アイデンティティ管理の新しい教科書


第2回 ID管理技術をつなぐ女神、コンコーディア


日本電信電話株式会社
NTT情報流通プラットフォーム研究所
伊藤 宏樹

2009/12/22
ID管理技術の相互運用性確保のために発足した組織、「コンコーディア」。その出発点は、1つの「ベン図」でした(編集部)

 第1回「アイデンティティ管理の周辺事情を整理しよう」では、Webサーバ上の複数サービスを束ねる、「連携ID管理」の現状について説明してきました。今回は前回説明した複数のID管理技術間の相互運用方式について、現在検討を進めている、コンコーディア(カンターラ・イニシアティブ コンコーディア・ディスカッショングループ)とその取り組み内容について説明します。

 コンコーディアとカンターラ・イニシアティブ

 コンコーディアはID管理技術の相互運用性確保に必要な技術方式、相互運用ポリシーなどを検討、提案するオープンコミュニティ「コンコーディア・プロジェクト(Concordia Project)」として2007年に設立されました。ちなみに、「コンコーディア」は古代ローマ神話における平和と調和の女神、コンコーディア(Concordia:ラテン語)にちなんで名付けられています。フランス語の“Concorde”(コンコルド)といえば、英仏共同製作の超音速旅客機のことですね。

 コンコーディアは、

  1. さまざまなID管理技術の相互運用に必要となる要件定義、シナリオ策定
  2. 参加者に対する活動成果のアピールの場(ワークショップなど)の提供

を活動の大きな柱としています。

 コンコーディアではSAML、リバティ・アライアンス ID-WSF、OpenID、OAuth、WS-*、Information Cardなど、ID管理技術を網羅的に取り上げ、ID管理技術間の相互運用ユースケースを検討しています。また発足以来、コミュニティ参加者向けに議論の場を提供するだけでなく、成果のアピールの場を設けています。RSA Conference、Burton Catalyst Conference、Digital ID World、Internet Identity World といったID管理技術と関係の深いイベントにて成果報告のワークショップ、デモンストレーションを実施しています。

 2009年6月、コンコーディアは「カンターラ・イニシアティブ(Kantara Initiative)」の設立時に参画し、同団体の1分科会(コンコーディア・ディスカッショングループ)として現在は位置付けられています。

 カンターラ・イニシアティブとは、2009年6月にリバティ・アライアンス、ISOC、Information Card Foundation、XDI.org などID管理に関係する7団体(表1)により設立されたオープンコミュニティです。カンターラ・イニシアティブでは、これまで別個に活動してきたID管理技術に関する議論の場を1個所にまとめ、特定のID管理技術によらない、より広い視点からオープンに議論できる場を提供することを目的としています。

団体名
活動内容
Concordia Project SAML、OpenID、OAuth、InfoCard など、アイデンティティ管理技術間の相互運用方式検討を行う非営利団体
Liberty Alliance アイデンティティ管理技術に関する技術標準策定、セキュリティ評価、技術標準に基づく実装の相互運用性試験などを実施する標準化団体
openLiberty リバティ・アライアンス仕様に基づくオープンソースソフトウェアの実装を行うオープンコミュニティ
DataPortability Project インターネットにおけるユーザー情報のサービス間での相互利用方式を検討する非営利団体
Information Card Foundation インターネットにおけるデジタル・アイデンティティ・カード(InfoCard)の普及を目指す非営利団体
Internet Society インターネットに関する標準化,教育,ポリシー策定などの活動を主導する非営利団体。Internet Societyは下部組織にはIETF(Internet Engineering Task Force)やIAB(Internet Architecture Board)を有している
XDI.org/XDI Public Trust Organization ネットワーク,プロトコル非依存のリソース識別子XRI(eXtensible Resource Identifier)ベースのIdentityが、個人・企業ともに長期的・安定的かつ安全に利用できるようにするための非営利の管理団体
表1 カンターラ・イニシアティブ設立に携わった7団体
カンターラ・イニシアティブ記者説明会より抜粋)

 カンターラ・イニシアティブの活動の中心をなすのは、団体配下に構成される分科会活動(オープンコミュニティ活動)です。分科会には会員企業に所属する人以外でも自由に参加できます。

 現在、カンターラ・イニシアティブにおいて特に活発に活動が行われている分科会として、コンコーディア(Concordia Discussion Group)と、ID信頼レベル保証フレームワーク(Identity Assurance Framework)に関する議論を行うID信頼レベル保証ワークグループ(Identity Assurance Work Group)の2つが挙げられます。今回、そして次回の2回にわたって、これまでコンコーディアにて議論してきたID管理方式の相互運用の概念、および具体例として、OpenIDとSAMLとの相互運用方式の検討状況について説明します。

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Index
ID管理技術をつなぐ女神、コンコーディア
Page1
コンコーディアとカンターラ・イニシアティブ
  Page2
すべての出発点“The Venn of Identity”
ID管理方式の「相互運用」という考え方
  Page3
1.同じ目的を満たす2方式を相互運用させる場合
2.異なる目的を満たす2方式を相互運用させる場合
「プロキシモデル」と「ハイブリッドモデル」


アイデンティティ管理の新しい教科書 連載インデックス


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