[Hardware]

ケースを開けたPCは、動作テストが済んでからカバーを閉じる

デジタルアドバンテージ
2000/07/17

 ハードディスクの交換や拡張カードの増設など、PCのハードウェア構成を変更するときは、PCのケースカバーを開けてパーツを着脱するといった作業を要することがよくある。その場合、大雑把な手順は、

  1. PCの電源を切る
  2. PCのケースカバー(PC本体を覆っている金属あるいはプラスチック製の取り外し可能なカバー)を取り外してケースを開ける
  3. 内部パーツの着脱などの作業を行う
  4. ケーブルの接続など作業結果を確認する
  5. ケースを閉める
  6. PCの電源を入れて、ハードウェアの動作をテストする

となる。

 もし6のテストで、ハードウェアが正しく動作していないことが判明したら、1からやり直さなければならない。実際、ケーブルの接続を間違えるなどの作業ミスにより、ハードウェアが正しく動かないという事態はそれほど珍しくない。また、始末が悪いことに、増設/交換したパーツとはまったく関係ないパーツの動作がおかしくなることだってある。たとえば、SIMMやDIMMなどのメモリ モジュールを増設する際、モジュールをソケットに押し込むとマザーボードが若干へこむせいで、AGPカードがスロットから浮いてしまい、接触不良が生じてPCが起動しなくなることがある。この場合、誰でもまずメモリ モジュールを疑うから、AGPカード/スロットに原因があるとは、すぐに気が付かないだろう。このようにトラブルの原因が簡単に掴めないと、1〜6の手順を何度も繰り返すハメになる。そのため1〜6の手順のうち、要らない手間はなるべく省いて作業時間を短縮したいところだ。

 そこで、5の「ケースを閉める」という手順を省いてしまおう。つまりケースを開けたまま、ハードウェアの動作テストを行い、問題がないことを確認してから、再び電源を切ってケースカバーを取り付けるのだ。ケースカバーの取り付け/取り外しには、意外に時間がかかるので、作業時間を短くするには効果的である。また頻繁なケースの開閉は、ケースカバーやその取り付け用ネジ穴を傷めやすいので、PCを大事に使うという点でも意味のあることだ。

PCケースの開け閉めには時間がかかる

安価なPCだと、左写真のようにケースカバーが「コ」の字型になっていることが多い。このタイプのケースカバーは剛性が足りなくて変形しやすいので、PC本体への取り付けが特に面倒だ(実際、左写真のケースでは、カバーが下方に向かって広がってしまっている)。右写真のように側板だけを外せるPCでも、ネジの着脱には時間がかかるし、また精度が悪いと側板を取り付けるのに一苦労することがある。

 動作テストの最中には、ディスプレイなどの周辺機器も、とりあえず仮に設置したままケーブルだけつないで稼働させよう。テストが終わったら、PCのケースを閉じた後、あらためてPCと周辺機器の配置を決めて本格的に設置し直せばよい。

ケースを開けたままPCを稼働させる際の注意

 PCは、ケースを開け放った状態でも、電源を入れて稼働させることは可能だ。ただし、以下のことには注意する必要がある。

ケースが閉じているかどうかを検出できるPCもある

 PCによっては、ケースが開閉されたことをPC自身に知らせる機能を備えるものがある。具体的には、小型の電気スイッチがケースカバー付近に設置されていて、ケースを開けるとそのスイッチがオフ(あるいはオン)になり、それが電気信号でPCに伝わる、という仕組みだ。PCの標準的な機能ではなく、企業向けなど一部のPCだけに装備されているものだ。

 よくあるのは、PCの起動時に「ケースが開いている」あるいは「ケースを開けられました」という警告メッセージが表示されるパターンだ。これは、PCの内部パーツが人知れず盗難されてしまった際に、なるべく早くユーザーに知らせるためである。なかにはケースを開けた瞬間に、ネットワークを介して管理者にその旨を伝えられるPCシステムも存在する。このようにセキュリティを高める目的で、ケース開閉検出機能が企業向けPCに組み込まれていることがある。単に警告メッセージが表示されるだけならば、無視して動作テストを行っても問題はない。

 厄介なのは、ケースが開いているとPCが起動しなかったり、あるいはシステムの初期化時にエラーメッセージを発してPCが止まったりする場合だ。多くはないが、サーバなど信頼性重視のPCでは、このような設計になっていることがある(ケースが開いたままPCに電源が入るというのは異常事態である、という設計思想だ)。この場合は、ケースカバーを取り付けてテストするしかないだろう(ネジ止めまでする必要はない)。

パーツの発熱に注意

 意外かもしれないが、ケースを開けたままPCを運用し続けると、閉めた状態よりケース内部に熱がこもりやすく、温度も上がる傾向がある。

 通常、内部パーツから発生した熱は、それによって暖められた空気ごと空冷ファンでケースの外に排出される。すると、ケース内部に負圧が生じるため、フロントパネルに設けられたスリット(空気を採り入れるための細かい穴)から、自然に外部の冷たい空気がケース内部に流入し、内部温度を下げる働きをする(空冷ファンで強制的に冷たい空気を採り入れる場合もある)。このようにPCケースの内部には、一箇所に熱が溜まり温度が上昇することを防ぐ仕組みがある。

 しかし、ケースを開放するとケース内部に負圧がかからなくなり、空気の流れを阻害してしまうため、かえってパーツの温度が上昇してしまうのだ。PCに使われているパーツは、もちろん工業製品であり、一定の温度範囲でしか動作が保証されていない。したがって、その範囲を超えて温度が上昇したら、正しく動かなくなってしまう。これでは動作テストの意味がない。

 もっとも、ケースを開けたぐらいで動作に支障をきたすほど発熱するパーツは、決して多くはない。注意を要するのは、クロック周波数が1GHzクラスのプロセッサや、回転数が10000rpm以上のハイエンドSCSIハードディスクなど、消費電力が非常に大きなパーツだけだ。これらを組み込んだPCのテストが長時間に及ぶなら、ケースを閉じるか、扇風機などを使って強制的に冷却を行うとよい。

固定していないパーツに触れないようにする

 PCのハードウェアを着脱する作業に慣れてくると、ケースカバーだけではなく、ドライブや拡張カードなどもネジ止めせず、仮設置してテストできるようになる。このように固定されていないパーツに不用意に触れると、拡張カードならスロットとの接点で電気的なショートが生じたり、ハードディスクなら内部の磁気ヘッドとディスクが接触したりして、故障を招くことがある。固定しないパーツには、物理的な力(ショック)を加えないよう、十分注意すべきだ。

 このようにして、PCの正常動作をしっかり確認してから、初めてケースを閉めると、作業効率がよい。記事の終わり

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