第2回 ucodeによる情報表現と利用方法


YRPユビキタス・ネットワーキング研究所
所長
坂村 健(東京大学教授)
2007年10月12日
本記事は、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所の許諾を得て、「ユビキタスID技術および関連評価ツールの紹介」を編集、転載したものです(編集部)

 UCR graphのシリアライズ─UCR Format

 UCR Formatとは、UCR graphをコンピュータが理解できる形に書き下し、それをネットワーク上で流通させるための記述仕様の総称です。

 我々は、UCR Format仕様として、WWWとの整合性を特に考慮してUCR graphを書き下すUCR/XML(UCode Relation over XML)、効率的なデータ交換に特化した形でUCR graphを書き下すUCR/Binary(UCode Relation over binary data)、地図に代表されるSVG(Scalable Vector Graphics)コンテンツの中にUCR graphを埋め込むことを目的としたUCR/SVG(UCode Relation over SVG)、HTMLコンテンツの中にUCR graphを埋め込むことを目的としたUCR/HTML(UCode Relation over HTML)などを検討しています。

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<rdf:Description rdf:about="ucode:00000000000000000000000000000000b">
 <dcq:isFormatOf
  rdf:resource="http://uidcenter.org/ucr/vocab/example#name" />
</rdf:Description>
<rdf:Description rdf:about="ucode:000000000000000000000000000000001">
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UCR/XMLの記述例(図2をUCR/XMLで書き下したもの)

 UCR Vocabulary─ucodeと意味の結び付け

 ucode自体は、前述の通りあくまでも固定長の数値にすぎず、本質的にはそれ以上の意味を持つものではありません。一方、ユビキタスIDアーキテクチャに基づいて各種応用サービスを構築する際には、UCR graphがその応用においてどのような意味を持つのか、それらの応用サービスが理解する必要があります。

 そのためには、ucodeが示す意味をあらかじめ定義しておく必要があります。ここで、各種応用が共通の理解をする必要のある、基本的なucodeに対する意味の割り当てを「語彙」と呼びます。UCR Frameworkで規定される語彙の総称を、「UCR Vocabulary」と呼びます。UCR Vocabularyとは、ucodeとそれが持つ意味を対応付けた辞書集のようなものです。

 ユビキタスIDセンターは、次のような順序で語彙を定義します。まず、ユビキタスIDセンターが基本的な語彙を規定します。次に、基本的な意味定義を拡張して、それぞれの応用が使用する語彙を定義します。

 例えば場所情報システムで用いられる語彙として、場所に関するメタデータを記述するためのUCR-SpatialMetadataや、歩行者ネットワークを記述するためのUCR-SpatialNetworkなどを規定しています。今後、ユビキタスIDアーキテクチャのさまざまな応用への展開に合わせて、それぞれの応用で必要なさまざまな語彙を規定していきます。

 ucode関係データベースとucode解決

 「ucode関係データベース(ucode Relation Database)」とは、UCR graphを管理するデータベースです。すなわち、ucode関係データベースは、ucodeが振られた個々のモノに関連付けられた情報サービスなどのコンテンツに加え、複数のucode間に存在する関係という情報も包括的に管理します。

 例えば、商品のucodeにその商品の紹介文のコンテンツを関連付けるだけでなく、その商品を扱っている店舗のucode、その商品を生産している会社のucode、その商品の材料となったモノのucodeなどを関連付けることができます。

 ucodeに基づいてucode関係データベースから状況に応じた適切な情報を特定することを「ucode解決(ucode resolution)」といいます。例えば、あるucodeに関する情報を格納しているucode情報サーバの位置を特定することをいいます。

 ucode関係データベースへのアクセスプロトコルを「ucode解決プロトコル(ucode Resolution Protocol:ucodeRP)」といいます。

 ucodeに関連した情報を取得したいクライアントは、ucode解決プロトコルに基づいてucode関係データベースに問い合わせます。ucode関係データベースは、クライアントの要求に基づきデータベースを探索し、情報または情報の格納されたサービスサーバの位置情報(IPアドレスやURLなど)をクライアントに返します。これにより、クライアントはucodeに関連した情報を取得することができます(図4)。

 ucode関係データベースは広域分散されており、膨大な数のucodeとそれに関する情報の関連付けを管理することができます。また、ゲートウェイやキャッシュなどを利用した効率的な検索手法にも対応しており、リアルタイムなucode解決が可能になっています。また、広域分散されているucode関係データベースは、単一組織が管理するわけではありません。

図4 ユビキタスIDアーキテクチャの基本メカニズム

 先に述べた語彙も、確定的なものではなく最初の基本形であり、特定の組織が管理し使用を規定するものではありません。現場での必要で、微妙な差異がある関係が必要になれば、そのつど新規の関係ucodeを発行することが可能です。その場合、既存の関係ucodeと「似た関係」といった「関係ucode間のメタな関係」を示すucodeで関係付けることも可能です。

2/3

Index
ucodeによる情報表現と利用方法
  Page1
ucodeによる情報表現─UCR Framework
ucodeによる基本的な情報表現─UCR unitとUCR graph
Page2
UCR graphのシリアライズ─UCR Format
UCR Vocabulary─ucodeと意味の結び付け
ucode関係データベースとucode解決
  Page3
ユビキタスIDアーキテクチャの利用法と関連ツール
利用法の概要
関連ツール

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