第3回 Exchangeを守る決め手は「マルチスキャンエンジン」


高橋 桂子
NRIラーニングネットワーク株式会社
ラーニングソリューション部
(Microsoft MVP for Windows Server System - ISA Server)
2007/2/16

 マルチスキャンエンジンとバイアス設定

●マルチスキャンエンジン

 連載の第1回でも取り上げましたが、Forefront Securityの最大の特徴は、マルチスキャンエンジンを搭載しているということです。FSEには次の9個のスキャンエンジンが搭載されており、1つのスキャンジョブに対して、最大5つのスキャンエンジンを有効化してウイルスの検出を行うことができます。

  • Ahnlab Antivirus Scan Engine
  • Authentium Command Antivirus Engine
  • CA InoculateIT
  • CA Vet
  • Kaspersky Antivirus Technology
  • Microsoft Antimalware Engine
  • Norman Virus Control
  • Sophos Virus Detection Engine
  • VirusBuster Antivirus Scan Engine
図6 スキャンエンジンの選択(画像をクリックすると拡大します)

 このようにFSEでは、複数ベンダのマルチスキャンエンジンによるスキャンが実現でき、高いウイルス検出度を実現できます。しかし、マルチスキャンエンジンの利点はこれだけではなく、シグネチャファイルを更新している場合でもスキャンが行えるという点もあります。ほとんどのウイルス対策ソフトウェアでは、シグネチャファイル更新時は、サーバをオフラインにする必要があります。FSEの場合、1つのスキャンエンジンがシグネチャファイルを更新していても、残りのスキャンエンジンではスキャンを実行することができますから、サーバをオフラインにする必要がなく高い可用性が実現できます。

●バイアス設定

 FSEでは、スキャンジョブごとに最大5つのスキャンエンジンによるウイルス検出を実現できますが、ウイルス検出の確実度とパフォーマンスは反比例します。つまり、スキャンに使用するスキャンエンジンの数を増やせば増やすほどウイルス検出の確実度は向上しますが、パフォーマンスには悪影響が発生してしまいます。このようなウイルス検出の確実度とパフォーマンスの適正なバランスを判断し、使用するスキャンエンジンを手動で調整することは容易なことではありません。

 FSEには、スキャンジョブごとに保護レベルとパフォーマンスを最適化し、使用するスキャンエンジンの割合を自動的に最適化するバイアス機能が組み込まれています。バイアス設定には以下の5つがあり、スキャンジョブごとに適切なバイアス設定を選択するだけで、スキャン動作が最適化されます。

図7 バイアス設定(画像をクリックすると拡大します)

バイアス設定
スキャン動作
確実度最大 すべてのアイテムを選択されたすべてのスキャナでスキャンする。
確実度重視 アイテムごとに選択されたスキャナの50%から100%を使用してスキャンする。
ニュートラル(標準)
アイテムごとに選択されたスキャナのうち最低でも50%を使用してスキャンする。
パフォーマンス重視 アイテムごとに選択されたスキャナのうち1つから50%を使用してスキャンする。
パフォーマンス最大 アイテムごとに選択されたスキャナの1つを使用してスキャンする。

 例えば、トランスポートスキャンジョブで、5つのスキャンエンジンを有効化していた場合、バイアス設定を「確実度最大」にすると選択された5つのスキャンエンジンすべてを使用してスキャンを実行します。「確実度重視」にするとパフォーマンスに応じて3つから5つのスキャンエンジンを使用してスキャンを実行します。同様に「ニュートラル(標準)」では3つのスキャンエンジンが、「パフォーマンス重視」では1つから3つのスキャンエンジンが、「パフォーマンス最大」では1つのスキャンエンジンが使用されることになります。

 このように、「確実度最大」以外の設定になっているとき、有効化されたスキャンエンジンからどのスキャンエンジンを選択してスキャンを実行するかは、FSEに搭載されているMEM(Multiple Engine Manager)によって自動決定されます。MEMでは、各スキャンエンジンのパフォーマンス、シグネチャファイルの更新日時、ウイルスの検出回数を参考に、スキャンエンジンのランキングを行い、最もパフォーマンスが良く、シグネチャファイルが新しく、ウイルスの検出実績回数の多いスキャナから順番に使用するスキャンエンジンを選択します。

 このようにFSEでは、マルチスキャンエンジンを搭載していながら、ウイルス検出時の確実度とパフォーマンスについて管理者はまったく頭を悩ませる必要なしに、バイアス設定とMEMにより最適なスキャンエンジンを自動的に選択してウイルス検出環境を実現することができるのです。

2/3

Index
Exchangeを守る決め手は「マルチスキャンエンジン」
  Page1
Microsoft Forefront Security製品群の特徴
Exchange Server 2007との統合
Page2
マルチスキャンエンジンとバイアス設定
  Page3
スキャナの更新


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