第1回@ITスマソ勉強会レポート
第1回@ITスマソ勉強会レポート


売れるソーシャルアプリ開発のコツを
成功者から学ぶ


仲里淳
@nakazato
2011/4/1

 @IT編集部は2月25日、昨年12月に立ち上げた新フォーラム「Smart&Social(スマソ)」と連動した「第1回 @IT Smart&Social(スマソ)勉強会〜ソーシャルアプリを作ってみまソ〜」を開催した。人気ソーシャルアプリ「やきゅとも!」を提供するポケラボの桑原佳人氏が、同社でのソーシャルアプリ開発経験や実例に基づいたノウハウを語った。

会場となったのは、さくらインターネットのセミナールーム。桑原氏の講演の後には、「さくらのVPS」を使った簡単なハンズオンも行われた
会場となったのは、さくらインターネットのセミナールーム。桑原氏の講演の後には、「さくらのVPS」を使った簡単なハンズオンも行われた

モバゲーを中心にソーシャルアプリを展開するポケラボ

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 桑原氏が所属するポケラボは、ソーシャルアプリやモバイルコンテンツを中心に事業を展開する、いわゆるソーシャルアプリプロバイダだ。モバゲータウン(以下、モバゲー)の「やきゅとも!」を筆頭に、数々のソーシャルゲームを提供している。

 他のソーシャルアプリプロバイダと同じように、この1年間で急成長を遂げ、現在はアルバイトなどを含めて約80名のスタッフがいるという。

現在ポケラボの中心事業となるのがソーシャルアプリ(ポケラボのサイトから引用)。少数チームで迅速に企画開発しているという
現在ポケラボの中心事業となるのがソーシャルアプリ(ポケラボのサイトから引用)。少数チームで迅速に企画開発しているという

リアルフレンドとバーチャルフレンドの区別

 ソーシャルアプリ開発のポイントとして桑原氏が最初に挙げたのが、「リアルフレンド」「バーチャルフレンド」という考え方。この2つの違いは、実際に会ったことがあるか、オンライン上だけでの交流かということだ。

サンプルアプリの画面遷移図
リアルフレンドとバーチャルフレンドの対比。「ゲームの相手」としてだけなら、バーチャルフレンドの方が適している(桑原氏の講演資料より)

 リアルフレンドのゲーム体験というのは、実際に会ったことのある友達や知人とゲーム内でも関係を築くもので、mixiやFacebookで多く見られる。一方、バーチャルフレンドのゲーム体験というのは、実際に会ったことのない人と仮想環境でゲームを通じて関係を築いて楽しむというもので、モバゲーやGREEに多く見られるという。

 この関係とゲームの内容がマッチしているかが、ヒットするかどうかに大きくかかわってくる。

 「モバゲーの『怪盗ロワイヤル』は、mixi版も出ました。このゲームは、ユーザー同士がアイテムを奪い合うというものですが、mixiのようにお互いに知っている人同士、つまりリアルの友達関係にあると、本気で奪い合うのは難しいと考えています。

 モバゲー版、GREE版、mixi版いずれに対してもシステムを共通化して出せると効率は良いですが、出したとしてもリアルフレンド同士で受けるもの受けないもの、バーチャルフレンド同士で受けるもの受けないものという差が出てきます。

 ポケラボでも、フレームワーク化することでシステム的に複数プラットフォームへ対応するという試みを行ってきました。しかし、そもそも企画の段階で、友達との関係性が異なるので同じ形では出せないという結論に至ったこともあります」(桑原氏)

 つまり、ユーザー同士の関係で成り立つソーシャルアプリにおいては、ゲームの内容に加えて、ユーザー同士の関係性がプラットフォームごとに、どのような傾向があるかを見極めることが重要ということだ。

小さな目標の積み重ねと小さな友達関係の構築

 ゲームとしてヒットするために欠かせない要素が、小さな目標小さな友達関係だという。多くのRPGでは、「最終的な目標=ボスを倒す」の達成までに小さな目標をクリアしていくが、ソーシャルゲームでも適度な目標の提示が重要となる。

 また、他のユーザーと関係を築くことは、継続するモチベーションを生み出すために効果的だ。

ソーシャルゲームの必須要素(桑原氏の講演資料より)
ソーシャルゲームの必須要素(桑原氏の講演資料より)

 「例えば『ドラゴンクエスト』では、最終的に魔王を倒すという大きな目標がありますが、最初は『村人に話しかけましょう』といった具合に、それに至る過程で小さな目標が常に提示されます。また、クリアすることで小さな成功体験が積み重なり、モチベーションも継続します。これはソーシャルアプリでも同様で、小さな目標を達成したときに何かアイテムを得るなど、その都度小さな成功体験を経験してもらうことが重要です。

 友達関係の構築は、ソーシャルアプリにおいては基本的な要素です。ゲームの内容によって、しがらみの強弱、1人でも楽しめるかどうかなど違いはありますが、いずれにしても友達関係の構築は必要で、ゲームの継続性にも大きく影響してきます。

 ゲーム環境の変化という視点でとらえると、昔の家庭用ゲームは単独プレイヤーが基本で、1人で遊ぶものでした。複数で遊べたとしても、せいぜい数名でした。その後、オンラインゲームが登場して、少し前ならハンゲーム、現在ではモバゲーやGREEのようなプラットフォーム上でゲームをする人が増えてきました。ただし、家庭用ゲームでもPCゲームでもオンラインゲームでも、『気軽に自己満足できるモノ』という基本は変わっていないのではないかと思います」(桑原氏)

 次に、ポケラボが開発した「やきゅとも!」を例に、ヒットに結び付く要素を見ていく。

 「やきゅとも!」は、ユーザーが野球チームの監督となり、選手を強化して世界を目指すゲームだ。「練習→強化→試合→次のリーグへ進む」というフローが進行の基本になる。これが明確でないと、ユーザーはやるべきことが分からずにゲームを楽しむことができない。そしてこれに、ソーシャル性やマネタイズの要素を組み込む。

 「例えば、他のチーム(ユーザー)と合同練習をすると、単独で練習するよりも高い効果が得られます。これは、1人でやるより誰かと一緒にやることで有利になるという要素です。ユーザー同士で示し合わせて遊んだり、新しく友達を誘い入れたりといった効果が期待できます。『怪盗ロワイヤル』でも、友達ができると装備できる枠が増えます。

 また、練習には実時間の要素を取り入れています。例えば、ゲーム内で『4時間練習する」となったら、実際に4時間経たないと結果が出ません。それを課金アイテムによって短縮できるようにします。早くチームを強化したい願うユーザーは、アイテムを買ってくれます」(桑原氏)

3人×3カ月のスピーディな開発サイクル

 ポケラボでは、まず企画を10営業日ほどで立て、それ以降は原則50営業日の3カ月開発が基本だという(この後に審査で10営業日が加わる)。

 主管1名、エンジニア1名、デザイナ1名の3人体制でスタートするのが基本で、場合によっては主管がエンジニアを兼務する。主管は、企画の発案者であることが多く、ディレクションやタスク管理が主な役割になる。これに、Flashチームが適宜参加する(運用後はカスターマーサポートインフラチームも)。

 設計に10日間、アルファ版とベータ版の開発にそれぞれ20日間かけるのが目安だが、期間の短さから設計書なしで進める場合もあるという。アルファ版というのは、ゲームの核となる部分のみの社内チェック用モックで、この段階でリリースすべきかどうかの最終判断を行う。

 業務系システムに携わる人間にとっては驚くかもしれないが、これがソーシャルアプリ開発のスピード感だといえるだろう。

ポケラボのアプリ開発スケジュール(桑原氏の講演資料より)
ポケラボのアプリ開発スケジュール(桑原氏の講演資料より)

 「ポケラボがこのスケジュールでやっているからといって、他でも同じようにやるべきだとは思いません。ソーシャル性や課金システムをどう組み込んでいくかなど、時間をかけて練ることは大切です。とはいえ、次から次へと新しいゲームが出てきてトレンドの変化も激しいため、スピードはやはり重要です。アイデアをすぐに形にしていかないと乗り遅れてしまいます

 開発スピードを短縮する方法としてフレームワークの採用があります。ポケラボでも「Ethna」を採用しています。ただし、そのまま使うと非常に重く、10万〜20万のユーザーがアクセスすると処理速度の面で運用コストが掛かってしまいます。これをどう解決するかがポケラボにとっての目下の課題でもあります。開発スピードとランニングコストはトレードオフの関係あるので、どう選択するか見極めが必要です」(桑原氏)

リリース後の“イベント”でユーザーを引き留める

 ゲームの面白さが重要なのは言うまでもないが、ユーザーに継続して楽しんでもらえるかはリリース後の運用にかかっている。

 「自社サービスを提供する場合は、実は開発よりも運用してからの方が大変です。イベントを定期的に打っていかないと、ユーザーが離れて他のアプリにどんどん流れて行ってしまいます。過去の失敗として、次のイベントまで1週間空いてしまったことがありますが、そのときは数万人規模でDAU(1日にアクセスするユニークユーザー数)が減少しました。従って、絶え間なくイベントを打っていく必要があります。

 『やきゅとも!』では、試合をしてボスに勝とうというバトルイベントを打ったり、選手カードをガチャ(ガチャガチャの略。ランダム購入機能)で買ってもらったり、プロ野球チームやアイドルとコラボしたりしました」(桑原氏)

講師を務めたポケラボ ソーシャルメディア事業部 チームリーダーの桑原佳人氏
講師を務めたポケラボ ソーシャルメディア事業部 チームリーダーの桑原佳人氏

 集客のための施策として、ソーシャルアプリでもWebサイトと同様に広告を使うことはある。しかし、効果的かどうかは場合による。

 「ユーザーの傾向を見たときに、初期のユーザーが継続して遊び続ける場合と、新規のユーザーに入れ替わりながら遊ぶ場合の2つがあります。アプリにもよるでしょうが、『やきゅとも!』の場合はリリース当初から遊んでいるユーザーが全体の中で大きな割合を占めています。うまく継続してもらえているということです。よく、アプリがヒットして予算が付くと、広告を打って新規ユーザーを増やそうとしますが、広告経由のユーザーは定着しづらいと感じています。

 結局残るのは、もともと強い関心があって始めたユーザーで、そちらの方が継続してもらいやすいと思います」(桑原氏)

ログに基づくユーザー行動と施策効果の分析を徹底

 イベントや機能をリリースした後で重要なのは、効果があったかどうかを分析することだ。Webサイトの運営でもアクセス解析は常識だが、これはソーシャルアプリでも同じである。

 「モバゲーやGREEなど、プラットフォーム側が用意したレポートでKPIの確認ができるようになっていますが、実際はそれだけでは不十分です。ゲームごとに分析すべき情報や問題点が異なるため、独自にログを収集して分析しています。

 『やきゅとも!』では、序盤にファンを4万人集めるというミッションがあり、それをクリアしないと先には進めません。ログを調べてみたら、クリティカルな数のユーザーが脱落して辞めていました。これは、独自にログを収集して調べないと知り得なかったことで、コミュニティや問い合わせなどユーザーの意見だけでは気付けません

 会員属性別に、どれだけのユーザーが、どのタイミングで、なぜその行動をしたかを徹底的に分析します。数値に基づいて運営ノウハウを定量化できれば、後続のアプリにも生かせます。ログ分析が必須というのは、ポケラボ社内の共通認識ですし、おそらく業界全体でも同じでしょう」(桑原氏)

リリース後3カ月で継続か終了かを判断

 矢継ぎ早に新作アプリを生み出すが、すべてがヒットするわけではない。開発スケジュールと同じようにライフサイクルも早い。あるアプリを継続すべきか終了すべきかは、リリースしてから3カ月程度で判断するという。

 「継続するかどうかは、DAUで判断します。リリースから3カ月目くらいまでは伸びて、そこから低下する傾向にあります。その時点で一定基準に達していない場合は終了するか、場合によっては人員を減らします」(桑原氏)

 最後に、ソーシャルアプリを開発するために必要なスキルや向いた人材について、新しい分野であるが故に向上心が大事だと語った。

 「ポケラボでは、『世界中の人にサプライズを届けたい』という共通の価値観を持っていることが重要です。また、サプライズを届けるために必要なスキルやノウハウに関心を持ち、日々研鑽していく力がある人物かを面接では見ています」(桑原氏)

講師を務めたポケラボ ソーシャルメディア事業部 チームリーダーの桑原佳人氏
勉強会/ハンズオン終了後は、軽食を取りながら桑原氏や参加者同士で懇親会が行われた

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