第1回 進むRFID標準化と実証実験


河西 謙治
株式会社NTTデータ
ビジネスイノベーション本部
ビジネス推進部
課長
2006年5月10日


 バーコードの課題を突破するRFIDの高機能化

 RFID普及の課題の1つとして、「バーコードと何が違うのか(バーコードでもできるのではないか)」という議論がある。確かに近接型のRFIDでリーダをかざして読むようなオペレーションでは、汚れに強いとかさまざまな形状に加工できるといった点以外での本質的な差別化は困難な部分がある。

 しかしながら、これをブレイクスルーするようなRFIDが生まれつつある。それが、

  • UHF帯による遠距離から複数同時読み取りの可能化
  • センサーやリライタブルシートの登場とハイブリッド化

といったRFIDの高機能化への取り組みである。

●Class1Generation2(C1G2/Gen2タグ)

 EPCglobalの項でも述べたようにGen2タグに高い期待が寄せられている。Gen2タグとは、EPCglobalにおけるUHF帯タグのClass1(パッシブ型リードオンリー)における第2世代の標準を意味し、以下の特徴を保有する。

  • Global regulatory compliance:世界共通のUHFパッシブタグインターフェイス
  • データの読み取り・書き込み精度の改善:読み書き速度の改善、Ghost read問題の改善
  • データ伝送範囲の長距離化:読み取り距離10メートル、書き込み距離8メートル
  • Dense-reader環境オペレーション対応(optional):設置アンテナからの電波障害(干渉)を防ぐための工夫
  • タグ情報のLock機能:入力データの不法な改ざんを防ぐためのロック機能を追加
  • Kill code:killパスワードによる、タグの無効化を導入
  • 低価格化:5セントタグ実現を目標

 EPCglobalは、Gen2タグをISO 18000-6 Type Cとして提案しており、この春にも成立する予定である。これにより業界団体規格から国際規格となり、さまざまな国際調達の要件を満たすこととなる。

 日本でも、2006年4月6日に日本初のGen2規格に準拠したICタグによる商用運用が始まっており、ユーザー側のUHF帯ICタグへの期待も非常に高まっている。

【関連リンク】
ICタグを活用して織物生地反物を効率管理〜国際規格準拠のUHF帯ICタグで国内初の運用開始〜
http://www.toppan.co.jp/news/newsrelease310.html

●響プロジェクト

 響プロジェクトは、RFIDの普及発展の1つの鍵である、低価格で高品質な電子タグの開発と市場への安定供給を目的としたプロジェクトであり、経済産業省の研究開発委託事業(2年間)として2004年半ばからスタートした。

 響プロジェクトには、日立製作所を中心にほか6社がコアチームとして参加している。現在、2次試作を終了し、フィールド評価として、

  • 経済産業省平成17年度電子タグ実証実験(8実験)
  • 農林水産省平成17年度ユビキタス食の安心安全システム開発事業(4実験)

といった多様な条件下にて評価を実施している。

 今後は、3次(最終)試作と評価を経て、夏ごろにプロジェクトを終了する予定になっている。その後は、製品化へ向けた取り組みが進むものと思われる。また、ISO 18000-6 Type C仕様(UHF帯のエアインターフェイス規格)との相互接続を実現することにより、世界的に共通使用が可能となることを目指している。

●多機能タグ

 RFIDに各種センサー(温度、圧力、振動など)を一体化することにより、より付加価値の高いRFIDソリューションが提供できる。例えば、単なる場所のトレーサビリティから、輸送途中の温度変化のトレーサビリティというコンセプトは以前から語られていた。

 昨今、センサー付きRFIDの商品化がメーカーから発表され、これらを使った実証実験も展開され始めている(弊社でも2006年3月に温度センサー付きRFIDの実証実験に参画している)。

【関連リンク】
温度センサ付RFIDタグを活用した「温度管理トレーサビリティスターターキット」の提供を開始
http://www.nec.co.jp/press/ja/0508/0201.html
溶液中の計測データをワイヤレス送信するRFIDとセンサを集積した半導体チップを開発
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2004/12/1206a.html
微弱電波規格のアクティブ型RFIDタグ「NIRE」タイプ2および「NIRE」を利用した位置検出開発キットの販売を開始
http://www.ntt-at.co.jp/news/2006/release20.html
蔵元こだわりの生酒を新鮮なまま消費者の手に〜温度センサ付無線ICタグと高精度温度管理輸配送システムを利用し、リアルタイムに温度管理を行う流通実験を実施〜
http://www.nttdata.co.jp/release/2006/030900.html

 一方、RFIDとリライタブルシートの一体化も検討されている。RFIDに入力されたデータをシート上にも表示できるので、データとシート上の表示内容とを二重に確認できるようになり作業の人為的ミスが防止できる。また、RFIDの故障時のリスク回避や、工場で大量に使用される生産指示書などの紙資源の節約にも寄与する。

【関連リンク】
RFIDつきリライタブルシートを用いた生産・物流効率化実証実験を実施
http://www.mpi.co.jp/info/244/index.html

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Index
進むRFID標準化と実証実験
  Page1
普及期のRFID1.5、来るべきRFID2.0時代に備えよ
活発な2つのRFID標準化
  Page2
RFID1.5に向けた実証実験の活発な推進
Page3
バーコードの課題を突破するRFIDの高機能化
  Page4
2006年はどのような年になるのか


RFID2.0時代に備えるRFID入門 連載インデックス


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