RFIDタグを使うと、商品の整とんだけでなく整理ができる?


岡田 大助
@IT編集部
2007年11月16日
RFIDを活用して、製造から小売までをシームレスにつなぐサプライチェーンマネジメントシステムを実現するには、まだまだ解決すべき課題が残されている。個品レベルの管理をUHF帯RFIDタグで行う取り組みが始まった(編集部)

 UHF帯RFIDの特徴として、電波の通信距離がほかの周波数帯に比べて長いことと複数タグの一括読み取りがたびたび挙げられ、入出庫時の自動検品など流通サプライチェーンマネジメントシステムへの適用が期待されている。

 しかしながら、個品レベルの管理に関しては従来の13.56MHz帯RFIDシステムの方に一日の長があり、複数のRFIDシステムを適所適材に使い分けた運用が語られてきた。周波数帯の異なる複数のRFIDシステムの長所を生かすことでパフォーマンス面での成果が得られるものの、RFIDタグの使い分けや複数システムを構築・運用することのコスト面の負担は残される。

 2007年8月にリニューアルした日本パレットレンタルの技術検証施設「JPRイノベーションセンター」がプレス向けに公開された。テクニカルパートナーであるマイティカードの協力を得て構築された、製造現場から物流センター、小売における個品管理までのサプライチェーンをUHF帯RFIDタグで貫く「VUEシステム」をレポートする。

【VUEシステム】
米Vue Technologyが開発した、UHF帯スマートシェルフや1台のRFIDリーダ/ライタに多数のアンテナを接続するRFネットワーク、ミドルウェアを含めたプラットフォーム。マイティカードが日本向けにカスタマイズした「TrueVUEプラットフォーム」を展開している。

 物流におけるRFIDデバイドを解決するために

 物流現場においてRFIDタグを利用する場合、トレース情報の共有は業務の効率化につながるものと期待されている。しかし、流通段階に応じて商材の荷姿が変化すること(パレット、カゴ車、通い箱、ダンボール、個品など)と、流通に関わる企業すべてが同一のシステムを導入することの難しさ、共有すべき情報と秘匿すべき情報のセキュリティの確保などの課題が残されている。

矢印の部分にUHF帯RFIDタグが装着された「パレット」

 日本パレットレンタルは、「パレット」と呼ばれる物流容器にUHF帯RFIDタグを取り付け、レンタル業務の効率化に役立てている。また、Web物流機器在庫管理ASPサービス「epal」を展開し、国内外1500の物流拠点で採用されている。

 リニューアルしたJPRイノベーションセンターの狙いは、ハードウェアにUHF帯RFID、フレームワークにEPCglobalネットワーク、アプリケーションにASPを採用し、拠点間・異業種をまたがるサプライチェーンマネジメントモデルの未来像を描き出すことだ。

 同社では、epalの出入庫データの入力方法の1つにRFIDタグの読み取りを採用し、自動入力を実現した。現状では、まだパレット総数の管理(特定のパレットがどこにあるのか、無駄な空きパレットが存在していないか、など)しかできないが、将来的にはパレットに載せられている商品とパレットのRFIDタグをひも付ける積載商品管理機能を追加した「epal explorer」に発展させる予定だ。

【関連記事】
UHF帯タグを付けてパレット利用を効率化、JPR

 入出庫検品と在庫のロケーション管理を同一RFIDタグでつなぐ

 物流センターのデモは、「工場からの入荷」「倉庫内での保管」「商品のピッキング」「ショップへの出荷」の4つのステージに分けられる。

 入荷はパレット単位で行われ、アンテナを装着したゲート型RFIDリーダをフォークリフトで通過する。工場出荷時に送信されている伝票と商品の突合せ(検品)はRFIDタグの読み取りによって行われるため、誤入荷を即時に把握できるという。また、同じタイミングで出荷元へ到着確認情報が送信される。

 1辺が1.1メートルの正方形をしたパレット(JIS/ISOで規定されており、アジア圏では標準サイズとされる)が通過できるだけの幅を持ったゲートを通信範囲に入れることと、複数のRFIDタグの一括読み込みはUHF帯RFIDの得意とするところであり、実運用が進んでいる。

 倉庫内での保管で重要なのは、リアルタイムに在庫の所在管理ができるかという点だ。VUEシステムの「スマートパレットラック」では、指定ロケーション(ラック)だけでなくフリーロケーションでのパレットの所在管理と、在庫の自動棚卸が行われる。例えば、入庫検品が終わったパレットをラックに収納する際に、指定されたラック以外へ置かれた場合はモニター画面に警告が表示される。

 ピッキング作業を行うためには「ピッキングチェッカー」を使って、倉庫内の商品を回収する。ピッキングチェッカーには、PCのほかハンディ型アンテナやRFIDプリンタ、バッテリーなどが搭載されている。作業者は、プリントアウトされたRFIDタグ付き作業指示票に従って商品のピッキング作業を行う。従来のバーコードを利用した検品作業に比べ、RFIDによる一括読み取りを生かした作業時間の短縮が狙いだ。

左)庫内のパレットの在庫管理を行う「スマートパレットラック」
右)バッテリー内蔵で自由に移動できる「ピッキングチェッカー」

 また、ピッキングによる在庫商品数の増減はリアルタイムに管理される。この結果、事前に設定したしきい値を在庫数が下回った場合、発注を促す警告が行われる。さらに、積載物がなくなった空パレットが把握され、パレットの有効活用が促進される。

 ショップへの出荷は、ピッキングした商品を、事前にRFIDタグが張られた6輪カートに乗せ、入荷検品でも利用したゲートを通過するだけだ。このとき、自動的に出荷検品と出荷先への事前出荷情報通知(ASN:Advanced Ship Notice)も行われる。入荷作業と同様に、作業者が出荷検品作業によって発生するepalへの情報入力作業を行う必要はない。

作業者が情報入力をしなくても出荷情報通知が発行される

 
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Index
RFIDタグを使うと、商品の整とんだけでなく整理ができる?
Page1
物流におけるRFIDデバイドを解決するために
入出庫検品と在庫のロケーション管理を同一RFIDタグでつなぐ
  Page2
RFIDタグによって商品陳列の整とんだけでなく整理が可能に


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