傾向にあることが予想される。

 こうした問題があるADSLだが、既存の銅線の電話回線を使って高速なデータ通信が行える、という点は大きなメリットだ。新たにファイバーなどを敷設する必要がないため、比較的安いコストで高速なインターネット接続サービスが提供可能だ。また、企業においても、ISPへの接続を安価な銅線の専用線で行えるというメリットもある。家庭向けには、データ転送速度を低く抑えた代わりにスプリッタを不要にした、G.liteという規格もある。G.liteは標準規格になっていることから、各社から互換性のあるG.liteモデムが提供され、接続機器が安価になると期待されている。今後は、ADSLサービスの提供エリアが広がり、安価な高速インターネット接続手段の1つとして普及することは間違いないだろう。記事の終わり

 

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