特集
ノートPCのディスク環境まるごとアップグレード

澤谷琢磨
2001/07/14

 各種統計データによれば、日本での全PCの出荷台数におけるノートPCの比率は50%を超えているという。全世界平均の20%程度からすると非常に高い値だ。狭い日本のオフィスを象徴する結果だろう。

 しかし、ノートPCはその省スペースさ故に、同世代のデスクトップPCに比べて、プロセッサの速度や搭載可能メモリ容量、ハードディスク容量といった仕様が劣ってしまう。また拡張性も高くないので、アップグレードによる性能や機能の向上も限られる。その結果、ノートPCの製品寿命はデスクトップPCより短くなりがちである。しかも購入価格(初期導入コスト)はノートPCの方が高めだ。何とかして長く使い続けたい、というのは全ノートPCユーザーの願いではないだろうか。

 製品寿命という点で最近特に深刻なのは、ハードディスクの容量不足だ。音声や画像など個人が扱うデータの種類や容量は増える一方なのに対して、2〜3年前のノートPCのハードディスク容量は1Gbytes〜6Gbytes程度と心許ない。かといってハードディスクをもう1台増設すると外付けになるため、せっかくの省スペース性や可搬性というノートPCのメリットが薄れてしまう。もし内蔵ハードディスクを大容量のものに交換できれば、ノートPCのメリットを維持しつつ、より長く使い続けられるようになるはずだ。

 ノートPCのハードディスクを交換するための環境も整ってきている。例えばノートPC用ハードディスクは、デスクトップPC用と同様に大容量化と低コスト化が進んでおり、10G〜30Gbytesの製品が1万円台〜3万円前後で市販されている。また製品の種類も豊富で、入手も容易だ。

 そこで本稿では、ノートPCを対象に大容量ハードディスクへ移行する方法を紹介する。ただハードディスクを交換するのではなく、デスクトップPCを対象とした「特集:ディスク環境まるごとアップグレード」と同様に、面倒なOSの再インストールなしで、元のハードディスクで構築したソフトウェア環境をそのまま新しい大容量ハードディスクに引き継ぐ方法を試してみる。また、新しいハードディスクの選び方やデータ移行時のハードディスクの接続方法など、ノートPC特有の問題についても、対処方法を紹介しておこう。

 本稿で対象としているのは、容量が数Gbytesのハードディスクを内蔵しており、PCカード・スロットを1つ以上搭載するノートPC全般である。ミニノートからオールインワン・タイプまで、多くのノートPCが本稿のアップグレード方法を実行できるはずだ。OSはWindows 2000 Professionalを対象としているが、Windows 9x/Me環境でも参考になるだろう。また、実際の作業手順は「特集:ディスク環境まるごとアップグレード」で紹介したものを踏襲しており、ハードディスクのコピーも同じユーティリティ(ネットジャパンの「DriveCopy 3.0」)を使用している。この類のユーティリティに慣れていない場合は、先にこの記事に目を通していただいた方が、本稿も読み進めやすいと思う。

 文字通り「桁違い」のハードディスク容量を手に入れて、使い慣れたノートPCの延命を図ってみよう。

コピー方法は1種類ではない

 最初に、ディスク環境のアップグレード、つまりハードディスクの内容をそのまま新しいハードディスクへ移行(コピー)する方法について検討してみよう。

2台のハードディスクを内蔵できるノートPCの例
これは日本IBM製ThinkPad 600Eで、オプションのハードディスク・アダプタにより2台目のハードディスクをケース内に収納できる。インターフェイスはIDEなので、デスクトップPCと同じ手法でコピー可能だ。しかし、こうしたオプションが利用できるノートPCは非常に少ない。

 一般的にWindows 2000をインストールしたハードディスクの内容を、そのまま別のハードディスクにまるごと移行させる場合、単純なファイル・コピーだけでは不可能である。使用中のファイルはコピーできないし、コピーできないような特別な属性が付いたファイルなどもあるからだ。そこで「特集:ディスク環境まるごとアップグレード」では、デスクトップPCに新旧のハードディスク2台を同時に接続し、その内容をまるごとコピーする専用ユーティリティ(以下コピー・ユーティリティ)を利用することで、比較的容易に大容量ハードディスクへの移行を実現できた。

 しかし、ノートPCで同じ手法を採るには、ハードディスクの接続方法が問題になる。ノートPCの場合、一部の例外(右写真)を除けば、2台のハードディスクを同時に内蔵することはできず、一方を外付けにせざるを得ない。このため、本来は内蔵用のハードディスクを外付けにするハードウェアが必要になるほか、それをサポートするデバイス・ドライバも組み込まなければならない。こうしたノートPCの制限の詳細については後述するが、明らかにデスクトップPCより複雑な手順が要求される。

 そこで、ノートPCにおけるディスク環境のアップグレード方法をいくつか考えてみた。

  1. デスクトップPCにノートPCのハードディスクを取り付ける方法
  2. ネットワーク接続した別のPCにバックアップを作る方法
  3. PCカードでハードディスクを接続する方法

 どの方法も、必要な機材や作業手順などは大きく異なる。それぞれのメリットとデメリットを探ってみよう。

  関連記事(PC Insider内) 
ディスク環境まるごとアップグレード
 
  関連リンク 
DriveCopyの製品情報ページ
 
 

 INDEX
[特集]ノートPCのディスク環境まるごとアップグレード
    1.アップグレード方法を決める
    2.セットアップ前に確認すべきこと
    3.コピーに必要な機材をそろえる
    4.ハードディスクのセットアップ
    5.ハードディスク間コピーの準備と実行
           コラム:PCカードを認識できるDOS起動フロッピーの作り方
 
「PC Insiderの特集」



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