第2回 RFID利用シーンをイメージさせてこそ一人前


西村 泰洋
富士通株式会社
ユビキタスシステム事業本部
ビジネス推進統括部
ユビキタスビジネス推進部
担当課長
2007年3月5日
現在、急激に成長を続けているRFIDシステム構築。本連載はRFIDシステムエンジニアと名乗れるプロフェッショナルになるためのバイブルである(編集部)

 前回は、RFIDシステムのプロフェッショナルになるために不可欠なRFIDシステムの基礎トレーニングについて解説しました。今回は、業務分析・利用シーン想定についてのトレーニングを取り上げます。

 業務の中でRFIDシステムを利用していくという観点からいえば、業務分析・利用シーン想定についてのトレーニングとシステムの基礎トレーニングは両輪を成しています。筆者は、業務分析や利用シーンを想定するスキルが車の前輪で、RFIDシステムに関するスキルは後輪に当たると考えています。

 それは、RFIDシステムに関する技術的なスキルをいかに持っていたとしても、お客さまやユーザーと業務や運用に関する会話ができないとRFIDシステムの導入が進まないことによります。

 実際のRFIDシステムの導入・構築の現場では、誰かが現行業務を分析して、RFIDの利用シーンを考案想定しなければなりません。もちろん、RFIDシステムのプロフェッショナルを名乗るのであれば、それはできて当然ということになります。

 そのときに最初に必要なのは、

  • 現行業務はどういうものか
  • 現行業務のどこに課題(ボトルネック)があるのか
  • RFIDを活用して現行業務をどのように変えていくのか

など、現行業務を分析してRFIDを利用した新しい業務フローを考案するスキルです。そして、現行業務(システム)と新たな業務(システム)を比較して効果を想定することができなくてはなりません。RFIDを利用して新たにシステム化をするというケースもありますが、それはまだ少数派です。

 大規模システムの設計などでは、要件定義のために各種のフローチャートを作成します。しかし、チャートを作ることに追われてしまって、あるいはチャートが非常に細かく分かりにくくなってしまって、本質的な業務分析や業務改善を忘れてしまったというような経験をお持ちの読者もいらっしゃるのではと思います。

 ここでは原点に戻って、業務をより良いものに改善していこう、そのためには“誰もが理解できるレベルでの現行業務と新業務の可視化が必要”というところにポイントを置いて解説していきます。

 業務プロセスフロー図を使う

 まず、最もシンプルな業務分析手法の1つである業務プロセスフロー図を解説します。業務プロセスフロー図は、文字通り、現行業務プロセスと新業務プロセスを“絵”にして、比較できるようにします。

 ここでは、倉庫から店舗への出荷と店舗での入荷業務にRFIDシステムを利用する場合の業務プロセスフローについて考えてみましょう。

 業務プロセスフロー図の作成に当たって、ユーザーへのヒアリングが必要になります。現行業務のヒアリングの結果、以下のような情報が得られました。

  1. 倉庫では本社からの指示で店舗向けの出荷リストとピッキングリストを発行する
  2. ピッキングリストを基に倉庫内のラックなどからピッキングを行う
  3. 店舗(配送先)ごとに仕分けをする。商品を合計数量でピッキングするケースもあるため、店舗別の仕分けと検品を必ず行う
  4. 店舗ごとに検品をしてOKであればトラックに積み込む
  5. 店舗では本社から送信される入荷予定リストと商品を読み合わせしながら入荷検品をする
  6. 入荷検品が終了したら店舗のバックヤードに保管または店頭に陳列する

 これらの情報から現行業務でプロセスフロー図を作成すると以下のようになります。

現行の出荷業務プロセスフロー図
現行の入荷業務プロセスフロー図

 このように業務を絵にすることで関係者の間での理解も進みますし、誤解も避けることができます。この場合、現行業務分析として業務プロセスフロー図を利用していますが、利用シーンの想定として業務プロセスフロー図を利用することもできます。

 例えば、現行業務に対するRFIDシステムの利用シーンとして以下のようなものを考案したとします。

  • 配送先(店舗)ごとにRFIDタグを発行して、タグには「日付」「出荷指示番号」「商品コード」「数量」などを入力する
  • RFIDタグを読み取った後で、商品に貼付されているバーコードを読み取ることで、倉庫での出荷検品をスムーズにする
  • また、店舗側での受け取りに際しての口割れ・誤配を防ぎ、入荷検品をスムーズにする

 このように文章で書かれている場合、あるいは口頭で説明された場合、恐らくすぐ理解できる方と理解に時間がかかる方がいると思われます。これを避けるために、RFIDの利用シーンも以下のように業務プロセスフロー図にします。

RFIDを使った出荷業務プロセスフロー図
RFIDを使った入荷業務プロセスフロー図

 RFID利用を想定した業務プロセスフロー図は、できるだけ現行業務との差異が明確になるように切り口やステップを併せて作成します。なぜならば、現行業務とRFIDシステムを利用した新業務を比較してもらうことで、おのおのの違いが明確になるからです。

 ユーザーと認識を共有することが重要

 業務プロセスフロー図を作成することで、現行業務がどういうプロセスで行われているか、新業務との違いはというところを関係者で共有することができるようになります。RFIDシステムのプロフェッショナルとしては、これを自身で作成できるというだけでなく、ユーザーと一緒につくり上げていくという姿勢ならびに進め方が重要です。

 ユーザーと一緒につくり上げることでユーザーとの連帯感も生まれます。この連帯感は構築フェーズに入ってからは大きな助けとなります。サンプルでは、最もシンプルな形で作成していますが、実際にはもっと絵や説明の字が多く細かくなるケースもあります。

 
1/2

Index
RFID利用シーンをイメージさせてこそ一人前
Page1
業務プロセスフロー図を使う
ユーザーと認識を共有することが重要
  Page2
ライフサイクルモデルを使う
業務分析と利用シーン想定はRFIDプロフェッショナルの仕事


RFIDプロフェッショナル養成バイブル 連載インデックス


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