RSA Conference Japan 2009レポート

進化するセキュリティ、
そのベクトルはどこに向かうのか


宮田 健
@IT編集部
2009/6/26



「統合脅威管理製品」の行く先は

 ネットワークセキュリティ機器を導入しようと考えたとき、いまならば真っ先に頭に浮かぶのは統合脅威管理(UTM)アプライアンスだろう。RSA Conference Japan 2009で見た、ネットワークセキュリティ機器の現状について触れておきたい。

●フォーティネットは「UTMを再定義する」

フォーティネットジャパン
マーケティング本部長
西澤伸樹氏

 まず、「UTMの再定義」というキーワードを掲げているのがフォーティネットだ。ASICを搭載した独自性の高い機器を提供するフォーティネットは、2009年4月に「FortiOS 4.0」を発表したばかりだ。従来も個別の機能を個別に追加し、UTMらしく多機能を実現していたが、OSをアップグレードし、それ自体に新機能を組み込むことにより、高速性と安定性を向上した。

 FortiOS 4.0で追加された主な機能はWAN最適化やアプリケーション制御など。これらの機能は利用者からのニーズが高いもので、特に「コスト削減」に対するニーズへの回答だという。経済状況の悪化から、海外では回線のコストを削減し、WANの帯域を絞る企業も出てきているという。その前提として、WANに流れる通信の量を削減し、帯域を節約できる仕組みが必要だ。

 FortiOS 4.0で追加されたWAN最適化機能は、CIFSなどファイル共有プロトコルで生じている「WANでは無駄な通信」を圧縮、もしくはカットすることにより、本当に必要な通信のみを流すことで帯域を節約する。フォーティネットジャパン マーケティング本部長の西澤伸樹氏は「日本ではアメリカに比べ高速回線が安く手に入る。しかし日本でも回線コストの見直しが入りつつあるため、重要な機能だ」だという。

FortiOSのWAN最適化。対向するFortiGate製品、もしくはVPNクライアントとのデータ量を削減する(クリックで拡大します)

 UTMというと、多くの機能をオンにするとレスポンスが遅くなるため、製品自体は多機能であっても、ファイアウォールのみ、ウイルスチェックのみなど、結果的に数個の機能だけをオンにして運用しているところも多いといわれる。この現状について西澤氏は、フォーティネット製品がASICベースの機器であることをアピールし、すべてを動かしても問題ない速度をキープでき、乗っている機能をすべて動かせるような作りを目指していると述べた。

【関連記事】
WAN流量を抑えてコスト削減、FortiOS 4.0を発表
http://www.atmarkit.co.jp/news/200904/23/fortinet.html

●ジュニパーは「セキュリティの自動化」をアピール

 「統合的な脅威管理」で興味深い製品を提供していたのはジュニパーネットワークスだ。ジュニパーネットワークスは「セキュリティの自動化」をキーワードにセミナーを開催した。中心となるのは、2009年5月にリリースしたSRXシリーズを基にした「AdTM」(Adaptive Threat Management)ソリューションだ。

 AdTMで実現するのは、ネットワーク機器が相互に連携し、社内外のどこにいてもあるべきセキュリティポリシーを適用するというものだ。中央にあるICシリーズのポリシーサーバが、リモートアクセスサーバなどと連携し、VPNなどで接続したときでも、社内にいるときと同じアクセスコントロールを適用する。

ジュニパーネットワークスのAdTMソリューションの一例。企業ポリシーに合致するPCのみがネットワークにアクセスできるよう、機器同士が連携する(クリックで拡大します)

 このようなソリューションが出てきた背景には、企業におけるネットワーク利用動向の変化にある。ジュニパーネットワークス マーケティング本部 エンタープライズソリューションマネージャの近藤雅樹氏は、職域のグローバル化やモバイルデバイスの機能向上により、ワークスタイルが大きく変化したと述べる。AdTMはユーザーの状態管理だけでなく、アプリケーションの振る舞いによる管理、リモート/ローカルのセキュリティレベルの統一化、脅威の「見える化」を管理する機能を、各種のネットワーク機器が連携しつつ実現することが特長だ。

 そしてこれらはUTM製品とはどのような関係にあるのだろうか。実はSRXシリーズには従来UTMとしてアピールしていた機能はほぼ搭載されており、OSは違うものの、機能面では従来提供していたSSGシリーズと変わらないという(SSGシリーズはScreenOS、SRXシリーズはJUNOS)。これらの機能において、あえてUTMという言葉を使わずに製品をアピールしていたのが印象的であった。

【関連記事】
ジュニパー、セキュリティ管理の新ソリューションAdTMを発表
http://www.atmarkit.co.jp/news/200903/10/juniper.html

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RSA Conference Japan 2009レポート
進化するセキュリティ、そのベクトルはどこに向かうのか
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情報漏えい対策は「うっかりメール」を防ぐことから
導入の目的が明確になりつつある「ログ管理」
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