System Insider Interview

AMDのデュアルコア・プロセッサはユーザーに支持されるか?

デジタルアドバンテージ
2005/04/27
解説タイトル

 「System Insider Interview:デュアルコア・レースでAMDは勝利できるか?」に引き続き、AMDのプロセッサ戦略について話をうかがっている。

 日本時間4月19日(米国時間4月18日)、「デュアルコア・レース」は、あっけないエンディングを迎えた。Intelが計画を大幅に前倒しして、デュアルコアのPentiumエクストリーム・エディション 840(Pentium XE 840)と、そのプラットフォームであるIntel 955X Expressを発表した。これは、ライバルのAMDが日本時間4月22日(米国時間4月21日)に、ニューヨークで開催されるイベントでデュアルコア・プロセッサを発表する計画であることを見越した上での発表だった。従って、日数にすれば、Intelが3日早くデュアルコア・プロセッサを発表したわけだ。だが、Intelは本当にこのレースに勝利したのか? 後述するように、Intelの発表内容は疑問を孕むものだった。

 また、Intelにとってこのレースを制することは、何が何でも成し遂げなければならない至上命題だったようだが、このようなレースは、顧客であるシステム・ベンダや、エンド・ユーザーにとってはどうでもいいことであり、無益な争いにしか見えないのも事実だ。熱くなっているのは、悲しいことに当事者であるプロセッサ・ベンダだけなのだ。さらに、デュアルコア・テクノロジが、「プロセッサ・ベンダによるプロセッサ・ベンダのための技術」ではなく、顧客であるシステム・ベンダや、エンド・ユーザーのための技術なのだとすれば、プロセッサ・べンダは、サーバ、クライアントといったコンピューティング環境ごとに、デュアルコア・テクノロジがどのようなユーザー・メリットをもたらすのかを示していく必要があるはずだ。

 トランザクション処理、スレッド処理が集中するサーバ・コンピューティングについては、明らかにプロセッサを多重化するメリットはあり、すでにマルチプロセッサ・システムの需要がある。従って、デュアルコア・テクノロジがサーバ・システムの性能向上や、スケールダウン・メリット(これまでの8ウェイ・サーバと同等の性能を4ウェイ・サーバで実現できるなど)をもたらすであろうことは、比較的容易に想像できる。

日本AMD株式会社アジア・パシフィック
グローバルサポートサービス本部長小島洋一氏

 しかし、「クライアント・コンピューティングにおいて、デュアルコア・デクノロジがどのようなユーザー・メリットをもたらすのか」という問いに対する答えは、必ずしも明確ではない。HD(ハイビジョン)ビデオの処理などが例として挙げられるが、それは特定用途のワークステーションのメリットというべきだろう。クライアントPCにおいて、デュアルコア・テクノロジがどのようなユーザー・メリットをもたらすのか。その問いに対する答えは、これから見つけていかなければならない。そのような意味で、「デュアルコア・レース」は終わったのではなく、まさにこれから始まるともいえる。そのような点も含め、前回に続いて、日本AMD株式会社 アジア・パシフィック グローバルサポートサービス本部長の小島洋一氏にうかがった話を交えてまとめることにしたい。

デュアルコア・レースの呆れた結末

 前述のようにIntelは日本時間4月19日(米国時間4月18日)、同社初のデュアルコア・プロセッサとしてPentium XE 840と、そのためのプラットフォームとしてIntel 955X Expressを発表した。Pentium XE 840のコア・クロックは3.2GHz、FSBの動作クロックは800MHzで、2Mbytes(コア当たり1Mbytes)の2次キャッシュを搭載している。Pentium XE 840はEM64T(エクステンデッド・メモリ64テクノロジ)に対応しており、64bitメモリ・アドレッシングが可能だ。また、Hyper-Threadingテクノロジ(HTテクノロジ)に対応しており、2個のコアで、最大4つのスレッドを同時に処理できる。Pentium XE 840は90nmプロセスで製造され、2億3000万個のトランジスタを206mm2の長方形のダイに集積している。Pentium XE 840はLGA775パッケージで提供され、1000個ロット当たりの価格は999ドル(10万7,90円)。Intelによれば、Pentium XE 840とIntel 955X Expressを搭載したシステムを、Alienware、Dell、Velocity Microの3社が販売開始したという。

 Dell以外のベンダの名前はあまり聞き覚えがないが、これらは特別仕様のPCを販売するカスタムPCベンダのようだ。各社のWebサイトを見ると、確かにPentium XE 840とIntel 955X Expressを搭載したシステムの受注は始まっている。しかし、こうした緊急発表の場合、過去には出荷が遅れた例も多いので、本当にシステムが予定どおり出荷されるのか、事態をしっかり見届けたいところだ。Intelとしては、AMDに先んじてデュアルコア・プロセッサを発表し、今回の「デュアルコア・レース」の勝利を手にしたというところなのだろうが、この発表内容には違和感を覚えざるを得ない。そもそもIntelは需要の少ない(出荷量の少ない)ハイエンド向け製品であるPentium XEの発表だけを、意図的に前倒ししている。クライアント向けデュアルコア・プロセッサの主力商品であり、ある程度の需要が見込まれるPentium Dについては発表していない。今回の発表が「デュアルコア・レース」を制するために仕組まれた、「発表のための発表」だということをどうしても否定できない。Intelはリリース文中で、誇らしげに「コンピュータ業界にとって歴史的な日」と述べているが、果たしてそういえるのだろうか?

 一方のAMDは、日本時間4月22日(米国時間4月21日)にニューヨークで、「Opteronプロセッサ誕生2周年イベント」で、デュアルコアAMD Opteronを発表する計画だった。公式には「デュアルコアの発表は2005年中ごろ」としておき、この計画は極秘裏に進められていた。だが、多くのパートナー企業を招いて開催される、このようなイベントの計画が漏れないはずがない。イベントの前の週には、通信社が「AMDは21日のニューヨークのイベントでデュアルコアAMD Opteronを発表する」というニュースを配信し、複数のWebサイトにニュースが掲載され始めた。Intelはその直前に一部の記者を招いて、Pentium XEの性能を示すデモンストレーションを披露していた。その場で、ポール・オッテリーニ社長が記者の質問に答えて、「デュアルコアの発表は5月」と答えていたが、Intelはその段階ですでに、AMDが21日にデュアルコアAMD Opteronを発表するという情報を入手しており、Pentium XEの発表の前倒しを決定していたものと思われる。こうした駆け引きだけを見れば、今回はIntelの方が一枚上手だったということはいえるかもしれない。

 だが上記のように、Intelが発表したのは需要の少ないPentium XEであり、発表は「デュアルコア・レース」を制するために仕組まれたものと疑わざるを得ない。また、ダイ写真を見れば明らかなように、事前の予想どおり、発表されたPentium XEは単純にPentium 4のコアを2個つなぎ合わせただけの「間に合わせのデュアルコア」である(写真「Pentium XEのダイの写真」参照)。それでも構わない、というのがIntelの判断だったのだろう。2000年の「GHzレース」に続いて、今回もAMDの後塵(こうじん)を拝するわけにはいかない。「テクノロジ・リーダーシップ」を標ぼうするIntelとしては、どのような手段を使っても、AMDより先にデュアルコア・プロセッサを発表し、x86プロセッサとしては初のデュアルコアを提供したという勲章を手に入れなければならない。Intelにとって、それは至上命題だったのだろう。しかしこのようなつばぜり合いは、システム・ベンダやエンド・ユーザーを置き去りにしている。

 今回のレースの結末を振り返って、日本AMDの小島氏は、「どちらが先にデュアルコアを発表したとか、そういうことはあまり重要ではない。それよりも顧客であるシステム・ベンダが望む技術や製品なのか、そういうことの方が重要だと考えている。AMDは顧客であるシステム・ベンダとの協力関係の下で、2004年6月にデュアルコアのテープアウト、2004年8月にデュアルコアの動作デモなどを成し遂げ、デュアルコア・テクノロジでは先行してきた。単に先行してきたのではなく、顧客であるシステム・ベンダとの協力関係の下で先行してきたということが、重要な点だと考えている。AMD OpteronやAthlon 64などのAMD64シリーズは、当初からデュアル/マルチコア化することを想定して設計されている。どちらが本物のデュアルコアなのかということは、顧客が正しく判断してくれるだろう」と述べる。

AMDがデュアルコア・プロセッサを発表

 AMDはIntelの発表から3日遅れて、日本時間4月22日(米国時間4月21日)、デュアルコアAMD Opteronを発表した。だがすでに述べたように、この日の発表は予定されていたものだった。直前には、Intelがスケジュールを前倒ししてデュアルコア・プロセッサを発表するという情報が流れていたため、Intelの発表が先になるということを、AMDはもちろん知っていたはずだ。しかし、Intelという巨人を前に慌てるどころか、むしろ堂々と予定どおりに事を運んだ。日本時間4月22日に都内のホテルで開催された、デュアルコアAMD Opteronの発表会の会場には「パートナー・パビリオン」が併設され、多くのシステム・ベンダやソフトウェア・ベンダに支持されての発表であることを、来場者に強く印象付けた。たとえ発表が遅れたとしても、内容では負けないという自信の表れだろうか。この日発表されたデュアルコアAMD Opteronは、下表の6製品である。

製品名 コア・クロック 2次キャッシュ 価格(1000個ロット時)
2ウェイ・サーバ向け
デュアルコアAMD Opteronモデル265 1.8GHz 2Mbytes 9万3610円
デュアルコアAMD Opteronモデル270 2.0GHz 2Mbytes 11万5610円
デュアルコアAMD Opteronモデル275 2.2GHz 2Mbytes 14万2890円
4/8ウェイ・サーバ向け
デュアルコアAMD Opteronモデル865 1.8GHz 2Mbytes 16万6540円
デュアルコアAMD Opteronモデル870 2.0GHz 2Mbytes 23万6390円
デュアルコアAMD Opteronモデル875 2.2GHz 2Mbytes 29万1390円

 これら6製品は、システム・バス(HyperTransport)の動作クロック1GHz、消費電力95W、2Mbytes(コアあたり1Mbytes)の2次キャッシュを搭載し、940ピン・ソケットに対応する。また、製造プロセスは90nm SOIでダイ・サイズは199mm2、約2億3320万個のトランジスタを集積している。デュアルコアAMD Opteronのダイは、Pentium XEと比べてはるかに正方形に近く、生産効率がよいものと思われる(円形のウエハでは、正方形に近いダイの方が無駄なく取ることができるため)。

デュアルAMD Opteronのダイの写真
AMD Opteronでは長方形のダイであったが、デュアルコアAMD Opteronでは正方形に近くなった。これも、当初からデュアルコアを念頭に設計されていたということの証明といえるだろうか。
 
Pentium XEのダイの写真
Pentium XEは、Pentium 4をまるまる2つ並べたような長方形のダイとなっている。生産効率という点ではあまり望ましくない形状をしている。これも急いで設計を行ったことを示しているようだ。

 AMDによれば、デュアルコアAMD Opteronモデル275を搭載したシステムは、シングルコアのAMD Opteronモデル252を搭載したシステムに比べて70%高い性能を、シングルコアのAMD Opteronモデル248を搭載したシステムに比べて90%近く高い性能を示すという。デュアルコアAMD Opteronモデル800シリーズは、システム・ベンダに向けて即日量産出荷が開始され、200シリーズは5月末に量産出荷が開始されるという。また、800シリーズを搭載したシステムは30日以内に、200シリーズを搭載したシステムは6月から販売される見込みだという。それを裏付けるかのように、Hewlett-Packard(HP)はAMDの発表と同時に、デュアルコアAMD Opteronを搭載したサーバ・システムを発表したのも印象深い。AMDによれば、デュアルコアAMD Opteronを搭載したサーバ・システムやHPCは、Cray、Dawning Technologies、Egenera、HP、IBM、Sun Microsystems、Supermicro Computerといったシステム・ベンダから発表されるという(同日、HPは搭載予定サーバを発表している)。こうしたシステム・ベンダの顔ぶれだけを見ても、デュアルコアAMD Opteronの発表が顧客に支持されたというのは、決して誇張でないように思える。

デュアルコアAMD Opteronの性能
発表会でAMDが示したデュアルコアAMD Opteronの性能。モデル275は、シングルコアのモデル252に対して69%、同じ動作クロックのモデル248に対して87%の性能向上を実現しているという。

クライアントPC向けの「AMD Athlon 64 X2」も事実上発表

 同日、AMDはデュアルコアAMD Opteronとともに、クライアント向けのAthlon 64 X2デュアルコアも発表した。ただしAMDによれば、この日の発表は「Athlon 64 X2というクライアント向けプロセッサの新ブランド」の発表であり、正式な製品発表ではないという(AMDによれば、正式な製品発表と、システム・ベンダへの量産出荷は6月になるという)。とはいえ、すでにプロセッサのモデル名や基本的な仕様、価格が明らかにされていることからも、事実上、AMD Athlon 64 X2は発表されたと考えてもいいだろう。同日、発表されたAMD Athlon 64 X2は、以下の4製品だ。

製品名 コア・クロック 2次キャッシュ 価格(1000個ロット時)
AMD Athlon 64 X2モデル4200+ 2.2GHz 1Mbytes 5万9070円
AMD Athlon 64 X2モデル4400+ 2.2GHz 2Mbytes 6万3910円
AMD Athlon 64 X2モデル4600+ 2.4GHz 1Mbytes 8万8330円
AMD Athlon 64 X2モデル4800+ 2.4GHz 2Mbytes 11万110円

 モデル4200+/4400+のコア・クロックは2.2GHz、モデル4600+/4800+のコア・クロックは2.4GHz、2次キャッシュ・サイズはモデル4200+/4600+が1Mbytes(コア当たり512Kbytes)、モデル4400+/4800+が2Mbytes(コア当たり1Mbytes)となる。モデル4200+/4600+はダイ・サイズが147mm2、トランジスタ数が約1億5400万個、モデル4400+/4800+はダイ・サイズが199mm2、トランジスタ数が約2億3320万個となっている。このことから、モデル4200+/4600+がモデル4400+/4800+の2次キャッシュの半分を無効化したものではなく、ダイそのものが異なっていることが分かる。

 なぜAMDのクライアント向けデュアル・プロセッサが、たとえ「ブランド発表」だったとしても、この日に発表されなければならなかったのか、その理由を少し考えてみることにしたい。前回の記事でも報告したように、AMDはこれまで「まずサーバ向けプロセッサからデュアルコア化する」とし、「クライアント向けプロセッサのデュアルコア化は次の段階」と説明していた。本来なら「2005年後半」に発表されるはずだったクライアント向けのAMD Athlon 64 X2が、事実上、この日に発表された理由は、Intelが一歩先にクライアント向けのPentium XEプロセッサを発表したからだと考えるのが自然だ。圧倒的なシェアを武器にIntelが攻勢を仕掛けてきたわけで、AMDがそれに対抗せざるを得なかったということか。とはいえ筆者の本音をいえば、つまらないレースへのこだわりを捨ててほしかったという気もする。

デュアルコアAMD Opteronは顧客に強く支持されるか?

 話を元に戻そう。ほんの数年前、AMD製プロセッサがサーバに搭載されるということは考えられなかったが、現在、世界のトップ・サーバ・ベンダ3社(IBM、HP、Sun Microsystems)がAMD Opteronをサーバに採用している。しかもAMD Opteronは、かつての「互換プロセッサ」のようにピン互換で「価格の安い代替品」として、サーバ・ベンダに受け入れられたわけではない。サーバ・ベンダには、AMD Opteronを選ぶ積極的な理由があった。小島氏は以下のように説明する。

「AMD Opteronは、最初に科学技術計算などの高性能コンピュータの世界から受け入れられた。高性能コンピュータの世界では、価格対性能比よりも、絶対性能が要求される。そこで評価されたということは、AMD Opteronのダイレクトコネクト・アーキテクチャが提供する絶対性能が評価されたということだ。それに続いて、サーバ市場においても、AMD Opteronは価格が安いという理由ではなく、性能が優れているという理由で受け入れられた。加えて、低消費電力という点も、顧客がAMD Opteronを選ぶ大きな理由になった。1Uラックマウント型やブレードなど、サーバの薄型化の要求はますます大きくなっており、低消費電力という点でもAMD Opteronは優位に立っている」

 プロセッサの性能を武器にサーバ市場に打って出たAMD。それに対するIntelは、プロセッサの性能という話になるとどうも歯切れが悪い。そこで彼らが持ち出してくるのがプラットフォームの話だ。最近のIntelはやたらと「プラットフォーム指向を強化する」「プラットフォームレベルの取り組みを強化する」と述べ、プロセッサそのものではなく、プロセッサを含めたプラットフォームの優位性を強調する。一例を挙げれば、x86で初のクライアント向けデュアルコア・プロセッサとなったPentium XE 840にしても、Intelが強調するのは、プロセッサそのものよりも、Intel 955X Expressまで含めたプラットフォームの優位性だ。

 サーバ向けプロセッサについてもそれは同様で、Intelは自社のプラットフォームの優位性を述べることで、暗に主力チップセットをほかのベンダに頼っているAMD Opteronのプラットフォームの脆弱性を述べたいわけだ。いくら優秀なプロセッサがあってもプラットフォームが弱くては戦えない、というのは事実である。AMDはその点をどう考えているのだろうか。その問いに対して、小島氏は最初に「サーバ、クライアントを問わず、AMDのプラットフォーム戦略は基本的に従来と変わっていない。これまでと同様に、これからもサードパーティ製チップセットを主力プラットフォームとしていく。AMDからもチップセットは提供するが、それは新しいプロセッサ・アーキテクチャに基づくシステムの市場投入をスムーズに行うためにAMDが検証した基本プラットフォームである。チップセットの販売で利益を上げることは考えていない」と答えた。

 また、小島氏はそれに続けて「これからもサードパーティ製チップセットを主力プラットフォームとしていくが、性能面での不安はまったくない。なぜなら、AMD64プロセッサのダイレクトコネクト・アーキテクチャは、プロセッサにメモリ・コントローラを内蔵しており、HyperTransportと呼ばれるシステム・レベルのインターフェイスによって、I/Oコントローラをプロセッサに直結できることを特徴としている。すなわち、性能面の重要なキーテクノロジはAMDから提供されているからだ。サードパーティに対するサポートも十分に行なわれるため、公開されているHyperTransportの仕様に沿って、サードパーティは自由にチップセットをデザインすることができる。そこにおいて性能のロスは生じないように極力配慮されている」と答えた。実際のところ、AMDのプラットフォームのイメージが悪いのは、以前のサードパーティ製チップセットの品質にやや問題があったためで、AMDが基本プラットフォームを提供するようになってからは、そういう話はほとんど聞かなくなっている。もはや世界のトップ・サーバ・ベンダ3社がシステムをデザインしているわけだから、かつてほどそこに不安はないだろう。

AMDは仮想化技術などにはどのように対応するのか?

 現在のサーバ・システムにおいては、コスト削減やセキュリティなどの理由から仮想化技術がトレンドとなっている。Intelは、VT(Intel Virtualization Technology、これまでは開発コード名でVanderpoolと呼ばれていた)というハードウェアによる支援を含む仮想化技術などもサーバ・プラットフォームとして提供する予定だ。これに対するAMDの回答が、2005年3月に発表された仮想化技術のPacifica(開発コード名:パシフィカ)だ。だがPacificaの詳細については、現時点では多くを語れないという。現時点でいえるのは、プロセッサ(ハードウェア)とOSの間で、複数OSの動作を監視する仮想マシン・モニタ・ソフトウェアを、マイクロソフトやVMwareといったパートナー企業との共同作業により、提供するということだけだという。Intelの仮想化技術と互換性を持つかどうかは不明だが、IntelとAMDが公開している情報を見る限り、大きく変わらないものになりそうだ。両社とも、仮想マシン・ソフトウェア・ベンダ(MicrosoftVMwareXenSource)と、仮想化技術について話し合いを行っているとしており、これら仮想マシン・ソフトウェア・ベンダを介して機能の互換性が実現している可能性も否定できない。この仮想化技術など、デュアルコアの先にあるテクノロジも含め、現在、AMDが最も力を入れているのはサーバ向けのプロセッサであり、AMDが「サーバ向けプロセッサからデュアルコア化する」としていたのも、そう考えれば納得できる。

 一方、Intelのサーバ向けプロセッサのデュアルコア化は、2005年第4四半期に予定されているデュアルコア版Itanium 2(開発コード名:Montecito)、2006年第1四半期に予定されているデュアルコア版Intel Xeon/Xeon MPまで待たなくてはならない。Intelは、クライアント向けプロセッサからデュアルコア化することを選択したが、サーバ向けプロセッサのデュアルコア化では遅れたことになる。その意味では、Intelも厳しい戦いを強いられそうだ。小島氏は「AMD Opteronは引き続き顧客からの強い支持を得るだろう」と自信を見せ、以下のように締めくくった。

「AMD Opteronは、第一にダイレクトコネクト・アーキテクチャが提供する優れた性能とスケーラビリティによって顧客に支持されたが、それだけでなく、将来へのマイグレーション・パス、すなわち将来のテクノロジへのスムーズな移行を可能にしたという点でも、顧客に支持されてきたと考えている。すなわち、64bit環境へのスムーズな移行を可能にしたという点、デュアルコアへのスムーズな移行を可能にしたという点において、顧客に支持されてきたと認識している。AMD Opteron搭載システムは、BIOSのアップデートだけでデュアルコアに対応することができる。デュアルコア専用のチップセットを必要とする他社のデュアルコア・テクノロジとは、その点で大きく異なる。今回の発表によりAMD Opteronは、サーバ向けx86プロセッサとして初めてのデュアルコア製品となったが、これによってAMD Opteronに対する需要はさらに増すと考えている。AMDのデュアルコア・テクノロジは、これまでも顧客にしっかりと支持されてきたし、今後もデュアルコアAMD Opteronは顧客から支持されるだろう」

 AMDはことあるごとに「選択するのは顧客だ」ということを述べる。それは正しい競争原理を示しているといえる。冒頭で述べた「デュアルコア・レース」の呆れた結末はさておき、小島氏が語るように、本当の勝者は顧客が選んでいくのだろう。その意味で、これからが本当のレースの始まりだ。AMDやIntelといったプロセッサ・ベンダには、顧客サイドに立って技術開発、製品開発を続けてほしいと願う。また、AMDについていえば、デュアルコアAMD Opteronのサーバ市場におけるシェア獲得、およびデュアルコア・テクノロジにとどまらないサーバ市場への取り組みには、今後も注目していく必要があると思われる。特にHPやSun Microsystemsといった米国のサーバ・ベンダによる積極的な採用が目立つ中で、今後、NECや富士通を始めとする国内サーバ・ベンダによるAMD製プロセッサの採用が増えるかどうかは、注目していく必要があると思われる。記事の終わり

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デュアルコア・レースでAMDは勝利できるか?
AMDとIntelはなぜデュアルコア化を急ぐのか?
AMDはサーバ向けデュアルコア・プロセッサでIntelに先行できるか?
IDF Spring 2005から読み解くIntelのプロセッサ戦略

  関連リンク 
Virtual Server 2005の情報ページ
VMwareのホームページ
XenSourceのホームページ
 
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