[Hardware]

AGPカードの「ゆるみ」を防ぐには

デジタルアドバンテージ
2000/08/04

 以前、筆者がPCにメモリを増設したときのことである。PCのケースを開け、メモリ モジュールをソケットに押し込んでしっかり装着した後、電源を入れたところ、画面に何も表示されないというトラブルが生じた。このとき、筆者は単純にメモリの装着ミスやメモリそのものの不良などを疑い、ソケットにメモリ モジュールを差し直したり、別のベンダのメモリ モジュールと交換したりした。ところがトラブルの原因が判明すると、それはメモリとまったく関係ないAGP対応のグラフィックス カード(以下AGPカード)にあった。AGPカードがAGPスロットからわずかに浮き上がり、接触不良を起こしていたのだ。

 AGPカードが浮き上がったのは、メモリ モジュールをソケットに押し込んだ際、マザーボードが若干へこみ、その反動でAGPスロットがカードを押し上げてしまったせいだった。もちろん、AGPカードのブラケット*1はケースにネジ止めしていたが、このトラブルに関しては効果がなかったといえる。

*1 ブラケットとは、拡張カードの端に付いている金具のこと。カードをケースにネジ止めするのに用いられる。

 上記のようなPCのメンテナンス時だけではなく、PCを輸送する際に加えられる振動や衝撃でも、AGPカードがスロットから浮き上がる現象は生じるという。こうしたAGPカードの「ゆるみ」によるトラブルは、おそらく筆者だけではなく、多くの人が経験しているに違いない。

 PCIカードやISAカードに比べ、明らかにAGPカードはゆるみが生じやすい。その原因の1つは、AGPカードとそのスロットとの接触面積がPCIやISAより小さいことから、接触による摩擦力が小さい、ということが挙げられる。もともとPCの拡張カードをきっちり固定しているのはブラケットのネジ止めだけであり、原理的にカードを固定する力はそれほど強くない。この欠点がAGPで露呈したともいえる。また、AGPではPCIと比べ、ブラケットとスロット部分の間の距離が長いのも、ゆるみやすさの原因といえる。

AGPカードをしっかりスロットに固定するには

AGPカードを固定する留め具の例

これはトライコーポレーション製(Justyブランド)の「AGP-Busカードホルダー」という製品。PCショップにて600円(税別)で購入した。

 予期せぬAGPカードのゆるみを防止するには、ブラケットをケースにネジ止めするだけではなく、AGPスロットにカードをしっかり固定する方策を講じる必要がある。それにはAGPカード専用の留め具を使うのが効果的だ。この留め具はPCショップなどで市販されており、比較的容易に入手できる。ここで紹介する留め具(右写真)は、そうした製品の一例である。

 AGPカードの留め具は、ケーブルやネジなどといった個別パーツの売り場で販売されている。また、商品名には「カードホルダー(card holder)」「リテイナー(retainer)」「リテンション フレーム(retention frame)」といった単語が含まれていることが多い。

 今回購入した留め具によるAGPカードの固定方法を、以下で簡単に説明しよう。

留め具をAGPスロットに取り付ける

いったんAGPカードを外したら、スロット周辺にあるマザーボード上の細かいパーツが留め具とぶつからないことを確認しながら、留め具を取り付ける。
  このように、留め具のツメをAGPスロットの下側に引っかける。

AGPカードを装着して留め具に固定する

AGPカードをスロットに差し込んでブラケットをネジ止めしたら、裏側から留め具にカードをはめ込み、しっかり固定する。
  この留め具を上下にスライドさせて、カードを上から押さえ込む。

 作業が終わったら、AGPカードを手で揺さぶってみて、しっかり固定されていることを確認しよう。

AGPカードに合わせて留め具を選ぶ必要がある

 以上で紹介した留め具は、どんなAGPカードでも利用できるわけではない。AGPカードの形状に合わせて、適切な留め具を選ぶ必要があるのだ。

 

カードエッジ コネクタ部分の形状の違い

上の写真は最近のAGPカードのカードエッジ コネクタ部分で、下の写真は古いAGPカードのものだ。
  この「出っ張り」(リテンション ノッチ)に留め具を引っかけることで、カードがゆるむのを防ぐ。

 最近のAGPカードには、上側写真のように、カードエッジ コネクタの前縁に「出っ張り」がついている。一方、古いAGPカード(下側写真)にはそれはない。というのも、この「出っ張り」(リテンション ノッチと呼ばれる)はAGPカードのゆるみやすさが発覚した後に、その対策としてAGPの規格に追加された仕様だからだ。最近のAGPカードなら、たいていこのリテンション ノッチが装備されている。

リテンション ノッチ対応の留め具の例

AGPスロットを囲むようにして装着されている緑色のパーツが留め具である。
  カードを取り外すには、向かって手前にこのレバーを引く。するとリテンション ノッチに引っかかっていた留め具が外れて、カードが取り外せるようになる。

 もちろん、このリテンション ノッチを利用してAGPカードを固定する留め具も実在する。左の写真は、コンパックコンピュータ製のデスクトップPCに採用されていた留め具だ。

 もし、対象のAGPカードがリテンション ノッチを装備しているなら、なるべく左の写真のようなリテンション ノッチ対応の留め具を選ぶほうがよい。さもないと、留め具がリテンション ノッチにぶつかってしまい、カードが正しくスロットに装着できない場合があるからだ。実際、今回購入した留め具もリテンション ノッチと衝突するため、その箇所を留め具側で削って、ようやくリテンション ノッチ付きAGPカードを固定できた。

 もちろん、リテンション ノッチのないAGPカードには、今回選んだようなリテンション ノッチを使わなくても固定できる留め具が必要になる。

 注意すべき点はまだある。AGPスロット周辺にあるパーツの配置によっては、それが留め具と衝突するため、正しくスロットに留め具を固定できない場合がある。留め具を購入する前に、AGPスロット周辺部に邪魔なパーツがないか、確認しておくとよい。またAGPカードによっては、カードの両面に半導体チップなどを実装している場合があるが、特に裏面のパーツが留め具とぶつかる可能性がある。パーツを留め具との衝突で傷めないよう注意したい。

 最近のPCには、AGP ProというAGPの上位規格に対応したAGPスロットを装備しているものがある。このAGP Proでは、従来のAGPよりスロットの長さが延びており、そのコネクタのサイズも大きくなっている。そのため、従来のAGPに合わせて設計された留め具は、AGP Proのソケットには装着できないので、AGP Proに対応した留め具を入手する必要がある。記事の終わり

  関連リンク
AGPカードの固定方法に関する規格「AGP Card Retention Specification」
本文中で紹介したAGP専用留め具「AGP-Busカードホルダー(DCH-AGP)」の情報

「PC TIPS」


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