プロセッサ会社からの脱皮を図る「Intel」

第4回 なぜインテルはホスティング事業を行うのか?
――低迷するホスティング業界で着実に顧客を確保するインテルの秘密 ――

2. ホスティング事業成功の秘けつは?

デジタルアドバンテージ
2002/05/18


どの程度の可用性を保証しているのか?

−−AppChoiceマネージド・ホスティング・サービスでは、ソフトウェアまで含めて管理しているということですが、可用性の保証というのはどのようなものになるのでしょうか?

町田:顧客との間でSLA(Service Level Agreement:品質保証制度)で契約を行っています。基本的にIOSで提供しているSLAの大枠は1つしかありません。ただ、顧客によっては、トランザクションが多くて頻度を上げてモニタリングしなければならないとか、アプリケーションによっては頻度を上げてモニタリングした方がいいといった場合は、顧客の仕様に合わせて対応を行います。といっても、現在IOSが提供しているSLAがかなり厳密に規定していますので、多くの顧客は基本のSLAでカバーできます。これはIOSが、SLAを状況や経験などを踏まえて、フィードバックし続けているからです。顧客が増えていく中で、いろいろな要望に対応していくことで、障害対応システムなども良くなっていますし、それをフィードバックしてSLAもさらに高度なものとなってきています。

−−BtoCで24時間365日かなりシビアな環境で運営している顧客と、単に情報サービスを行いたいという顧客とで、要求レベルにかなり差があると思います。単に情報提供だけの人にはコスト的に高くなってしまうということになりませんか?

町田:単なる情報サービスの場合でも、システムは常にオンになっている状況をつくらないとならないわけです。そこでIOSでは、Webサーバだけでもよいという場合でも2台で冗長化させます。しかし、ダウンタイムにおけるダメージというのは、eビジネスの種類によって違ってくるのも確かです。ここに金融系やメディア系、リテール系、運送系といった業種によるダウンタイムの損害という調査がありますが、これによると航空券の予約システムが1時間落ちると8万9500ドル、金融系の仲介業務では650万ドルの被害があるということです。このようにシステムのダウンタイムによる損害は異なりますので、IOSが提供する基本のSLAは1つですが、そのうえに顧客に合ったサービス・レベルを提供するという考え方でいます。

業種 業務 ダウンタイム1時間当たりの平均損害額
金融 仲介業務
650万ドル
金融 クレジット・カード/販売許可
260万ドル
メディア ペイ・パー・ビュー・テレビ
110万ドル
リテール ホーム・ショッピング(テレビ)
11万3000ドル
リテール カタログ販売
90万ドル
運送 航空券予約
8万9500ドル
ダウンタイムによる平均損害額
出典:IBM Global Services/High Availability Services

−−IOSではどのようなサーバ構成が多いのでしょうか?

町田:顧客によって大きく異なります。IOSのホームページで公開している導入事例を見ていただくと分かりやすいかもしれません(インテルの「IOSの日本国内の導入事例紹介ページ」)。例えば、不動産業大手の東急リバブルですが、Webサーバを2台でミラーリングして、データベース・サーバをバックエンドに置くという構成を採用しています。物件情報は夜間バッチで本社の物件情報管理システムから転送しています。

東急リバブルのネットワーク構成
図のようにメインのWebサーバをIOSで管理している。社内では物件データを管理するサーバが置かれており、ここから夜間にバッチでIOSに置かれたサーバにデータを転送しているという。

−−提供しているネットワーク・サービスの帯域メニューにはどのような種類があるのでしょうか?

町田:1.5Mbits/sの固定のほか、IOSでは「バースタブル」というネットワークの帯域契約があります。2Mbits/sの基本料金で、一時的に10Mbits/sまで使用できるというものです。上位のサービスでは、10Mbits/sの基本料金で50Mbits/sというものもあります。これにより、テレビ・コマーシャルなどによって、一時的にサイトへのアクセスが増えてもネットワークの帯域が足りずにタイムアウトが発生するという事態を防ぐことができます。普段は利用しない帯域のために、多くのお金を払う必要がないので、非常に好評です。

−−2001年11月に発表した「オープン・コントロール・テクノロジ」というのはどういったものですか?

町田:「カスタマ・ポッド」と呼ぶ一種のアプライアンスをIOSや顧客のデータセンター、他社の施設に置かれたネットワークに接続することで、IOSの管理者やSI、顧客がサーバなどを管理・運用できるようにする技術です。カスタマ・ポッドを使うことで、セキュリティを確保した状態で、外部からデータセンター内のサーバやネットワーク機器の状態を把握したり、事前に定義したルールに基づいた制御を行えたりします。そのため、顧客のデータセンター内にカスタマ・ポッドを置くことで、管理・運用をIOSやSIにアウトソーシングすることも可能です。

大きな図へ
オープン・コントロールのシステム構成
図のように制御したネットワーク内にカスタバ・ポット(コントローラ)を設置することで、サーバやネットワーク機器の制御が可能になる。インターネットを介して外部からも制御できるようになるため、自社内のデータセンターの管理をSIなどにアウトソーシングすることも可能になる。
 
他社との差別化ポイントは?

−−Exodus Communicationsが2001年9月末に米連邦破産法11条の適用を申請したり、Dell Computerが米国で行っていたホスティング・サービス事業を売却したりと、ホスティング・サービスは厳しい局面に入ったといわれていますが、IOSの業績はいかがでしょうか?

町田:具体的な売上金額などは公表していませんが、非常に順調です。実際にIOSでは、前年比200%の成長を示しました。アメリカン証券取引所(American Stock Exchange)やファイザー製薬(Pfizer)、eBayといったところもIOSの顧客です。日本では、米国よりもさらに高い成長を見せています。

−−他社のホスティング・サービスとの違いはどこにあるのでしょうか?

町田:IOSは単なるラック貸し、ネットワーク貸しではなく、管理まで含めたサービスであるということです。現在のホスティング・サービスの動向を見ていきますと、場所貸しのコロケーション・サービスからサーバの管理・運用まで行うマネージド・サービス、インテグレーション・サービスまで行うフルマネージド・サービスといったように、各社とも上へ上へとサービスを展開していく傾向にあります。インテルは、付加価値の高い先進的なサービス、および製品を投入することにより市場をけん引し、より高度に成長させることをミッションとしています。IOSは、他社に先んじてマネージド・サービスを提供しましたが、次はSIとの協業によってフルマネージド・サービスの提供を考えています。常に他社の一歩先のサービスを提供するというのが違いといえるかもしれません。

大きな図へ
AppChoiceの次の戦略
マネージド・サービスのAppChoiceは図のように着実に新しいサービスへと進化している。現在、アプリケーションを含めたマネージド・サービスの提供を行っているが、次はオープン・コントロール・テクノロジを用いた新しい形のサービスを提供するとしている。

−−そのほか成功している秘けつというのは何があるのでしょうか?

町田:技術革新だと思います。Intelは、全世界を合計すると毎月約20億ドルのビジネスをオンラインで行っています。その中で培われたファイアウォールやセキュリティ、アプリケーション管理などの技術をIOSに持ち込むことで、コスト効率の高いサービスを提供しています。常に技術革新を持ち込むことで、マネージド・サービスという形に具体化させているという点が、ほかの場所貸しやネットワーク貸しのホスティング・サービスに対抗する大きな付加価値になっています。オープン・コントロール・テクノロジといった新しいサービスが提供できるのも、インテルの強みといえるでしょう。これが成功の秘けつといえるでしょう。

 当初は、「インターネットのビルディング・ブロック・サプライヤ」という位置付けで始まったIOSだが、「半導体を中心としたコア・コンピテンスに事業を集中する」という流れの中でどのように事業を展開していくのか気になっていた。しかし、インタビューの中でも語られているように、IOSを半導体事業にフィードバックするための「検証機関」として位置付けることで、より積極的にサービスを進めていくことが確認できた。こうした柔軟性や戦略転換のスピードが、Intelの強みなのかもしれない。記事の終わり

  関連リンク 
IOSの日本国内の導入事例紹介ページ
インテル・オープン・コントロール・テクノロジに関するニュースリリース
 
 
 
 INDEX
  プロセッサ会社からの脱皮を図る「Intel」
  第4回 なぜインテルはホスティング事業を行うのか?
    1. インテルにおけるホスティング事業の位置付け
  2. ホスティング事業成功の秘けつは?
 
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