第2回 1枚のICカードでオフィスセキュリティを統合するSSFC


岡田 大助
@IT編集部
2006年6月16日
オフィス内でさまざまなICカードが利用され始めた。見た目が同じICカードなのに用途によって複数枚のICカードを使い分けるのは不便ではないか?(編集部)

 オフィススペースへの入退室を非接触ICカードで運用している企業が多くなった。ほかにもICカードのセキュリティ分野での利用は、PCのログイン管理やロッカー、書庫の開閉、プリンタ制御などに広がっている。

 また、個人情報保護法や日本版SOX法などの法律に対するコンプライアンスも重要視されている。内部統制の一環として、社員証をICカード化しID管理、情報の機密度によるアクセス管理などに使う企業は増加するものと思われる。

 このようにさまざまなセキュリティサービスでICカードが活用され始めているが、新たなソリューションを追加導入するたびに、ICカードの枚数が増えていき、結果としてユーザーの利便性を損なったりセキュリティレベルを低下させたりといった課題が懸念されている。

 このような課題の解決を目指しているのが、SSFC(Shared Security Formats Cooperation)仕様だ。FeliCaをベースに統一フォーマットを作成し、1枚のICカードでセキュアなオフィス環境の構築を目指している。

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 オフィス内の混在環境を1枚のICカードで統一

 SSFC仕様に準拠したオフィスシステム連携のイメージを紹介しよう。ユーザーは、オフィススペースへ入るゲートにおいて、ICカードを認証させる。既存のゲートソリューションと同様に社員IDや認証時刻などがロギングされるだけでなく、ここでICカード内に入室チェック記録を書き込んでカードをアクティブな状態にする(ゲートを出る時にはオフになる)。

 監視カメラと連携する場合には、ユーザーがゲートでICカード認証をしている画面上に社員IDやエリアコードなどがスーパーインポーズされる。時系列、あるいはID抽出で確認可能なため、証拠能力が高いという。

 共連れなどによって、ICカードのアクティベーションをせずに入室したユーザーは、オフィススペース内の機器の利用やPCなどを起動ができない。また、PCをオフィス外部に持ち出された場合でも、PC起動のためのICカードがアクティブになっていないため、不正利用を防止することが可能だ。

 SSFCが対象とする領域は、警備(ゲートシステムや監視カメラ、電子ロック)、ネットワークセキュリティ(PCセキュリティ、シングルサインオン、社内申請システム)、事務器(プリンタ、出退勤管理、タイムレコーダ、コピー、ファクシミリ)、什器(デスク、書庫、ロッカー、キャビネット)、決済(社員食堂、自動販売機)と多岐に渡る。

 SSFCの事務局長を務める大日本印刷の矢野義博氏(IPS事業部 ICカードビジネス開発本部アプリケーション開発部部長)は、「SSFCは、オフィス内の混在環境を、共通フォーマットを持つICカードで統一し、低コストで高いセキュリティの実現を目指しています」と語る。

SSFC事務局長の矢野氏(右)と主席研究員の半田富己男氏

 100社近いSSFCアライアンス参加企業

 SSFCアライアンスには約100社が参加して、4つのワークグループと1つのカスタマーパートナーに分かれて活動している。4つのワークグループとは、スペースセキュリティ(リーダーは日立製作所)、セキュリティファニチャー(アルファロッカーシステム)、プリンタ(コニカ・ミノルタ)、監視カメラ(タイテック)だ。一方、カスタマーパートナーとは、ユーザーの立場でSSFCに参加し、ビジネス展開に生かすシステムインテグレータなどで構成される(リーダーは日本総研)。

 特徴的なのはSSFCでは競合関係にあるベンダが一緒に活動している点だ。例えば、プリンタ分野では、コニカ・ミノルタのほかに富士ゼロックスやリコーも参加している。矢野義博氏は、「オフィス内で利用されている複合機が必ずしも1社だけという状況ではないので、競合ベンダであっても広く参加を呼びかけています。ハードウェアを持つベンダはほぼ出揃ったと思います」と説明する。本社と支社、あるいは部署を移動することで、オフィス機器が異なるベンダの製品になっても、同じICカードで同様のセキュリティサービスを受けられるというのは大きなメリットとなる。

 また、カスタマーパートナーには、ICカードと親和性の高いクレジットカード会社や不動産デベロッパー、設計事務所なども参加している。矢野氏は「現在は、福利厚生系の参加企業が増えています。また、不動産系にも積極的にアプローチをしています。オフィスビルの設計は3年前から始まるといわれていますから、数年後にはSSFC対応のオフィスビルが建設される可能性もあります」と語る。

 SSFCは2004年末から活動を始め、2005年2月に第1回の総会(参加22社)で立ち上がった。2006年2月には4つのワークグループごとのSSFC仕様が固まり、製品の開発が始まっている。矢野氏によれば、「SSFCに参加する企業は、1年以内に製品をリリースすることを約束して入ってきます。早いところは今年中に製品を投入してくるでしょう」とのことだ。

 
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Index
1枚のICカードでオフィスセキュリティを統合するSSFC
Page1
オフィス内の混在環境を1枚のICカードで統一
100社近いSSFCアライアンス参加企業
  Page2
SSFC仕様と既存仕様の違い
日本版SOX法に備えるSSFC


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