ストレージ・アーキテクトになろう(1)

連載:ストレージ・アーキテクトになろう(3)

ストレージ・アーキテクチャとは何か


EMCジャパン株式会社
グローバル・サービス統括本部
マネージド・サービス部 部長
森山 輝彦
2008/12/4

ITインフラの統合と最適化は、多くの企業にとって重要な課題となってきている。ストレージ統合に関しては、特に米国では「ストレージ・アーキテクト」と呼ばれる人々が、スペシャリストとしての立場から社内プロジェクトに深く関与するケースが増えている。日本でも「SNIA認定アーキテクト」などの資格が整備されつつあるストレージ・アーキテクトの職務内容を通じ、統合ストレージの導入プロセスを解説する

 統合ストレージ・アーキテクチャ概要の決定

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 第1回第2回で、ストレージ・サービス・カタログの草案が作成されるまでの検討事項についてご紹介してきました。今回は、統合ストレージ基盤の調達に必要となる、ストレージ・アーキテクチャの検討項目について述べていきます。これは、論理的要件に対して、物理的要件のまとめといい換えることもできます。この段階では、随所でストレージ機器や、ストレージ・ソリューションの専門的な知識が必要となるため、経験の浅いストレージ・アーキテクトの方は、付き合いのあるベンダの協力を得ることも必要になってきます。もしくは、前回紹介した、“RFI(Request For Information: 情報提供依頼)”を利用し、必要な情報を得るのも有効な方法です。もし、自社にとっての転機となるような重要な投資である場合は、ストレージ・サービス・カタログの草案を自社要件とし、ストレージ・アーキテクチャの検討のみを対象としたRFPを作成して、ベンダとともに、十分なアーキテクチャ・モデルを確定していくことも、検討すべきアプローチの1つです。

 ほかのIT基盤技術が、成熟期に入っているのに比べ、ストレージ基盤技術は、現在でもまだ進化の最終過程です。そのため、仮想化、暗号化、エコロジー、階層化、統合化などのコア技術、重複除外バックアップ、アーカイブなどの複製技術、ディスク・メディアの大容量化、フラッシュドライブの採用による超高速化、テープ媒体とテープエミュレーション・ディスク媒体などのメディアに関する実装技術、iSCSI、FC-IPといった接続技術などで、各ベンダが矢継ぎ早に新たな技術を市場に投入しています。特定のサーバにI/O機能を集中させる実装技術の出現も、ストレージ技術の拡張のひとつといえるでしょう。このような状況下では、真の自社要件を反映したアーキテクチャ・モデルを確立しないまま、ストレージ基盤の調達を実施した場合、効果的な投資の実現に至らない場合も考えられます。

 今回は、以下のカテゴリ毎にストレージ・アーキテクチャの検討項目を紹介していきます。

  1. SANストレージ・アーキテクチャ
  2. NASストレージ・アーキテクチャ
  3. バックアップ・アーキテクチャ
  4. アーカイブ・アーキテクチャ
  5. リモート・バックアップ・アーキテクチャ

 1. SANストレージ・アーキテクチャ

 SANストレージ・アーキテクチャを構成する要素は、1. サーバからストレージ筐体までの、SANスイッチを中心としたストレージ・エリア・ネットワーク部分、2. ストレージ筐体、3. ディスク構成、4. 論理ディスク構成、5. ストレージ・ベース・ソリューションの選択、です。

ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)

 歴史的には、SCSIケーブル(銅線)を利用した接続もありましたが、ここ数年は、光ファイバを利用したFCケーブルによる構成が主流でした。最近は、IPネットワークを利用したiSCSIを採用する機器も充実しており、徐々に市場に浸透しています。従って、従来どおりのFCケーブルを中心としたSANを構築するか、iSCSIを利用するか、もしくは混合型にするかなどを検討することになります。

 接続媒体の検討のほか、SANスイッチに関する構成も重要です。まずは、大規模のダイレクタータイプの機器を採用し、大きな範囲でのSANを構築するか、小〜中規模のSANスイッチを利用し、目的別のSANを複数構築するかという検討をします。最近は、仮想SAN(VSAN:VLANのSAN版)を採用する企業も多くなっています。検討には、自社の投資規模、将来予測、保守単位、拡張単位などを念頭におきます。

 次は、SAN自体のアーキテクチャの検討です。メッシュ形、コア―エッジ型などいくつかタイプがあります。それぞれのメリット、デメリットを十分検討してください(詳細な解説は、すでにベンダのサイトや、書籍で語られているので割愛します)。

ストレージ筐体

 論理要件で、階層型を検討したとしましょう。この場合、ハイエンド・ストレージ筐体、ミッドレンジ・ストレージ筐体をそれぞれ検討し、調達するのが王道ではありますが、自社の容量に対する要求が大きくない場合は、あえて双方の筐体の購入を選択しない方が良い場合もあります。自社の要求容量が、ハイエンド・ストレージのエントリモデルで十分満たされるのであれば、あえて、ミッドレンジ・ストレージを別に準備する必要はありません。逆に、ハイエンド・ストレージが必要となる要件を持つ情報が極めて限定的であれば、ミッドレンジ・ストレージを中心に考え、より高い可用性の実現のため、別のソリューションと組み合わせることが適切な投資計画につながる場合もあります。第1回目で触れた“筐体戦略”を基本とし、論理要件、全体要求容量を考えて、適切なストレージ筐体の調達、導入を決定してください。

 
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Index
ストレージ・アーキテクチャとは何か
Page1
統合ストレージ・アーキテクチャ概要の決定
1. SANストレージ・アーキテクチャ
   ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)
   ストレージ筐体
  Page2
   ディスク構成
   論理ディスク構成
   ストレージ・ベース・ソリューションの選択
2. NASストレージ・アーキテクチャ
   NASネットワーク
  Page3
   NASヘッド
   ストレージ構成
   ファイルシステム構成
   ストレージ・ベース・ソリューションの選択
  Page4
3. バックアップ・アーキテクチャ
4. アーカイブ・アーキテクチャ
5. リモート・バックアップ・アーキテクチャ

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