連載 PCメンテナンス&リペア・ガイド

第7回 電源ユニット選びと実際の交換作業

2. 電源ユニットのスペックを把握する(2)

林田純将
2002/03/21

最大出力電力値/電流値をチェックする

 元の電源ユニットについて、その外形寸法と電源コネクタの種類が規格に合致していることが確認できたら、次は電源ユニットとしては最も重要なスペック項目といえる出力電力についてチェックしよう。なお、電源ユニットの出力電圧に関する基本的な点については、前回の「3. ATX対応電源ユニットの注意点」にまとめてあるので、まずそちらを参照していただきたい。

 電源容量についてチェックすべきスペック項目としては、電源ユニットの総出力値と、出力電圧ごとの最大電流値が挙げられる。総出力値とは、PCのカタログになどにある「電源容量」のことで、いわば総合的かつ瞬間的な最大出力だ。デスクトップPCの場合、マイクロタワーなど小型のものは100〜200W、ミニタワーからフルタワー・クラスだと200W〜300W程度である。

 また出力電圧ごとの最大電流値とは、ATX電源ユニットが備えている+12V、+5V、+3.3V、−5V、−12V、+5VSBという合計6系統の出力それぞれの最大電流値のことだ。これに加えて、+3.3Vと+5Vを組み合わせたときの最大電力もスペックの1つとして挙げられる。+3.3Vと+5Vはともにマザーボードや拡張カード上の半導体パーツに供給される重要な電力であり、また消費電力も大きいため、このように特別な扱いになっている。

 Wake On LANやスタンバイ/レジュームなどの省電力系の機能を使うのであれば、+5VSBにも気を付けよう。ATX2.03の規格では0.72Aが必須とされており、それだけあれば理論的には問題ないとされているが、安全のための余裕をもって1.5A以上のものを選ぼう。

 交換するための電源ユニットを購入する場合、安定した動作と今後のハードウェア拡張なども考慮すると、上述の最大電力値/電流値すべてについて、元の電源ユニットよりも大きいものを選ぶべきだ。それには元の電源ユニットの各スペックを知る必要があるが、それは電源ユニット表面のラベルに記されている。

最大電流値や最大電力値が記された電源ユニットのラベル
それぞれの出力電圧の系統ごとに、最大電流値(単位はアンペア[A])が表記されているのが分かる。総出力は、左の電源ユニットでは「300Watts」、右では「200W MAX」といった具合に表記されている(単位はワット[W])。このラベルはたいていの電源ユニットに貼ってあるが、もしなければマニュアルなどに記述があるはずだ。

 上の写真では、どちらのラベルにも+3.3Vと+5Vを組み合わせたときの最大電力が記されているが、これがない電源ユニットもある。その場合、新しい電源ユニットは総出力をやや大きめにして余裕を持たせた方がよいだろう。元が250Wなら、新しいものは300Wといった具合だ。

ファンの個数や位置、電源ケーブルの長さなども要注意

 電源ユニットには必ず空冷ファンが内蔵されている。このファンの位置や個数は電源ユニットによって異なるので、交換する際には、なるべく元のものと新しいもので合わせる必要がある。さもないと、PCの設計時に想定されたとおりに空気が流れず、パーツの冷却に支障をきたすかもしれないからだ。

ファンの個数が異なる2種類の電源ユニット
左は背面側にファンを1つだけ、右は背面と底面に合計2つのファンを装備している。

電源ユニットの内蔵ファンの位置が重要である例
このPCでは、CPUクーラーのファンと電源ユニットの内蔵ファンでプロセッサ上のヒートシンクを挟む配置になっている。もし電源ユニット側のファンがなくなったら、ヒートシンク上の空気の流量は減り、プロセッサの冷却が間に合わなくなって発熱による動作不良を引き起こしかねない。

 PCの内部で電源ユニットがどこにレイアウトされているかも重要なポイントだ。マザーボードによっては電源コネクタが電源ユニットから離れていることもあるため、電源ユニットによっては電源ケーブルが届かない可能性もあるからだ。またフルタワー型ケースの場合は、各種ドライブの電源ケーブルについても同じことが当てはまる。

 もっとも、新しい電源ユニットのケーブルが短くても、市販の延長ケーブルを継ぎ足せば解決できる。しかし、延長ケーブルがトラブルを引き起こすこともないわけではないので、なるべくなら事前に元の電源ユニットのケーブル長をチェックしておき、新しい電源ユニットでも同程度のケーブル長であることを確認したい。また、ドライブの電源ケーブルについては、コネクタ数が足りることも確認しておいた方がよい。

マザーボードやドライブのための延長電源ケーブル
左がATXマザーボード用の延長電源ケーブル。右は本来、ドライブ用の電源コネクタが足りないときに増やすためのものだが、ケーブルの延長にも役立つ。

 そのほか、電源ユニットをケースに固定しているネジ穴やメイン電源スイッチの位置もチェックしておこう。規格ではネジ穴の位置も定められているが、実際の製品では微妙にずれていることもあるからだ。特に、非常に安価な電源ユニットでは、規格に対してルーズなものが多い傾向にあるので注意したい。また、メイン電源スイッチが背面に付いている電源ユニットの場合、メイン電源スイッチの位置が異なる場合があり、ケースによっては干渉して取り付けられないことがあるので注意したい(メイン電源スイッチ用の取り付け穴がないPCもあるので、こうした場合はメイン電源スイッチがない電源ユニットを選択すること)。

静音タイプの電源ユニットとは

 最近のPCパーツ・ショップなどでは、「静音タイプの電源ユニット」というものが販売されており、人気があるようだ。これは、電源ユニットのファンを工夫して、音を静かにしたもの。ケース内部の温度によりファンの回転数を制御するなどしている。夜間のオフィスなど、人が少なくなると、意外とPCの音は気になるものだ。通常の電源ユニットよりは、若干高価になるが、どうせ交換するのならば、こうした静音タイプの電源ユニットを選択するのもいいかもしれない。

Pentium 4やAthlonに対応した電源ユニット

 PCの搭載プロセッサ別の注意点も記しておこう。前回の「3. ATX対応電源ユニットの注意点」に記したように、Pentium 4搭載PCでは消費電力の大きなプロセッサ向けに専用の電源ケーブルを必要とするため、「Pentium 4対応」もしくは「ATX12V対応」などと表示された電源ユニットを選択する必要がある。また、最近はずいぶんと改善されているが、Athlonシリーズは電源ユニットに対する負荷が高く、相性がシビアなプロセッサといわれている。そのため、Athlon搭載PCの電源ユニットを購入するなら、AMDが公開している推奨電源リストから選ぶのがよいだろう(以下のコラム参照)。最低限でも、下の写真のようにAthlon対応であることが明記されている製品から選ぶべきだ。

Pentium 4とAthlonに対応する電源ユニット
化粧箱の正面右下には、Pentium 4とAthlonシリーズそれぞれに対応していることを意味するシールが貼られているのが見える。ただ、厳密にはクロック周波数によって、同じプロセッサのシリーズでも対応/非対応が分かれる場合もあるので注意したい。
 
AMDの推奨電源リストは電源ユニット選択の1つの目安

 電源ユニットを「性能」という観点で見た場合、スペック表に記されている総出力値や+5Vや+3.3Vの最大電流値よりは、日本のオフィスビルなどで得られるやや低めの商用電源(AC90〜100V)でも常に安定して動作するか、またPCの起動時にかかる大きな電力消費を支えきれるか、といったことが重要といえる。トラブルを最小限に抑えるには、こうした条件を満たした高品質な電源ユニットを入手したいところだ。とはいえ、プロセッサやグラフィックス・カードなどとは違い、電源ユニットの性能を測定するベンチマーク・テストの結果というものは流布しておらず、明確な性能指標がない状態だ。

 こうした状況下で、電源ユニットの選択に役立ちそうな指標として、AMDが公開している「Athlonプロセッサ推奨電源ユニット」が挙げられる(AMDの推奨電源ユニット・リストのページ)。先に述べたように、Athlonプロセッサは、電源ユニットに対する要求が厳しいといわれており、AMDがAthlon XP 2100+のような高クロックで消費電力の大きなプロセッサに対して推奨していることは、電源ユニットの信頼性の高さを示す1つの目安になる。もちろん、AMDがすべての電源ユニットをテストしているワケではなく、推奨されていない電源ユニットに問題があるということではない。あくまで、1つの指標となるということだが、何の指標もないよりは安心できる。
   
  関連記事 
第6回 意外に故障の多いパーツ『電源ユニット』の基礎
 3. ATX対応電源ユニットの注意点
資料
ケーブル&コネクタ図鑑
 
  関連リンク 
デスクトップPC「Dimension」シリーズの製品情報ページ
推奨電源ユニット・リストのページ
 
 

 INDEX
  [連載]PCメンテナンス&リペア・ガイド
  第7回 電源ユニット選びと実際の交換作業
    1. 電源ユニットのスペックを把握する(1)
  2. 電源ユニットのスペックを把握する(2)
    3. 電源ユニットを交換する
    4. 電源ユニット交換後のトラブルシューティング
 
「連載:PCメンテナンス&リペア・ガイド」
 


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