自衛隊とRFID(後編)

自衛隊のRFID実験から得られた読取率向上策


明翫 正樹
アクセンチュア株式会社
マネジャー
2007年3月22日
「自衛隊の国際平和協力活動における補給業務での電子タグ利活用検討のための実証実験」の狙いとは何か。報告書をベースに、実験から得られたものを検証する(編集部)

 梱包数(タグ数)の増大に伴う読取率低下と解決策

 本実証実験で使用したゲート型リーダ/ライタによる単位時間当たりの読取可能RFIDタグ数には技術的に制限がある。

 例えば、実証実験で前提としたようにパレット−梱包−個品の3階層すべてにRFIDタグを貼付する運用において、1パレット上に10梱包が積載され、それぞれの梱包内には10個品が等しく格納されるような場合、合計で111個のRFIDタグが一度にゲートを通過することとなる。

 一方、ゲート型リーダ/ライタにより実施される入荷・出荷業務では、業務的にはパレットと梱包のRFIDタグのみの識別だけで十分(個品に貼付されたRFIDタグの情報が必要となるのは、入荷された梱包に格納された個品を入庫・検品する業務において)であり、11個のRFIDタグさえ読み取れれば十分であることになる。

 ところが、実際にはゲート型リーダ/ライタは111個のRFIDタグを読み取ろうとしてしまうことになり、結果として本来確実に読み取らなければならないRFIDタグに対する読みこぼしを発生させてしまう可能性がある。

 このようなことを考えると、ゲート型リーダ/ライタによる単位時間当たりの読取可能RFIDタグ数の飛躍的な向上を期待せず、読取率の向上を図るためには、以下のような対応が考えられる。

  • アンテナ数を増やし、1つのアンテナでの読取対象タグ数を少なくする
  • 同じUHF帯の電波で識別されるRFIDタグでありながら、ゲート型リーダ/ライタで識別する必要がないRFIDタグ(個品タグ)には、比較的読取距離の短いタイプのUHF帯RFIDタグを貼付する
  • UHF帯の電波で識別されるRFIDタグの貼付数をできる限り少なくする(例えば、個品には読取距離が短く、異なる周波数帯(13.56MHzなど)のタグや2次元バーコードを使用する)

 液体物質を含む梱包による読取率低下と解決策

 リーダ/ライタにとって、液体物質を含む梱包に貼付されたRFIDタグの読取が不得手であることは、UHF帯電波の性質上否めない。しかし、液体物質に貼付したRFIDタグや液体物質を個品として含む梱包に貼付したRFIDタグに読取不良などの問題が発生するだけならまだしも、その液体物質の近傍にあるRFIDタグやその液体物質によりUHF電波の照射が阻害される位置にあるほかのRFIDタグの読取不良は、できる限り避けたいものである。

 今回、発生した海自物品の読取不良はこれら物品が決して実験用の物品ではなく、自衛隊の本当の補給物品であったこと、また陸自・空自のほかのパレット上の荷姿と乖離することがないよう少なくともパレットへの積載容積を大きくするため1枚のパレットにすべての物品を積載してしまったことが原因であったと考えられる。

 このような物品を輸送する場合には、それが仮に通常運用ではあり得ない積載の仕方であったとしても、1枚のパレットに同種の液体物品を過度に積載しない方が望ましいと考える。RFIDタグの適用に当たっては、パレットなどの輸送手段への積載方法に関するガイドラインが必要になるものと思われる。

 読取率の全般的な向上に向けた解決策

 パレットタグの読取率確保のためのゲート型リーダ/ライタの設定が不十分であった横須賀地区を除いたとしても、通常運用で100%読み取ることができたのは全体の45.5%程度であった。しかしながらその一方で、読取率を向上させるためにゲート下でいったん停止するリカバリー運用に関しては、硫黄島基地において100%の読取が実現できなかった海自物品を除けば、全拠点平均(横須賀地区は除く)で100%の読取が実施できている。

 このことから、自衛隊の倉庫内などで通常に使用するフォークリフトで搬送する物品に対して、Class1 Generation2仕様のRFIDタグを貼付し、UHF帯の電波で一括読込を行うという業務は、現時点の技術的成熟度を前提とした場合、このリカバリー運用を実施することで十分に実用的であると考えられる。

横須賀地区・硫黄島基地の一部を除く拠点平均の電子タグ読取率 (画像をクリックすると拡大します)―出所:(財)防衛調達基盤整備協会/電子タグ実証実験プロジェクト全体連絡会議

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Index
自衛隊のRFID実験から得られた読取率向上策
  Page1
実証実験で利用したコード体系
実証実験で利用したタグ、リーダ/ライタ
  Page2
RFIDタグの読取率はどうだったのか
海上自衛隊横須賀地区の読取率
硫黄島基地の読取率
パレットタグの読取率低下と解決策
Page3
梱包数(タグ数)の増大に伴う読取率低下と解決策
液体物質を含む梱包による読取率低下と解決策
読取率の全般的な向上に向けた解決策

自衛隊とRFID
前編:国際平和活動における補給業務とRFID利用
後編:自衛隊のRFID実験から得られた読取率向上策

Profile
明翫 正樹(みょうがん まさき)

アクセンチュア株式会社
マネジャー

京都大学理学部物理学科卒業。官公庁・金融機関を中心に、システム開発のプロジェクト管理に関するコンサルティングに従事。

金融機関・政府系金融機関等へのシステム開発のプロジェクト管理に関するコンサルティング、金融機関のシステム統合のプロジェクト管理、官公庁の大規模システム開発のプロジェクト管理など

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