サーバ仮想化バトルロイヤル(2)

サーバ仮想化バトルロイヤル(2)

ヴイエムウェアはごう慢なのか


三木 泉
@IT編集部

2008/8/12

現時点で主要なサーバ仮想化ソフトウェアと考えられるのは、ヴイエムウェアの「VMware Infrastructure 3」、シトリックスの「XenServer」、マイクロソフトの「Hyper-V」だ。この集中連載では3社へのインタビューを通じ、それぞれの仮想化に対する取り組み方や製品の位置付けの違いを浮き彫りにする

 サーバ仮想化ソフトウェア主要3社間の違いを、インタビューによって明らかにする試みの第2回として、サーバ仮想化ソフトウェアの機能と価格に関する3社のコメントをお届けする。前回もお伝えしたとおり、本連載は3製品間の細かな比較を目指してはいない。これまであまり明らかにされてこなかった3社のサーバ仮想化に関する基本的な取り組み方や製品戦略の違いを明らかにすることが目的だ。

 シトリックス:仮想化のすべてを提供するのは間違っている

 以下は、前回に引き続き、元XenSourceのCTOで、現在は米シトリックス・システムズ・バーチャライゼーション&マネジメント部門のCTOを務めるサイモン・クロスビー(Simon Crosby)氏へのインタビューからお届けする。インタビュー時期は2008年5月下旬だ。

 シトリックスの「XenServer」は、無償の「Express Editon」に加え、複数サーバの管理ができる「Standard Edition」、さらに高度な機能を搭載した「Enterprise Editon」で構成されている。「Enterprise Editon」はヴイエムウェアのVMotionに相当する「XenMotion」という仮想マシン移行機能を備えるとともに、仮想マシンに対するリソースの動的な割り当てや制御が可能になっている。

米シトリックス・システムズ バーチャライゼーション&マネジメント部門 CTO サイモン・クロスビー氏

 ヴイエムウェアとの比較でいえば、われわれは内在的にオープンなやり方でXenServerを構築している。われわれは、ISV(独立系ソフトウェアベンダ)が拡張してくれるような、オープンなアーキテクチャを構築することで、(ヴイエムウェアに)追いつくことができるといつも信じてきた。

 フォールト・トレランスはそのいい例だといえる。(近い将来に提供予定の)「XenServer 4.2」は、基本的なHA(高可用性機能)、いい替えれば再起動型のHAを備えている。しかし、パートナー企業の1社であるマラソン・テクノロジーズはHAのエキスパートだ。同社のような企業はこの基本的な機能を拡張して、この上に高度なフォールト・トレランス機能を提供できる。

 つまり、われわれが信じてきた考えは次のようなことだ。

 われわれは仮想化のあらゆることについてエキスパートなのか? そんなことはあり得ない。そんなことを仮定するのは非常に不遜だ。このことを仮定しているのはどのベンダか? われわれの競合企業だ。だれを指しているかは分かるだろう。

 彼らの考えは、仮想化に関するあらゆるものを提供できるのは自分たちしかいないということだ。それはごう慢な考えだし、やがて破綻する。なぜなら、業界全体が仮想化のまわりに革新を進めていかなければならないのに、現在のところそれは閉じた、プロプライエタリなもので、ほかのだれも参加できないからだ。われわれの場合は、パートナーのソリューションが成功してくれれば、われわれの製品がもっと使われる。基本的にエコシステムに基づいた考え方だ。いまは最高のタイミングだと思う。ISVエコシステムは仮想化で儲けたくて必死なのに、1社を除いてだれも儲けることができていない。

仮想化技術だけで問題は解決しない

 (では、ヴイエムウェアのVI3と直接比較された際に、それぞれの機能が劣っているといわれてもかまわないということなのか、といわれれば)そんなことはない。

 われわれはすでにHyper-V、Xen、VMware(ESX)の上の仮想マシン、そしてベアメタル(物理サーバの意)を対象とすることができている。彼らはVMWare上の仮想マシンしか対象とすることができない。それは愚かなことだと思う。

 彼らは閉じた1ベンダのプロプライエタリなボックスで商売をしている。われわれはマイクロソフトと一緒に、このボックスをオープンにしている。このゲームはもう終わった(だれがオープンでだれがクローズドなのかはもう決まってしまったという意味)。(例えば)われわれやマイクロソフトは、仮想マシンの機能をストレージ・ベンダに提供し、ストレージ・ベンダのスナップショットやクローニング、HAやディザスタ・リカバリのような機能を生かしてもらうことができる。われわれはこれらのことをする必要がない。なぜなら、われわれはこれらがもともと得意ではないし、その上ストレージ・ベンダがバリューチェーンに参加できるようになるからだ。

 (ヴイエムウェア)は自社だけのシステムにお客様を囲い込み、本来は無料で高速で、非常に堅牢で、世界最大の仮想化環境で使われているものに、高額の料金を取っている。ヴイエムウェアはXenがまだ大規模環境に使えるようなものではないという。しかし世界で最大の仮想化環境はXenを使っている。アマゾンはおそらく世界最大だ。壊れることなく、毎日インターネットからのアタックに対応している。

 仮想化の観点からばかり考えていると、ほとんど確実に間違いをおかすことになる。ヴイエムウェアはDRS(Distributed Resource Scheduler)がどれだけ素晴らしいかを訴えるだろう。VirtualCenterでポリシーを設定すれば、VirtualCenterがリソース状況に応じて仮想マシンを(自動的に)動かしてくれると。

 一方われわれは、「NetScaler」という、世界最高のポリシー実行エンジンを持っている。NetScalerをアプリケーションの前段に配置しておき、アプリケーションにもっとキャパシティが必要になったことをNetScalerが自動的に検知し、新しい仮想マシンを作り出して投入することができる。この機能はすでにデモを見せているが、これこそが、アプリケーション・デリバリという観点からの、本当のDRSだ。これはアプリケーションを監視し、正確にアプリケーションがどのような状況にいるかを把握し、インラインでポリシーを実行して、最適な時点で最適なことをするということだ。

 私にとっては、こういうのが非常に面白い。仮想マシンだけでなく、ネイティブなインスタンス(物理サーバの意)も呼び出せるし、Hyper-Vも呼び出せる。NetScalerはほかにもいろいろなすごいことができる。アプリケーションのレベルまですべての情報をつかんで、正しい状況にあるかを確認し、そうでなければトラフィックをほかの場所に振り分けることができる。ほかのデータセンターに転送することも可能だ。これこそがディザスタ・リカバリというものだ。

 ヴイエムウェアはXenServerがDRSを持っていないという。私は笑って、「わざと持っていない」と答える。われわれは彼らよりもっと良いものを持っている。われわれのようにアプリケーション・デリバリの企業にならないかぎり、ヴイエムウェアには同じようなことは絶対にできない。仮想化がどうやってこういう機能を提供するかという話ではなく、アプリケーションをどうデリバリするかという話なのだ。

 
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Index
ヴイエムウェアはごう慢なのか
Page1
シトリックス:仮想化のすべてを提供するのは間違っている
  Page2
ヴイエムウェア:データセンター運用自動化機能に大きな差
  Page3
マイクロソフト:HAにはアプリベンダの参加も必要

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