「ソーシャルゲーム・リーダーズ・サミット」レポート
「ソーシャルゲーム・リーダーズ・サミット」レポート


類似ソーシャルアプリはパクリではなく
切磋琢磨の結果だ


吉村 哲樹
2011/11/7

ソーシャルゲーム業界の現在を垣間見る

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 2011年10月6日、ベルサール三田(東京・港区)にて、ベンチャー・カフェ主催のイベント「ソーシャルゲーム・リーダーズ・サミット──トップ3が語るソーシャルゲームの未来/月商1億円アプリの作り方」が開催された。このイベントは、急激な勢いで成長を続けるソーシャルゲーム市場の現状や将来、さらには成功を収めるための秘訣(ひけつ)などについて、業界の最先端を走るトップ企業3社のキーマンが集結して自由闊達に語り合うというものだ。

 イベント当日は、平日の遅い時間帯の開催にもかかわらず、ソーシャルゲーム業界に携わる人々を中心に約200人もの参加者が集まり、スピーカーの話に熱心に聞き入っていた。以降で、当日の様子をダイジェストで紹介する。

一大エンターテイメント市場となった「ソーシャルゲーム」

 本イベントの冒頭では、株式会社gumi(以下、gumi)の代表取締役社長 国光宏尚氏が登壇し、ソーシャルゲーム業界の最新動向について講演を行った。

 gumiは、現在ソーシャルゲーム業界で急成長を遂げているトップ企業の1社。主にGREEのプラットフォームを中心に、35タイトル以上のソーシャルアプリケーションの開発・運営を行う。読者の中には、同社が提供する「任侠道」「さんごくっ!」といったヒットゲームをご存じの方もいるかもしれない。

 そんな同社を率いる国光氏は、ソーシャルゲーム業界の規模は今後もまだまだ伸び続けると話す。「2011年時点で、映画産業の規模は約2000億円、家庭用ゲーム市場は約3000億円。それに対して、ソーシャルゲーム業界は約2000億円ですでに肩を並べているが、2013年には、これが4000億円まで成長し、国内エンターテイメント産業としては最大の市場規模にまで成長すると予測される」

国内のエンターテイメント産業(国光氏の講演資料より)

 企業規模を見ても、家庭用ゲームメーカーの雄である任天堂の株式時価総額が約1兆7000億円なのに対して、近く上場予定の世界最大のソーシャルゲーム企業といえる米Zyngaは上場後の株価総額を約2兆円と見込んでおり、すでに任天堂を追い抜いている。では、国内のソーシャルゲーム企業の動向はどうなっているのだろうか。

世界のソーシャルゲーム企業(国光氏の講演資料より)

 「2010年のソーシャルゲーム業界は、実に多くの企業の間で熾烈な競争が繰り広げられていたが、2011年に入ってからは徐々に淘汰が進んでいる。実際には、GREEとMobageのプラットフォームともにコナミが強いが、それに続く企業としてGREEではgumiとドリコム、MobageではKLabとGMSが力を付けて、コンスタントにヒットタイトルを出している。このように、上位寡占の傾向が進行しつつあるのが業界の現状だ」(国光氏)

 こうして国内市場が成熟化しつつある中、勝ち組企業の多くは次のターゲットとして海外市場に標的を定めている。国光氏も、今後は業界全体が海外に積極的に目を向けるべきだと訴える。

 「これからのソーシャルゲームはスマートフォン上のプラットフォームに戦いの場を移し、海外勢を迎え撃つことになる。この業界には、日本企業が世界を獲れるチャンスが限りなくある。今日、会場にいらした方々も、このまま日本国内の市場でもがきながらやっていくのか、それとも海外に果敢に討って出るのか、ぜひ真剣に考えてもらいたい」(国光氏)

類似アプリはパクリではなく切磋琢磨の結果だ

 本イベントの後半は、国光氏に加えて、KLab株式会社(以下、KLab) 取締役 森田英克氏と、株式会社ドリコム(以下、ドリコム) 執行役員 長谷川敬起氏を交えたパネルディスカッションが行われた。ちなみに、KLabは主にMobageプラットフォーム上で「真・戦国バスター」「恋してキャバ嬢」などのヒット作を連発する業界大手のソーシャルサービス企業、そしてドリコムも「陰陽師〜平安妖奇譚〜」「ビックリマン」など数多くのヒットタイトルを手掛ける、業界の勝ち組企業である。

 パネルディスカッションは、事前に参加者から募集した質問項目をテーマとして取り上げながら進められた。まず1つ目のテーマは、「最初の企画の出し方、承認フロー、判断基準」について。森田氏は、KLabでのやり方を次のように説明する。

KLab 取締役 森田英克氏「Mobageさんのユーザーさんの厨二的なものにすごく刺さるっていうところをまず仮説において、じゃあ厨二的なものって何だろうな? やっぱりジャンプだよね、みたいなところで、ジャンプをすごくトレースしながらシナリオやゲームを作りました」

 「初めに企画のテーマを決めたら、ターゲットにするプラットフォーム上でそのテーマでどれだけのユーザーを獲得できそうか、競合アプリの動向も含めて調査した上で、商品化するかどうかを判断する。承認に関しては、最初の企画の大枠を決める場に私や社長など決裁者が同席して、ほぼその場で決断を下している。その際には、『1億円売れるかどうか?』が、GOサインを出すか出さないかの1つの判断基準になっている」

 次に取り上げられたテーマは、「類似アプリが氾濫する状況について」。今日のソーシャルゲーム界を指して「パクリが横行する業界」と評する人もいるが、これに対して長谷川氏は次のように述べる。

 「どの企業も、他社のゲームにインスパイアされて、結果として一見似たようなゲームを作ってしまいがちな状況は確かに存在する。これに対して、企業としてのモラルは確かに尊重する必要があるが、『自分たちのオリジナリティは、ここにある』という確固たるものさえあれば、後はユーザーが喜んでくれるものを作るだけだと思っている」

 国光氏も、「互いにいいものをどんどん取り入れながら切磋琢磨している状況は、日本のソーシャルゲームの大きな強みの1つだ」と指摘する。

 また、参加者から特に質問が多かったテーマが、「マーケティングと集客の施策」だ。これはソーシャルゲームビジネスの成否を大きく左右する取り組みだけに、3社ともさまざまな工夫を凝らし、多くの経営資源を割いているという。特に、ゲームを市場に投入した後のユーザー動向の観測と、それに対するアクションは、どの企業も力を入れている。

ドリコム 執行役員 長谷川敬起氏「やっぱりジャンプは同じように参考にしていますね。後は、30代をメインターゲットにしているので、あの世代がファミコン時代で何にハマっていたか、1人用のゲームで熱狂させられたのが何だったか、っていうのもすごく参考にしています」

 「1アプリ当たりのライフタイムバリューをいかに高めていくかということを基準にしながら、キャンペーンやイベント、広告出稿などの投資額を割り出している」(長谷川氏)

 「ゲームをリリースした後も、さまざまなデータを収集して観測しながら、適宜チューニングを施したり、イベントを打ったりしている」(森田氏)

 しかし同時に、こうしたチューニングはあくまでも副次的な要素であり、最も大事なのは、最初にユーザーに刺さるコンテンツを出すことだと森田氏はいう。これは、3氏に共通する意見だ。

 「確かに、ゲームを世に出した後の軌道修正の内容如何で、数字はかなり変わってくる。しかし、最も大事なのは初めに良いものを作って出すこと。実際のところ、出したゲームがヒットするかしないかは、公開後の6時間ぐらいの動向で大体分かる」(国光氏)

今後を占ううえで外せない「スマホ」と「海外」

 パネルディスカッションの後半は、ソーシャルゲーム業界の今後を占ううえで重要な2つのキーワード、「スマートフォン」と「海外」のテーマを中心に意見が交わされた。

 3氏とも、今後業界で勝ち残っていくためには、スマートフォン対応が重要な鍵を握るという点では意見が一致した。しかし、具体的な戦略についてとなると、三者三様でそれぞれ若干ニュアンスが異なる。森田氏は、スマートフォンへの対応は、既存のソーシャルゲームの愛好者とは異なるユーザー層を取り込むチャンスではないかと述べる。

 「これは個人的な意見だが、ゲーム専用機やPCで複雑なゲームをプレイしているコアな人たちの中には、携帯のソーシャルゲームはシンプルすぎて敬遠しているという層が存在するのではないか。そういう人たちを、スマートフォンのリッチなインターフェイスを生かしたゲームで取り込むチャンスがあると思っている」

 一方国光氏は、ユーザーに好まれるゲームの本質的な部分は、携帯向けのものもスマートフォン向けのものも、ほとんど変わらないのではないかと述べる。

gumi 代表取締役社長 国光宏尚氏「最近アメリカの方で、アニメのプロデューサーやローカライズやった人も、gumiに来てもらっている。特にアニメがそこそこ成功しているんで、わりとアニメでローカライズやっていた人っていうのは、すごく合うんじゃないかな、と。ローカライズ成功した人材も、国内の外人も積極採用していって、とにかく日本で成功したチームを全員連れて行く。そこで知ったノウハウで、また海外の人を雇っていってチームを作る」

 「ゲームの本質は、スマートフォンになってもさほど変わらないと思う。ただし表現力に関しては明らかに高くなるので、徹底的にこだわるべき。また、携帯と同じようにサクサク動くようにするための工夫も必要。そのためには当然、開発に投資する必要があるので、損益分岐点の見極めが重要になってくる」

 長谷川氏は、Webブラウザベースのアプリとネイティブアプリとでは、若干状況が異なるという。

 「Webブラウザベースのものに関しては、国光さんがおっしゃった通り、今まで携帯向けに提供してきたゲームをベースに、見た目のリッチさや動作の軽快感を重視して提供していくことになると思う。一方で、スマートフォン上でローカルに動作するネイティブアプリも軽視できない。私も松田さんと同じく、リッチなユーザー体験を求めるユーザー層があると思うし、今後データ通信の料金が一律従量課金制に変わっていくかもしれないことを考慮すると、ネイティブアプリをベースにしながら、それをソーシャル化していく選択肢が現実的なのかもしれない」

 また、スマートフォン対応とセットで語られることも多い海外展開について、森田氏は次のように述べる。

 「海外に出ていったとしても、今まで日本でやってきたように、ユーザーの嗜好(しこう)をしっかり理解して、喜んでもらえるものを提供していけばいいと思っている。例えば、海外のソーシャルゲームをプレイしてみると、正直つまらないと思うものが多いが、海外ではそうしたゲームが実際にウケているという現実を謙虚に受け止めて対応していくべき」

 長谷川氏も、これと同様の意見を述べる。

 「海外でウケるものが一番分かっているのは現地の人たちなので、やはり現地に進出して現地の人を雇わないと、本当のもの作りはできないと思う。ドリコムは多くの海外パートナー企業と提携しているが、近い将来には海外に自社オフィスを設立したいと考えている」

 一方、これとは意見を異にするのが国光氏だ。

 「海外のソーシャルゲームより、日本のものの方が明らかに面白いし、進んでいる。だから、われわれが海外に挑戦するのではなくて、逆に堂々と胸を張って『かかってきなさい!』ぐらいに思うべき。後は、海外市場に出ていく度胸があるかないか、それだけだと思う」

 この他にも、ここでは紹介しきれなかったさまざまなトピックについて、3氏による熱いディスカッションが繰り広げられた。また、パネルディスカッション終了後には、参加者全員が3氏に1問ずつ質問できる懇親会も開かれた。

 予想を超える盛況ぶりに、主催者のベンチャー・カフェでは第2回の開催も検討しているという。国光氏も、次のように述べる。

 「今回は時間が足りなくて、1億円アプリを作るための細かいノウハウまで踏み込めなかった。次回はぜひ、5時間ぶっ通しでやりたい!」

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筆者プロフィール
吉村 哲樹(よしむら てつき)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。
その後、外資系ソフトウェアベンダでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中


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