サーバ仮想化バトルロイヤル(3)

サーバ仮想化バトルロイヤル(3)

3つの仮想化ソリューションの近未来


三木 泉
@IT編集部

2008/8/20

現時点で主要なサーバ仮想化ソフトウェアと考えられるのは、ヴイエムウェアの「VMware Infrastructure 3」、シトリックスの「XenServer」、マイクロソフトの「Hyper-V」だ。この集中連載では3社へのインタビューを通じ、それぞれの仮想化に対する取り組み方や製品の位置付けの違いを浮き彫りにする

 この連載では、サーバ仮想化ソフトウェア主要3社間の違いを、インタビューによって探ってきた。第1回はハイパーバイザと基本アーキテクチャについて、第2回はサーバ仮想化ソフトウェアの機能と価格についてお伝えした。最終回となる今回は、近未来の仮想化ビジネス戦略についての3社のコメントをお届けする。

 ヴイエムウェア:デスクトップとクラウドは新たなフロンティア

 今回、ヴイエムウェアについては第1回第2回と異なり、8月6日に行った米ヴイエムウェア製品/ソリューション担当副社長、ラグー・ラグラム(Raghu Raghuram)氏へのインタビューからお届けする。

 ヴイエムウェアは最近、企業データセンターの運用を改善する仮想インフラストラクチャ分野に加え、デスクトップ仮想化とクラウドコンピューティングを3つの最重要分野として取り組んでいくという考えを明らかにしている。デスクトップ仮想化については、「VMware Virtual Desktop Infrastructure」(VDI)という名称で過去数年にわたりソリューションを提供してきたが、最近ではアプリケーション・ストリーミング技術ベンダのThinstallを買収し、仮想化技術の範囲を広げている。ヴイエムウェアは、WindowsやMac上で利用できるデスクトップ自体の仮想化製品も以前から提供してきた。

米ヴイエムウェア 製品/ソリューション担当副社長 ラグー・ラグラム氏

 (デスクトップ分野での投資を加速化しているのは)シトリックスの動きとは無関係だ。社内的に、デスクトップ・グループを1つの組織として確立できたことが原因だ。

 次世代のデスクトップ・ソリューションに何が必要かを考えると、OSイメージの配備プロセスを簡素化し、そのセキュリティを高めるというだけでは十分でない。フル・ソリューションを提供するには、アプリケーションの配備も簡素化する必要がある。これがThinstallを買収した理由だ。これは、デスクトップを対象とした製品群を構築する取り組みの一環だ。

 われわれの(デスクトップ)戦略は、VDIだけを基にしているわけではない。解決しなければならない問題は、デスクトップのセキュリティとコストが手に負えなくなってきていることだ。この問題を完全に解決するためには、VDIのほかに、われわれがさまざまな製品を提供しているクライアント側の要素、これに接続する部分、OSイメージとアプリケーション双方の管理などが必要だ。

  VDIはVMwareのインフラストラクチャ上に構築されているため、われわれがデータセンターのために構築してきたすべてのものを、デスクトップの管理に大きく役立てられる。しかし、VDIはわれわれがデスクトップITに関して提供する(パズルの)ピースの1つだ。デスクトップはサーバと違って多種多様だ。大企業や中堅企業には、トランザクション業務を行うユーザー、パワーユーザー、ナレッジ・ユーザーが混在している。すべてに適用できる単一のソリューションなどない。VDIはそのうちの一部のユーザーのニーズを満たすことができるが、それ以外のユーザーには、ローカルのクライアントベースのソリューションが必要だ。モバイルユーザーにはポータブルPC上で動くものが求められる。しかし、これらすべてを結び付ける管理機能も必要だ。

 シトリックスに対する差別化という点では、シトリックスはクライアント仮想化のストーリーを持っていない。彼らはサーバ上で(デスクトップOSを)動かすことはできるが、PC上での仮想化製品を持っていない。われわれの場合、ユーザーは、VDIで使っている(サーバ上の)仮想マシンをチェックアウトし、自分のPCの「VMware Workstation」環境に持ってくることができる。Outlookがオフラインで使うこともできるのと同じように、(デスクトップOSでも)ローカルで動かしておいて、後で(サーバ上の仮想マシンと)同期することが可能だ。(2008年2月に開催の)VMworld Europeでデモを見せており、将来提供する。これでOSイメージやデータイメージについて対応し、アプリケーションについては(Thinstallから取得したアプリケーション仮想化製品の)「ThinApp」で対応する。ThinAppはサーバ上でもデスクトップ上でも(仮想マシンに)適用できる。

クラウド・プロバイダがVMware ESXを選ぶ理由

  クラウドコンピューティング向けのソリューションについては、(2008年9月に開催の)VMworldで紹介する予定だが、クラウド・プロバイダがデータセンターをサービスとして提供することを助ける各種の仮想データセンター・ソリューションを提供していく。

 (現在のクラウド・プロバイダは仮想化でオープンソースXenを使うケースが目立つが、)第1に、この市場はまだ初期の段階で、数十億ドルレベルのビジネスをしているところはいない。第2に、すでに100社近くのサービスプロバイダが「VMware ESX」と「VMware Infrastrucure 3」を使って、クラウドに似たサービスを企業向けに展開している。企業向けサービスについていえば、われわれの技術を使っているプロバイダのほうが、Xenを使っているプロバイダより多い。第3に、こうしたプロバイダがXenを使っている大きな理由は、無償で使えるからだが、この問題は解決した。(ESXiの無償化によって)彼らはいまや、非常に安定していて、機能に優れたハイパーバイザを無償で使ってサービスを構築できるようになったからだ。彼らにとっては、ハードウェアをなるべく少なく抑えることも重要だ。われわれはユニークなメモリ管理技術を組み込んでいて、物理サーバ上の仮想マシンの密度はほかのどのハイパーバイザよりも高められる。私がサービスプロバイダで、XenとESXiのどちらかを選ぶなら、より成熟していて、サーバの密度も高められるESXiを選びたくなるだろう。

 クラウドコンピューティング関連ソリューションとしては、さまざまなことが考えられる。T-SystemsやBT、Savvisといった企業は、われわれの技術の上に、顧客サービスポータルを構築したり、バックエンドの料金請求システムを統合したりしている。彼らの管理インフラやオペレーション・スタッフとの連携なども行っている。われわれは将来に向け、こうした分野でいろいろなことができると思う。

 必ず実現する必要があるのはマルチテナントのサポートだ。マルチテナントとは、複数の事業部門(あるいは顧客)同一のインフラを共有する(とともに、別々に管理できる)ことだ。

  (ソフトウェアライセンスモデルの観点からは)すでにサービスプロバイダに対して、「pay-as-you-go」(使った分だけ課金する)のライセンスを提供している。

マイクロソフトがLive Migrationを安く提供しても怖くない

 中小企業のユーザーに聞けば分かるが、VMware ESXiはHyper-Vよりも多くの機能を持っているし、無料だし、フルにOSを備えているわけではないので、使いやすさにおいても勝っている。(OS上に導入するタイプの無償仮想化製品である)「VMware Server」は300万のお客様にダウンロードしてもらった。そのうちの多くは中小企業のお客様だ。こうしたお客様はヴイエムウェアの提供する品質や機能、ユーザーインターフェイスに慣れ親しんでいて、ESXiに非常に早く移行してくれる。

 (仮想化ソリューションについて)どこまでの機能があれば十分なのかに関する定義は、時とともに変わっていくものだ。マイクロソフトが「Virtual Server」を無償で提供し始めた当時、誰がVMware ESX Serverを買うのかといわれた。しかし、何が十分なのかという定義は変わった。基本的な仮想化では十分ではなく、ベアメタルの(物理サーバ上で直接動くという意味)仮想化が必要だという話になった。3年後のいまになって、マイクロソフトはベアメタルの仮想化を出してきたが、何が十分なのかという定義は、VMotionのような機能が必要だというものに変わっている。マイクロソフトがVMotionと同等の機能を出してくるころには、また新たな定義が生まれているだろう。

  ちなみに、Hyper-Vは無償ではない。OSを購入しなければならないから、最低でも800〜900ドルはする。管理が必要なら、「Virtual Machine Manager」を使わなければならず、さらに1000ドルの出費となる。もしこの価格でマイクロソフトが将来、VMotionと同じ機能を提供するようになったとしても、われわれはほかに真似のできない別の機能を提供する。お客様は、仮想化によって、ほかでは得られないものが手に入ることを評価してくれている。従って、仮想化におけるイノベーションが尽きない限り、状況は変わらない。われわれは次のフロンティアに向けて、確実に競争していける。

 もう1つの議論は、マイクロソフトがOSを無料にしないかぎり、必ずコストが掛かるということだ。最終的には、それぞれのユーザーに対して最高の柔軟性と価格性能比を提供するのは誰かということになる。マイクロソフトもある程度お客様を獲得するだろう。われわれもお客様を獲得する。オール・オア・ナッシングの世界ではない。

 多くの機能を必要とはしないが基本的なサーバ統合を確実にやりたいお客様に対しては、「VMware Infrastructure 3 Foundation」を提供している。これはHyper-VとVirtual Machine Managerを合わせたのと同等か、より優れた機能を備えている。これは現在、われわれの製品のなかで一番売り上げが伸びている。(マイクロソフトとの競合状況は)すでに存在しているが、多くのお客様はヴイエムウェアを選択してくれている。

 また、小規模なお客様は将来、自社にサーバを抱えずに、クラウド・コンピューティングを購入するようになるかもしれない。これが、もう1つの差別化の方法でもある。

 
1/3

Index
3つの仮想化ソリューションの近未来
Page1
ヴイエムウェア:デスクトップとクラウドは新たなフロンティア
  Page2
マイクロソフト:サポートやライセンスの整備が先決課題
  Page3
シトリックス:マイクロソフトとの関係を生かす

Server & Storage フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

Server & Storage 記事ランキング

本日 月間