元麻布春男の視点

新Pentium 4とDDR SDRAMサポートのIntel 845のお買い得度

2.DDR SDRAM対応チップセット「Intel 845」の特徴

元麻布春男
2002/01/11

Intel 845のDDR SDRAMサポートは単なる追加機能

 一方、今回新しくDDR SDRAMのサポートが追加されたIntel 845チップセットだが、正式にはDDR SDRAMのサポートが加わったからといって名称に変更はない。つまり、DDR SDRAMをサポートしたIntel 845チップセットについて、一部では区別する意味もあってIntel 845Dという名称が事前に使われていたのだが、正式名称ではないということになる。データシート的には、SDR DRAMをサポートしたIntel 845については「Intel 845 Chipset: 82845 Memory Controller Hub (MCH) for SDR(文書番号290725)」、DDR SDRAMをサポートしたものについては「同 for DDR(同298604)」と分かれている。しかし名称としては、DDR SDRAMをサポート可能なIntel 845チップセットは、単にB0ステップ以降のIntel 845チップセット、ということのようだ。実際、B0ステップのIntel 845チップセットは、DDR SDRAMのサポートが正式に可能になったほかは、これまでの(SDR SDRAM対応の)Intel 845チップセットと、仕様的に変わることはない。

 この事実が示すのは、Intel 845チップセットについてどちらのメモリを前提にマザーボードをデザインするか、ということはマザーボード・ベンダやPCシステム・ベンダに委ねられており、Intelとして切り替えを強要するものではない、ということだ。つまり、DDR SDRAMのサポートはIntel 845チップセットに「追加」されたものであり、DDR SDRAM対応のIntel 845チップセットがSDR SDRAM対応のIntel 845チップセットを置き換えるものではない、ということになる。現実には、どちらを選ぶかは、市場で決まるメモリの価格と、性能に関するニーズのバランスで決まる、ということになるのだろう。

Intel 845搭載のIntel製マザーボードの特徴

 というわけで、性能が気になるところだが、最初に今回登場したPentium 4プロセッサと、DDR SDRAMをサポートしたIntel 845プラットフォームについて、まず確認しておきたい。写真1が、Northwoodコアを用いたPentium 4プロセッサ(2.20GHz)だが、IHS(Integrated Heat Spreader:熱をヒートシンクに逃がすための金属カバー)に印されたマーキングが控えめ(?)になったことを除き、これまでの478ピン対応のパッケージと何ら変わりはない。ただし、パッケージの裏面(ピン側)は写真2のように、微妙に異なっている。

写真1 NorthwoodコアのPentium 4の表面
マーキングが控えめになった以外に違いはない。ダイ・サイズが小さくなったにもかかわらず、IHSの大きさも同じである。
 
写真2 NorthwoodコアのPentium 4の裏面
プロセッサのピン側。左がNorthwood、右がWillamette。コンデンサ(電源電圧の揺れを抑えるためのパーツ)の配置が異なっていることが分かる。

 写真3は、DDR SDRAMに対応したIntel製のIntel 845マザーボードである「D845BG」だ。メモリ用の補助電源コネクタが実装されていないこと、拡張スロットの数と構成、背面のI/Oパネルに4つのUSBポートが用意されることなど、主要なスペックについては、SDR SDRAMに対応したD845WNとほぼ同等である。違いは、DIMMスロットが3本から2本に減ったこと、写真右上に日本電気製のUSB 2.0ホスト・コントローラ用の空きパターンが用意されていること、そして何よりマザーボードの大きさが小さくなったことだ。

写真3  DDR対応のIntel 845を採用したIntel製マザーボードのD845BG
写真はLAN内蔵型(D845BGL)であるため、CNRスロットが省略されている。LAN機能を持たないD845BGおよびD845BGSEではCNRスロットが用意される。

 まずDIMMスロットが減った点だが、これはIntel 845チップセットの仕様によるもの。SDR SDRAM使用時の最大搭載メモリ容量は3Gbytesとなるが、DDR SDRAM使用時の最大搭載メモリ容量は2Gbytesと少なくなる。USB 2.0ホスト・コントローラ用の空きパターンは、Direct RDRAM対応のIntel 850チップセットを用いたATXフォームファクタのマザーボード(D850GBおよびD850MV)には用意されてきたが、Intel 845チップセット・ベースのIntel製マザーボードとしては、これが初めてだ。423ピン・パッケージのPentium 4に対応のD850GBで、実際にUSB 2.0ホスト・コントローラが実装された例は、展示会などで展示されたサンプル以外には存在しないと思うが、478ピン・パッケージのPentium 4に対応のD850MVでは正式に製造オプションとして用意されているようで、最近IntelのWebサイトからWindows XPに対応したUSB 2.0デバイス・ドライバのダウンロードが可能になっている。SDR SDRAM対応のD845WNマザーボードには、USB 2.0のオプションは用意されていなかったのだが、D845BGではUSB 2.0ホスト・コントローラを実装した「D845BGSE」というモデルが用意されており、SDR SDRAM対応のD845WNとの位置付けの違いがうかがえる(ただし、本稿執筆時点ではD845BGの製品紹介/サポートのWebページには、まだUSB 2.0のドライバは用意されていない)。

 D850MVやD845WNは、奥行きがATX 2.01規格ギリギリの244mmまである、比較的大型のマザーボードだった(IDE RAID機能に対応した最近の台湾ベンダ製マザーボードの多くがこのサイズ)。それに対し、D845BGの奥行きは208mmで、Mini-ATXと同じ長さに抑えられている(ただし幅はスタンダードなATXと同じ305mmで、D850MVやD845WNと変わらない)。奥行きが減った影響で、プロセッサの取り付け位置がD850MVやD845WNと異なっており、最初の423ピン・ソケットのようにヒートシンクを固定するリテンションをPCケースのシャシーに直接固定することは、完全に諦めた格好だ。実際、478ピン・ソケットになってから、リテンションの固定はプラスチック・ピンによるファスナーで固定することになっており、シャシーの穴は要求されなくなっているのだが、Pentium 4対応ヒートシンクのような重量物を支えるのに、若干の不安(マザーボードのソリ、輸送時の脱落など)があるのも事実だ。

 また、奥行きの減少で、リテンションの周辺が混み合うようになっており、ヒートシンクの着脱時に、電源部の電解コンデンサに無理な力がかからないよう、少々気を使う。なお、D850MVでは、AGPスロットの延長線上に電解コンデンサやジャンパ・ピンがあり、これらの部品が干渉して一部のグラフィックス・カードが取り付けられないという問題があったが、D845WN同様、このD845BGでもこの問題は解消されている。

  関連リンク 
Intel 845 Chipset: 82845 Memory Controller Hub (MCH) for SDR(文書番号290725)のダウンロード先
Intel 845 Chipset: 82845 Memory Controller Hub (MCH) for DDR(同298604)
 

 INDEX
  新Pentium 4とDDR SDRAMサポートのIntel 845のお買い得度
    1.単位面積あたりの消費電力が上がった新Pentium 4
  2.DDR SDRAM対応チップセット「Intel 845」の特徴
    3.気になるIntel 845チップセットの性能
    ベンチマーク・テストの結果
 
「元麻布春男の視点」


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