プロダクト・レビュー

ハードディスクに簡単バックアップ「StandbyDisk 2000 Pro」

澤谷琢磨
2001/03/01

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StandbyDisk 2000 Proのパッケージ
StandbyDisk 2000 Proは、CD-ROM 1枚と日本語マニュアルによって構成されている。ソフトウェア・ソリューションのため、内容は非常にシンプルだ。

 

 

 

 

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DPSRディスクの内容
Windowsエクスプローラから、バックアップ先のDPSRディスクを開くと、元のハードディスク上のファイルとの整合性情報が表示される。StandbyDisk 2000の設定メニューは、この状態でメニューバーの[ツール]をクリックすると表示される。

 

 



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拡張されたツールメニュー
これは、上の画面で[ツール]メニューをクリックしたところ。ここからStandbyDiskに関するすべての設定が行える。
差分および完全バックアップの手動実行メニュー
各種設定ウィザードの実行メニュー

 

 

 

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設定ウィザード
エクスプローラのツールメニューに登録される設定ウィザードは、インストール中に起動されるものと同じプログラムだ。画面はバックアップ対象とするパーティションの選択を行っているところ。

 

 

 

 

スケジュール設定ウィザード
画面は、StandbyDiskのスケジュール設定ウィザード中で、更新タスクの実行日時の選択を行っているところ。本文中に触れたとおり、StandbyDiskはパーティション単位でのバックアップ処理を行う。そのため、更新スケジュールの設定もパーティションごとに行える。

 

 

 

 

 

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DPSR設定後の[ディスクの管理]
DPSRディスクの中身を[コンピュータの管理]−[記憶域]−[ディスクの管理]から確認すると、ドライブ・レターのないパーティションが作成されていることが分かる。ここでドライブ・レターを割り当ててしまうと、このドライブはDPSRとしての機能を失ってしまうので注意したい。管理者権限をもつユーザーが複数いる場合は、このような事故を防ぐため、StandbyDiskを導入したことを広く周知する必要があるだろう。

 

 

 

 

 

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DPSRディスクから起動させるためのBIOSセットアップの設定画面
DPSRディスクから起動するには、このようにPCのBIOSセットアップから起動デバイスを変更する必要がある。画面はAward BIOSの[Standard CMOS Features]メニューを開いた状態。
ここでは、プライマリIDEのマスタ・ドライブを選択して、None(無効)に設定している。この状態で再起動すると、セカンダリIDEのマスタに接続したDPSRディスクから起動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 IDEハードディスクの高いコスト・パフォーマンスを背景にIDE RAIDが流行の兆しを示していることは、「動向解説:最新IDE RAID事情」や「プロダクト・レビュー:安価で話題のIDE RAIDコントローラ・カード『FastTrak100』」で解説した。ハードディスクの容量が向上する一方で、その容量を安価なリムーバブル・メディアにバックアップすることが難しくなくなってきているのが現状だ。そこで、安価になってきたハードディスクにデータをバックアップしたり、RAIDを構築したりする例が増えてきている。特にWindows 2000 ProfessionalやWindows 98/Meでは、ミラーリング(RAID 1)機能を標準機能として持っていないため、データ保護が必要な場合はIDE RAIDカードを使うなどの方法が必要になる(Windows 2000 Serverでは標準で対応している)。

 今回紹介するネットジャパンのStandbyDisk 2000 Pro(以下StandbyDisk)は、Windows 2000 ProfessionalでRAID 1とは異なる方法でフォールト・トレランス性を実現するユーティリティ・ソフトウェアだ(開発元はDuoCorで、同社の製品名は「「XactCopy」)。ここでは、StandbyDiskの実現する保護機能の特徴などについて紹介する。

製品名 対応OS 価格
StandbyDisk 2000 Pro Windows 2000 Professional 1万5000円
StandbyDisk Ver.3.0 Windows NT Workstation 1万5000円
StandbyDisk Ver.3.1 Windows NT Server 6万5000円
StandbyDisk Ver.2.5 Windows 95/98/Me 7000円
StandbyDiskのラインアップと価格
価格はすべて2001年2月現在のもの。プラットフォームごとにパッケージが異なるので購入時には注意が必要。

 このうち今回評価したのは、Windows 2000 Professional専用であるStandbyDisk 2000 Proである。

StandbyDiskの機能と特徴

 StandbyDiskの機能を簡単に説明すると、1台のハードディスクの内容を、定期的にもう1台のハードディスクへコピーすることで、2台のハードディスクの内容を同一に保つというものだ(そのため、ディスクは最低2台必要になる)。ソフトウェアRAID 1とは異なり、StandbyDiskはハードディスクを使ったバックアップ・ユーティリティであり、あくまで定期的にデータをコピーすることで同一の内容を保つようになっている。万一、1台のディスクに障害が発生した場合でも、もう一方のディスクによって代替することにより、データを保護するというわけだ。またStandbyDiskでは、起動パーティションを保護対象にできるため、起動パーティションを含むハードディスクが故障しても、バックアップ先のハードディスクから再起動が可能だ。

 StandbyDiskは、すべてWindows 2000上のプログラムで構成されているため、管理作業にDOS環境などを必要としない。また管理などは、Windowsエクスプローラに統合された設定ツールから行う。データのコピーなどのプロセスは、Windows 2000のサービスとしてバックグラウンドで動作する。詳細は不明だが、開発元の発表では、同期処理はセクタ単位で行っているとのことだ。

 RAID 1では、ミラーリングの名前が示すとおり、2台のハードディスクの内容は常に一致している。それに対してStandbyDiskでは、元のハードディスクとバックアップ用ハードディスクの役割が明確に分けられている。StandbyDiskの用語では、バックアップ用ハードディスクはDPSR(Data Protection/System Recovery)ドライブと呼ばれる。このDPSRディスクの内容は、手動もしくは自動実行でバックアップが実行された時点で、初めてバックアップ元ハードディスクの完全なコピーとなる。

 すなわちStandbyDiskのDPSRディスクは、バックアップが実行される前は、それ以前にバックアップを行った状態になっているわけだ。そのため、ハードディスク障害が発生した場合、直前のバックアップ操作以後に追加/変更されたファイルを失う可能性がある。これはRAID 1と比較して、データ保護の観点からはマイナスの評価となるだろう。しかし視点を変えると、DPSRディスクはWindows 2000が正常動作していた時点でのスナップ・ショットを記録、保存するためのシステムであるともいえる。OSやアプリケーションが起動しないといったソフトウェア的な障害が発生した場合、RAID 1では2台のディスクがともに障害を抱える可能性を持つが、StandbyDiskではDPSRディスク側から起動することで、迅速に復旧作業を行える可能性が高い。例えば、ウイルスに感染したような場合だ。RAID 1では2台のディスクが同時に感染してしまうことになるが、StandbyDiskならばバックアップ操作を行わなければ、DPSRディスク側はウイルスに感染されない。このように、StandbyDiskは主にソフトウェアの障害に対して威力を発揮する。

パーティション単位でバックアップを行う

 ハードウェアRAID 1がハードディスク単位でミラーリングを行うのに対し、StandbyDiskはパーティション単位でバックアップを行う。例えば30Gbytesのハードディスクを15GbytesごとにCドライブとDドライブの2つのパーティションに分割している場合、一方のパーティションだけを保護するのであれば、DPSRディスクの容量は15Gbytesで済む。容量の少ない古いディスクをDPSRディスクとすることもできるわけだ。

 StandbyDiskでは、DPSRディスクの容量が許す限り、複数のパーティションをバックアップ対象とすることができるが、複数台のハードディスクから1台のDPSRディスクに対してバックアップすることはできない。StandbyDiskは、1台のDPSRディスクに対し、1台のバックアップ元ハードディスクしか設定できないためだ。また、ユーザーがDPSRに指定したドライブにパーティションを作ることは禁止されているため、DPSRディスクにバックアップ対象のパーティションより容量の多いハードディスクを用意しても、余った領域の再利用はできない。このように、StandbyDiskにはドライブ構成の制限がいくつか存在するので注意したい。

StandbyDisk 2000を試す

 StandbyDisk 2000のインストールと設定はいたって簡単だった。むしろ事前に確認しなければならない項目のほうが多いため、その点を重点的に解説する。参考までに、編集部でテストに用いたPCの構成を下表に記す。

ハードディスク

15Gbytes Ultra DMA/66ハードディスク
×2台(IBM DPTA-351500)
プロセッサ Pentium III-866MHz
メイン・メモリ PC133 SDRAM 256Mbytes
マザーボード AOpen AX3S Pro(BIOSバージョン R1.14)
チップセット Intel 815Eチップセット
グラフィックス クリエイティブメディア
3D Blaster GeForce2 GTS
評価を行ったPCの構成

インストール前にはドライブ構成を確認する

 StandbyDiskは、IDEハードディスクに限らず、SCSIハードディスクでも利用できる。しかし、ハードディスクとPCとの接続インターフェイスは、IDEあるいはSCSIいずれかで揃えなければならない。そのほかにもStandbyDiskには、Windows 9xとWindows 2000 Professionalのデュアルブート構成をサポートしない、Windows 2000のダイナミック・ディスク機能によって作成したダイナミック・ボリュームを保護対象にすることはできない、といった制限が存在する。

 ところでStandbyDiskとベンダ独自のIDEドライバとの併用に心配を感じるかもしれないが、StandbyDiskはWindows 2000のサービスとして実行されるため、デバイス・ドライバとの組み合わせは問わない。今回は、2001年2月時点での最新版のIntel Ultra ATA Storage Driver(バージョン6.10 Beta)をインストールした状態でもテストを行ったが、DPSRディスクへのバックアップ、DPSRディスクからの起動ともに成功した。

IDEではディスクの装着に手間取るかも

 StandbyDisk 2000のマニュアルでは、IDEハードディスクを用いる場合、ソース・ドライブはプライマリIDEインターフェイスのマスタに、DPSRディスクはセカンダリIDEインターフェイスのマスタに設定するように記されている*1。同時に、セカンダリIDEのマスタに接続されているCD-ROMドライブは、セカンダリIDEのスレーブとして接続することを求めている。

 約46cmと規定されているIDEのケーブル長だが、マスタ・デバイス用コネクタとスレーブ・デバイス用コネクタ間は約15cmである。そのため、スレーブとして接続したデバイスからマザーボード上のコネクタまでのケーブル長は、約31cmしか残らない。今回はミニタワー型ケースのPCで実験したのだが、セカンダリIDEインターフェイスのスレーブとしたCD-ROMドライブを取り付けた5.25インチ・ベイから、マザーボード上のセカンダリIDEコネクタまでの距離が30cmを越えていたため、StandbyDiskが推奨する接続が行えなかった。StandbyDiskでIDEハードディスクを用いる場合は、推奨設定通りケーブルを取り回せるか、あらかじめ確認しておいた方がよい。

*1 実際には、DPSRディスクをプライマリIDEあるいはセカンダリIDEのスレーブに接続しても、StandbyDiskによるバックアップもDPSRディスクからの起動もともに成功した。しかし、マスタ・ドライブの存在しない状態でのスレーブ・ドライブからの起動は、初期のIDEではサポートされていなかったこともあり、PCの構成によっては、何らかのトラブルの原因になる可能性は無視できない。DPSRディスクをどうしてもスレーブに接続しなければならない場合は、障害発生時にはマスタとして物理的に接続し直すといった運用上の工夫が必要となるだろう。なお、DPSRディスクのスレーブとしての接続は、メーカーおよび編集部の保証するところではない。

DPSRに設定するディスクからの
パーティション消去

 DPSRとするハードディスクに存在するパーティションは、あらかじめ消去しておく必要がある。最近ではまれだが、新品のハードディスクでも、検査目的でパーティションを作成している場合があるので、1度はチェックするようにしたい。Windows 2000ではコントロール・パネルの[管理ツール]にある[コンピュータの管理]というユーティリティにて、[記憶域]−[ディスクの管理]から、パーティションの確認と消去を行える。

 StandbyDisk自体のインストールは、一般のWindowsアプリケーション同様、インストール・ウィザードの指示どおりに進めていくことで、あっけなく終了する。DPSRディスクの作成ツールもウィザード形式を採用しているため、まず間違えることはないだろう。編集部のテスト環境では、Windows 2000 Professionalのみインストールした状態で、6分40秒ほどでDPSRディスクを作成できた(この時点でDPSRディスクにバックアップ元ディスクの内容がコピーされる)。なお、DPSRディスクへのバックアップ時にユーザーがファイルにアクセスすることは禁じられている。実際にStandbyDiskによるバックアップを実行中にWindowsエクスプローラでファイルのコピーを行ったところ、マニュアルの記述どおり、エクスプローラがアプリケーション・エラーを引き起こした。なぜこのような状態になるのか不明だが、この点はぜひとも改善していただきたい。

運用と管理はエクスプローラで行う

 StandbyDiskの管理プログラムは、Windowsエクスプローラに統合されている。DPSRディスクの内容の確認、バックアップの指示はすべてここから実行できる。DPSRディスクへのバックアップには、更新された部分のみバックアップを行う「差分バックアップ」と、DPSRディスクの内容を完全に元ドライブと一致させる「完全バックアップ」の2種類が用意されている。差分バックアップは、更新された部分のみバックアップするため、高速に処理が行われるのが特徴だ。これらのバックアップ作業はスケジューリングして自動実行可能だ。前述のように、DPSRディスクへのバックアップ時には、ユーザーがファイル操作を行うことを禁止しているので、夜間などに設定しておくとよいだろう。

復旧作業のやり方

 バックアップ元のハードディスクに障害が発生して正常に起動できなくなった場合、DPSRディスクを用いて復旧するには、何らかの方法でDPSRディスクから起動するように設定しなければならない。ことがハードウェア障害ならば故障したドライブを物理的に取り外してしまってもいいのだが、その時間をとれない場合や、ソフトウェア的な障害にすぎない場合は、PCのBIOS設定メニューから起動ドライブを切り替えることになる。切り替え方はBIOSベンダによって異なるため、障害が発生する前にあらかじめ確認とテストを行っておいた方がよい。もし、古いシステムなどでプライマリIDEインターフェイスのマスタからしか起動できない場合は、IDEケーブルをつなぎ直して、DPSRディスクがプライマリIDEインターフェイスのマスタになるようにすればよい。

 その後、故障したハードディスクを取り外し、新しいものに交換した後、そのディスクをDPSRディスクとすれば、StandbyDiskによるバックアップは継続できる。

手軽にデータ保護が行えるStandbyDisk

 StandbyDiskはハードディスクの故障とソフトウェア的な障害の両方に対応できる点で、ほかのバックアップ手段に比べ優れている。ただし、このメリットを生かすも殺すも、バックアップ処理を定期的に実行するかどうかにかかっている。DPSRディスク側の内容があまりに古いと、障害時にDPSRディスクから直ちに再起動できるというStandbyDiskのメリットが、作業継続性の確保に貢献しないからだ。DPSRディスクが定期的に更新されて、初めてStandbyDiskの機能が生きる。また、ハードディスクへのバックアップは、地震などによるPC全体の破壊からデータを守ることができない点にも注意したい。

 前述のとおり、DPSRディスクにバックアップ処理中はファイル操作を行うことはできない。そのため、メンテナンス用にPCを使わない時間帯を確保しなければならない。PCの稼働時間が一定している企業ユーザーならば、昼休みや夜間にバックアップ処理をスケジューリングすればよいだろう。個人ユーザーならば、気がついたときに手動で行うようにすればよい。差分バックアップならば、よほど大量のファイルの更新がない限り、ほんの数分でバックアップが完了するはずだ。手動の場合、気をつけなければならないのは、バックアップを忘れないようにすることだ。

 StandbyDiskは、これだけでデータの保護を完全に実現するものではないが、例えばハードウェアRAID 1やテープへのバックアップと組み合わせることで、より信頼性の高いシステムを構築することが可能になる。バックアップ・メディアとしてハードディスクを利用しているため、障害が発生したときに、簡単にバックアップ・ディスクから起動させて作業を継続できるのが最大のメリットだ。

 クライアントPCのデータ保護の一手段として、検討してみる価値はあるだろう。ハードディスクを増設しなければならない点が面倒だが、逆にそれ以外の設定は容易だ。バックアップは障害が発生し、データが失われてから大切さを感じるもの。そうした悲劇を迎えないために、StandbyDiskなどのバックアップ・ユーティリティを導入しておこう。 記事の終わり

 
メーカー名
ネットジャパン
製品名
StandbyDisk 2000 Pro
価格
1万5000円
製品URL
対応システム
Intel 486DX以上のプロセッサを搭載するIBM PC互換機および、日本電気 PC98-NX
対応OS
Windows 2000 Professional
DPSRディスク
バックアップ元のパーティションと同等またはそれ以上の容量
必要なメモリ容量
32Mbytes以上
ハードディスクの空き容量
15Mbytes以上

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関連リンク

StandbyDiskの製品情報ページ

XactCopyの製品情報ページ

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