[Hardware]

IDEハードディスクの転送モードにかかわるトラブルを解決するには?(2)

澤谷琢磨
2001/05/08

ハードディスク側で転送モードの違いを吸収する

 ここでは、ソフトウェアをまったく変更せずに解決する、第2の解決策を紹介しよう。それは、IDEハードディスクがサポートする転送モードの上限を、強制的にIDEホスト・コントローラなどがサポートする転送モードに揃える、という方法だ。ハードディスク・メーカーも前述のようなトラブルの存在を認識しており、解決策として、IDEハードディスクがサポートする転送モードの上限を「見かけ上」変更するためのユーティリティを配布している(下表参照)。これを利用すれば、本来はUltra DMAモード5までサポートしているIDEハードディスクでも、IDEホスト・コントローラやBIOS、デバイス・ドライバからは、Ultra DMAモード2までしかサポートしていないように「見せかける」ことが可能になるのだ。

メーカー名 ユーティリティをダウンロードできるページ
IBM http://www.storage.ibm.com/ techsup/hddtech/welcome.htm
Maxtor http://www.maxtor.com/ softwaredownload/Maxtor_Downloads.htm
旧Quantum(現Maxtor) http://www.maxtor.com/ Quantum/support/csr/software/softmenu.htm
Seagate Technology http://www.seagate.com/ support/disc/drivers/index.html
Western Digital http://www.wdc.com/ service/ftp/drives.html
各メーカーのユーティリティが掲載されているページ一覧
基本的に、こうしたハードディスクの機能を直接変更するユーティリティは、メーカーごと(あるいは製品ごと)に専用のものを利用する必要がある。手持ちのハードディスクに合わせて、必要なユーティリティを入手しよう。

 本稿では、IBM製のUltra DMAモード5対応のIDEハードディスクであるDeskstar 75GXP(DTLA-307030)で、転送モードの上限を変更する具体的な例を紹介しよう。使用するユーティリティは「IBM Feature Tool Ver.1.10」である。ほかのハードディスクの場合は、上記の表を参考に、各ハードディスク用のユーティリティを入手・利用していただきたい。

 IBM Feature Toolの場合、大雑把な手順は、

  1. ユーティリティを起動するためのフロッピーディスクを作成する
  2. 1.で作成したフロッピーディスクから起動してユーティリティを実行する
  3. ユーティリティ上で転送モードの上限を変更する

というものだ。

ユーティリティ起動ディスクを作成する

 転送モードの上限を変更するようなハードディスク用ユーティリティは、デバイス・ドライバやBIOSを介さずにハードディスクへ直接アクセスすることがあるため、Windowsから起動できないものがほとんどだ。たいていは、MS-DOSでPCを起動してからユーティリティを実行する必要がある。ここで紹介するIBMの転送モード変更ユーティリティ「IBM Feature Tool Ver.1.10」の場合、DOSの起動イメージを含んだ状態で配布されており、ダウンロードした実行ファイルをWindows上から起動すれば、ユーティリティを自動実行するDOS起動ディスクを容易に作成できる(もちろん、空の2HDフロッピーディスク×1枚が必要になる)。

IBM Feature Toolの起動ディスク作成画面
ダウンロードした実行ファイル(ここではibmftool-install.exe)をWindows上で実行すると、起動ディスクを作成するためのウィザードが始まる。途中で言語とキーボードを選ぶ画面が表示されるので、それぞれ「Japan」を選んでウィザードを進める。

 なお、この起動ディスクは、対象となるハードディスクを搭載したPCでなくても、作成することが可能だ。

起動ディスクからのブートとユーティリティによる設定変更

 起動ディスクが作成できたら、対象のハードディスクを搭載したPCに起動ディスクをセットして起動する。正常にDOSが起動すればユーティリティも自動実行され、ライセンス確認の後に、以下のメイン・メニュー画面が表示されるはずだ。


IBM Feature Toolのメイン・メニュー
表示自体はテキスト・ベースだが、Windowsに似たGUIを採用している。Microsoftマウス互換のPS/2マウスが接続されていれば、キーボードだけではなくマウスでも操作できる。キーボードでメニュー間を移動するには、TABキーや矢印キーを操作する。
  プルダウン・メニュー
Altキーを押しながらD、F、Hを押すと、それぞれ[Drive]、[Features]、[Help]の各メニューが開く。転送モードの上限を変更するなどの各種設定は[Features]メニューから選択する。
  検出されたドライブ一覧
このユーティリティが検出したIDEデバイスの一覧が表示される。各種設定を変更する前に、まずこの欄で、対象のドライブを選択しなければならない。この画面では、濃い緑色で反転表示されている「IBM-DTLA-307030」が選択されている。
  選択されたドライブの情報
で選択しているドライブの型番やシリアル番号、容量など主要な情報のほか、ドライブ上のキャッシュ・メモリ容量やファームウェアのリビジョンも表示される。転送モードの上限も、一番下に表示されているのが見える。

 対象のハードディスクDTLA-307030は、上記画面のとおり、プライマリIDEポートのスレーブとして接続されているので、まずは、このドライブを選択する。その後、転送モードの上限を変更するには、下記画面のように[Features]−[Change Ultra DMA mode]を選ぶ。

[Features]メニューの一覧
このユーティリティで設定変更できるのは、この[Features]メニューにあるとおりだ。Ultra DMAモードの上限を変更できるほか、音響ノイズを低減したり(Change Acoustic Level)、「見かけ上の」全容量を制限したり(Change Capacity)する設定も変更できる(ただし、こうした機能に対応するハードディスクでのみ設定変更は可能だ)。

 すると、以下のように設定画面が現れる。ここではUltra DMAモード5からUltra DMAモード2に変更している。

転送モードの上限を変更している画面
矢印キーの上下(↓↑)で、設定したいモードを選ぶ。Ultra DMAの利用そのものを禁止してしまうことも可能だ。
  選択した転送モードの上限
ここではUltra DMAモード2、つまりUltra ATA/33の上限と同じモードを選んでいる。
  デフォルトはUltra DMAモード5
ここに「Default value」とあることから分かるように、本来このハードディスクはUltra DMAモード5、つまりUltra ATA/100対応である。

 上記画面でOKボタンを押すと、PCの電源をいったん切らないと設定変更が反映されない、というメッセージが表示される。ユーティリティを終了したら、ソフトウェア・リセット(Ctrl+Alt+Del)ではなく、いったんPCの電源をオフにしよう。

 以上で、設定作業は完了だ。PCを起動したら、OS起動直前に画面に表示されるステータス画面で、ハードディスクの転送モードが変わっていることを確認しよう(詳細は「PC TIPS:BIOSが認識したハードウェアの情報を得るには」参照)。また、OSレベルで転送モードの変化を確認することも忘れないようにしたい(前出の[プライマリIDEチャネルのプロパティ]ダイアログ)。記事の終わり

  関連記事(PC Insider内) 
ディスク環境まるごとアップグレード
PCのBIOSをアップデートする方法は?
IDEコントローラの状態をチェックするには
IDEインターフェイスのバスマスタDMA転送モードを有効にするには(Windows 9x編)
IDEインターフェイスのバスマスタDMA転送モードを有効にするには(Windows NT 4.0編)
BIOSが認識したハードウェアの情報を得るには
最新ディスク関連用語集

  関連リンク 
Windows 2000のUltra DMAモード5対応に関するKnowledge Base(Q260233)
Windows 2000のUltra DMAモード5対応に関するKnowledge Base(Q269555)

   
 

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  [PC TIPS]IDEハードディスクの転送モードにかかわるトラブルを解決するには?(1)
[PC TIPS]IDEハードディスクの転送モードにかかわるトラブルを解決するには?(2)

「PC TIPS」


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