PCサーバはどう進化してきたか


宇野 俊夫
ハラパン・メディアテック
2008/9/12


 クラスタリング、分散処理とSAN

 1990年代初期のPCサーバのハードディスク・インターフェイスは、高速かつ多数のドライブを接続できるSCSI、Fast SCSIによるRAIDが主流であった。さらに2000年前後からはUltra SCSIやUltra Wide SCSI、Ultra SCSI 320、そして数年前からSAS(Serial Attached SCSI)へと進化してきた。サーバとストレージのインターコネクト技術は、当初はファイバチャネル、ギガビットイーサネットやiSCSIなど、さまざまなSAN(Storage Area Network)のインターフェイスが乱立した。

 1999年にはInfiniBandが策定され、インターコネクト技術の標準が確立された(注2)。ミッドレンジからハイエンドの超並列システムといったHPC(High Performance Computing)や基幹系システム向けのサーバやストレージのインターコネクト用に利用されている。こうした仕組みを駆使し、サーバの設置密度を極限まで高めるために登場したのがブレードサーバである。

注2:
当初は、次世代拡張バスとしてインテルが中心になって提唱したNGIO(Next Generation I/O)と、Compaq、HP、IBMが提唱したFuture I/Oの2つによる主導権争いが起きた。しかし、結局InfiniBandへと落ち着いた。インテルはその後InfiniBandから撤退し、デスクトップ向けのPCI Expressに注力するようになった。現在ではPCサーバでも、2003年にPCI Expressが登場して以来、サーバ内部の拡張用に使われている。

 ブレードサーバは1枚のボードにPCサーバとしての機能をすべて備え、1つのフレームに多数のボードを収容する。クラスタリングやロードバランサを使ったデータベース処理、あるいはDNSを使ったインターネットサーバの負荷分散などに利用される(注3)。

注3:
もちろん、単に小規模サーバを高密度に設置するためだけに使われることも多い。

 PCサーバがSMPからクラスタリングや分散処理へと移行していくのには、サーバ単独でカバーできない障害への対策だけでなく、もう1つの理由がある。それは、処理性能の改善、すなわちスケーラビリティを向上させるということだ。

 SMPやマルチコアによるプロセッサ能力の改善は、スレッドやプロセス単位で処理の並列性を大幅に高めることができる。メモリやI/Oといった資源を共有するため、安価に効果を得られるが弱点もある。プロセッサ数が増えると共有資源へのアクセス競合も増え、得られる性能改善率が大きく劣化するのだ。具体的には行う処理によって異なるが、たとえばシングルコアの処理性能を100%とすると、2CPUやデュアルコアで最大180%以上の処理性能が期待できるのに対し、4CPUまたはクアッドコアになると320%、場合によっては280%を下回ることもあるほどなのだ。アクセス時のバスの競合や、メモリ書き換えなどによるキャッシュの破棄など、さまざまな要因で、期待したほどの性能改善が得られなくなる。クラスタリングや分散処理は、そうした状況を大幅に改善にも有効な手法であるわけだ。

 ちなみに、ブレードサーバでCPUを挿入し接続するバックプレーンは、通常のバスではなく、電源ラインやサーバ間のインターコネクト、サーバの稼動状態を示すモニタ信号などが配線されている。ブレードのCPUボードを差し込むと、新たなサーバをサーバ専用ネットワークに追加設置したのと同じ状況を簡単に実現できるのが特徴だ。

 一方、現在のPCサーバを越える可用性や拡張性が求められる用途では、古くから無停止サーバが導入されている。この種のサーバでは、システムのあらゆる要素が二重化や三重化され、しかもシェアードナッシング(共有が一切ない)で独自のインターコネクトによる接続で1つのOSのもとで動作するように設計されている。この種の無停止サーバで最も有名なのは、ヒューレット・パッカード(旧タンデム・コンピュータ)のIntegrity NonStopサーバだろう。

 PCサーバの変遷の意味

 現在、PCサーバと呼ばれる製品のレンジは非常に幅広い。エントリクラスのサーバはデスクトップPCの技術を使い、一般のデスクトップPCより安価なものも登場しているほどだ。一方、ミッドレンジクラス以上では、メモリのミラーリングや分散パリティ、SASによる高性能/高信頼な内蔵ディスク、ストレージやサーバのインターコネクトといった機能をサポートするなど、まるで別世界のコンピュータといえる。

 冒頭に提起した問題、サーバとデスクトップPCの違いであるが、筆者の個人的な見解は、「管理が容易で高い可用性を持つ、スループットの高い」コンピュータがサーバの特徴だと考える。「管理が容易で、高い応答性(ターンアラウンド)」が求められるデスクトップPCとは異なり、応答性は必ずしも重要ではなくスループット(単位時間当たりの処理能力)が重視されるわけだ。応答性とスループットの違い、この違いが分かればサーバの何たるかが分かっていることになる。これらの言葉の意味については、読者への宿題としよう。

 結局、PCサーバはその変遷において、さまざまな背景のもと、さまざまな要求に応えられるよう、バリエーションを増やしてきた、といえるのではないだろうか。駆け足で紹介したため、語りつくせなかったエピソードも多いが、時代や用途の変遷という流れに、PCサーバがどのように変化してきたのか、その雰囲気が伝われば幸いである。

2/2
 

Index
PCサーバはどう進化してきたか
  Page1
ファイル&プリンタ共有とPCサーバの登場
アプリケーションサーバの時代へ
可用性から信頼性へ
Page2
クラスタリング、分散処理とSAN
PCサーバの変遷の意味


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