特集
ブロードバンド・ルータ徹底攻略ガイド

1.LAN側ノードのIPアドレス管理

デジタルアドバンテージ 島田広道
2001/06/28

 ここでいうLAN側ノードのIPアドレス管理とは、LANに接続されているPCなどのネットワーク・ノードに適切なIPアドレスを割り当てることだ。LAN側のノードにIPアドレスを割り当てるのは、DHCPによって自動化されている。ブロードバンド・ルータは、市販製品のほぼすべてがDHCPサーバの機能を持っている(下図)。

ブロードバンド・ルータによるLAN側ノードのIPアドレス管理の例
このようにブロードバンド・ルータは、LAN側に対するDHCPサーバとしてIPアドレスなどの情報を各ノードに配布できる。また、一番右のサーバのように、ブロードバンド・ルータに依存せず手動でIPアドレスを設定することも可能だ。IPアドレスの静的な割り当て機能を持つブロードバンド・ルータなら、真ん中のサーバのように、予約されたIPアドレスを静的(固定的)に配布できる。

 もちろんBLR-TX4もDHCPサーバの機能を備えている。以下の画面は、簡易設定メニューにおけるDHCPサーバ機能の設定項目だ。

BLR-TX4のDHCPサーバ機能を設定する画面(簡易設定)
これは、BLR-TX4が持つ設定メニューのうち、設定項目の数を抑えて設定を容易にしたもの。これとは別に、細かい設定が可能なメニューもある(後述)。
  DHCPサーバの有効/無効
 基本的に1つのネットワーク上に複数のDHCPサーバが存在してはいけないので、必要に応じてDHCPサーバを無効にできるよう、こうした設定メニューが用意されている。
  配布するIPアドレスの範囲
 単一のアドレス範囲しか指定できない(別メニューに詳細設定がある)。しかしネットワーク規模がよほど大きくならない限りこれでも十分である。

 上記の設定項目は最低限のもので、どのブロードバンド・ルータも装備している。このレベルで製品ごとに異なるのは、配布可能なIPアドレス数、つまりIPアドレスを自動割り当て可能なノード(ここでは単純に割り当て可能なクライアントPCの数と考えてよい)の最大数だ。少ない製品だと30台程度、多いものだと200台以上も割り当て可能な製品がある。家庭やSOHOなら30台もあれば十分だろうが、PCの台数が多い環境なら注意すべき項目ではある。

IPアドレスの静的な割り当て機能

 製品によっては、さらに細かくDHCPサーバを制御できる。1つは、「IPアドレスの静的な割り当て」という機能で、ある決まったIPアドレスを必ず特定のノードに割り当てる機能だ。通常、DHCPサーバにより各ノードに割り当てられるIPアドレスは、一定期間ごとに更新され、更新の前後で同じIPアドレスが割り当てられる保証はない。つまり、同じIPアドレスが割り当てられることもあれば、まったく異なるIPアドレスになることもあるわけだ(これをIPアドレスの動的な割り当てと呼ぶことがある)。通常のクライアントPCではこうした動的な割り当てでもよいが、例えば一部のネットワーク・アプリケーションを利用するPCやインターネット公開サーバは、常に同じIPアドレスにする必要がある。

 もしブロードバンド・ルータのDHCPサーバにIPアドレスの静的な割り当て機能があれば、クライアントPCと同様、固定IPアドレスを必要とするサーバなどもIPアドレスを自動設定にした状態で運用できる。こうすれば、ブロードバンド・ルータ側で一元的にIPアドレスを管理しながら、固定IPアドレスのノードを手動設定するのと同様の効果を得られるようになる*1。また後述するDMZ(非武装地帯)に配置するPCでも、IPアドレスを固定にする必要があるため、この機能が役立つ。そのほか管理が多少面倒になるが、クライアントPCのIPアドレスをすべて静的に割り当てると、トラブル時にIPアドレスから該当するPCを見つけやすいというメリットもある。

*1 ただし、何らかのトラブルでブロードバンド・ルータが停止すると、LAN側ノードのIPアドレスが管理不能になってしまう、というデメリットもある。
 
BLR-TX4の静的なIPアドレス設定画面(詳細設定)
BLR-TX4もIPアドレスの静的な割り当てをサポートしている。
  静的IPアドレス
 ノードに割り当てるIPアドレスを入力する。
  静的IPアドレスを割り当てるノードのMACアドレス
 常に同じ静的IPアドレスを割り当てるノードのMACアドレスをここに登録する。BLR-TX4では、コロン(「:」)で区切った12桁の16進数で入力する。製品によっては区切り文字が異なることもあるので注意。
  IPアドレスの割り当て状況
 DHCPで各ノードに割り当てられている全IPアドレスの一覧が表示される。BLR-TX4では、ここで静的IPアドレスの割り当てを解除できる。

 IPアドレスの静的割り当て機能は、手間をいとわなければノード側で手動設定すれば代用できるため、この機能を装備したブロードバンド・ルータはそれほど多くはない。しかし、この機能がないとIPアドレスをブロードバンド・ルータで一元管理できないため、自動配布されるIPアドレスの範囲内に間違って手動設定ノードを割り当ててしまう危険性がある。当然、単一のIPアドレスを複数のノードに割り当てることになるので、通信不能など重大なトラブルが引き起こされてしまう。IPアドレスの静的な割り当て機能があれば、こうしたミスは防ぐことができる。

 以上の理由から、前述の一部のネットワーク・ゲームや前述のインターネット公開サーバなど固定IPアドレスを必要とする用途があるなら、ブロードバンド・ルータにとってIPアドレスの静的割り当て機能は必須といってもよいだろう。

DHCPで配布される情報の手動変更

 もう1つのDHCPサーバの機能としては、「IPアドレスと一緒に配布される情報の手動変更」がある。これは、IPアドレスとともに配布される以下の基本パラメータで、これらをデフォルト値から変更する機能だ。

  • DNSサーバのIPアドレス
  • デフォルト・ゲートウェイのIPアドレス
  • サブネット・マスク

 通常は、ブロードバンド・ルータのLAN側インターフェイスに設定されたIPアドレスとサブネット・マスク、およびISPから得たDNSサーバのIPアドレスから、これらのパラメータのデフォルト値が自動的に算出・設定される。しかし、LAN側にDNSサーバや別のルータが存在する場合には、デフォルト値のままでは都合が悪いため、手動で別の値を設定する必要がある。

 DNSサーバのIPアドレスは、WAN側IPアドレスが固定割り当てだと、管理者が手動で設定しなければならない。そのため、ほとんどの製品がDNSサーバの手動設定をサポートしている。一方、デフォルト・ゲートウェイやサブネット・マスクまで別個に手動設定できる製品は少ないが、よほど複雑なサブネット構成でない限り、これらを手動変更する必然性はないことも確かだ。

BLR-TX4のDHCPサーバ詳細設定メニュー
このようにBLR-TX4のDHCPサーバに関する設定項目は多い。廉価なブロードバンド・ルータの中では、かなり詳細に設定できる方だ。
  DHCPサーバの有効/無効
 LAN側で別のDHCPサーバを運用するなら、ここで無効に設定する必要がある。
  配布されるIPアドレスの割り当て範囲
 一部のIPアドレス範囲を除外したい場合は、この「削除IPアドレス」に指定する。手動でIPアドレスを設定したノードの分を除外するのに便利だ。
  リース期間
 IPアドレスを割り当てられたノードが、そのIPアドレスを保持し続けられる期間のこと。多数のノートPCが短時間で頻繁にネットワークとの接続/切断を繰り返すような環境では、IPアドレスの浪費を防ぐためにリース期間を短くすることがある。クライアントPCの台数が少ない家庭やSOHOでは、それほど必要性の高い設定項目ではない。
  配布されるデフォルト・ゲートウェイのIPアドレス
 このようにBLR-TX4では手動設定も可能だが、ブロードバンド・ルータ自身のIPアドレスで決め打ちになっている製品もある。LAN内に別のルータが存在しない限り、ブロードバンド・ルータのIPアドレスでかまわないはずだ。
  配布されるDNSサーバのIPアドレス
 DNSについては、プライマリDNSサーバとセカンダリDNSサーバを手動設定できる製品が多い。LAN側にDNSサーバがある環境では、ここで明示的に設定する必要がある。画面でBLR-TX4自身のIPアドレスが配布される設定になっているのは、BLR-TX4がクライアントPCからのDNS要求を実際のDNSサーバに中継する機能(DNSプロキシなどと呼ばれる。詳細は後述)を持っているからだ。
  配布されるドメイン名
 これもDHCPサーバから配布されるパラメータの1つ。これもデフォルトから変更する必要はほとんどないようだ。

 DNSサーバの手動設定はあった方が無難だが、そのほかの詳細な設定は、家庭/SOHOのLAN環境のように小規模で単純なネットワーク構成なら必要となる機会は少ないだろう。

DHCPサーバ/クライアントの「相性」問題
 
Windows以外のプラットフォームを利用しているなら、ブロードバンド・ルータのDHCPサーバ機能で注意しなければならないのは、正しくIPアドレスを配布できるかどうかという点だ。MacintoshやLinuxなど、非WindowsクライアントをLANに接続する場合、DHCPサーバ/クライアント両者の微妙な仕様の食い違いにより、IPアドレスの自動割り当てがうまく働かない、という障害が過去に報告されている。ブロードバンド・ルータを含む廉価なネットワーク製品は、全般的に非Windowsクライアントでの動作検証が手薄になる傾向にあるので注意したい。購入前には、メーカーのWebサイトに掲載されているFAQや、ファームウェアのアップデート履歴を調べるなどして、対応状況を確認しよう。

 
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 INDEX
  [特集]ブロードバンド・ルータ徹底攻略ガイド
  1.LAN側ノードのIPアドレス管理
    2.WAN側IPアドレスの管理
    3.IPアドレス/ポート変換機能−IPマスカレード/NAT−
    4.IPアドレス/ポート変換機能−ポート・フォワーディングとDMZ−
    5.セキュリティ対策の機能
    6.そのほかの機能について
 
「PC Insiderの特集」


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