解説

Itanium 2はバックエンド・サーバ市場を切り崩せるか?
――垂直統合型ソリューションに挑むIntel――

1. エコシステムの構築がIPF成功のカギ?

デジタルアドバンテージ
2002/07/18

解説タイトル


 2002年7月9日、インテルはItaniumプロセッサ・ファミリ(IPF)の第2世代製品「Itanium 2」の量産出荷を開始した(インテルの「Itanium 2の量産出荷に関するニュースリリース」)。同日、日本HPと日本電気、日立製作所の3社がItanium 2搭載サーバを発表し、IBMとSGIがItanium 2のサポートを表明している。Itanium 2は、初代Itaniumに対しては1.5〜2倍、またバックエンド・サーバ市場で直接のライバルとなるSun Microsystemsのプロセッサ「UltraSPARC III-1050MHz」に対しても1.5倍以上の性能を持つという(Intelの「Itanium 2の性能について」)。Itanium 2の詳細については、「元麻布春男の焦点:明らかになるItanium 2の性能とプラットフォーム」を参照していただきたい。

Itanium 2(左)と初代Itanium(右)
3次キャッシュがプロセッサ・ダイに同梱されたItanium 2では、初代Itaniumとパッケージが異なっている。

 Itaniumの登場から1年が経ち、次第にアプリケーションが揃ってきたことから、そろそろIPFシステムも本格的な市場投入の時期に入る。ところが2001年末のインターネット・バブル崩壊により、IPFシステムがターゲットとする大規模システムの受注自体が減少している。こうした状況下で、Intelと各システム・ベンダがどのようにIPFシステムを立ち上げていくのか、その戦略ならびに懸念される材料について見ていこう。

エコシステムに賭けるIntel

 Itanium 2の発表会でスピーチを行ったIntelのエンタープライズプラットフォーム事業本部マーケティング ディレクターのリチャード・ドラコット(Richard Dracott)氏は、「水平分業型マーケット・モデルによる、垂直統合型ソリューションへの導入を推進する」と述べている。Intelでは、水平分業のマーケット・モデルを「エコシステム」とも呼んでいるが、要するにプロセッサ、システム・ハードウェア、OS、ミドルウェア、アプリケーション、サービスの各階層を分業/協業体制によって各ベンダで分担することでマーケットを拡大していこうというマーケット・モデルだ。Intelが、クライアントPCやPCサーバにおいて実践してきたマーケット・モデルでもある。プロセッサをIntel、システム・ハードウェアをデルコンピュータや日本電気などのサーバ・ベンダ、OSをマイクロソフトや各ベンダのUNIX、といった具合に各階層間で連係を行いながら、階層の中では競争が行われることになる。エコシステムのメリットは、こうした競争によって、性能/機能の向上と低価格化が実現されることだ。また、複数のベンダによってサポートされるため、1社が倒産もしくは事業撤退を行っても代替のベンダが必ず存在することになる。ユーザー企業としては、そのときどきで最適な製品が選択できるうえ、リスク分散も可能になるわけだ。Intelは、IPFについてもこのモデルを活用することで、システムの普及を図るつもりでいる。

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エコシステムの構築
IPFによって、「水平分業型マーケット・モデルによる、垂直統合型ソリューションへの導入を推進する」としている。水平分業型マーケット・モデルとは、図のように各階層で多くのベンダ同士が競争することによって市場を盛り上げるものである。

 一方の垂直統合型ソリューションとは、プロセッサからシステム、OS、ミドルウェア、システム・インテグレーションまでを1社で提供するメインフレームやRISC/UNIXサーバが採用しているものだ。1社で提供しているため、障害発生時に責任の所在が明らかであり、信頼性を保証する体制を構築しやすい。そのため、IPFシステムがターゲットとするバックエンド・サーバ市場では、「垂直統合型ソリューション」が好まれる傾向にある。

 IPFシステムは、この垂直統合型ソリューションの市場を切り崩し、PCサーバと同様、エコシステムに移行させていかなければならない。逆にいえば、バックエンド・サーバ市場がエコシステムに移行できれば、IPFシステムは大きな成功を得られるはずだ。

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IPFのロードマップ
Intelは、Itanium 2以降、Madison(開発コード名:マディソン)、Montecito(開発コード名:モンテシト)まで共通のプラットフォームが利用できることを約束している。また、マルチ・コアやマルチ・スレッディング機能をサポートしたIPFも開発中であるという。

サーバ・ベンダの思惑とIPFの位置付け

 だが、今回Itanium 2搭載サーバの出荷を発表したベンダの顔ぶれを見ると、IPFシステムにおいてエコシステムがうまく働くか疑問を感じる。以下、各ベンダのIPFシステムに対する思惑を分析していこう。

■IPFで合併問題を解決したいHewlett-Packard
 2002年5月に、Compaq Computerと合併したHewlett-Packard(HP)は、IntelとIPFのアーキテクチャを共同開発した会社でもある。にもかかわらず、初代Itaniumのときは、それほど熱心にItanium搭載サーバを販売することはなかった。これは、初代Itaniumの性能が、同社のRISCサーバ/ワークステーションのプロセッサであるPA-RISCを置き換えるには不十分だったためだ。しかし同社は、Itanium 2では姿勢を一変させ、独自チップセット「zx1」を開発し、ワークステーションから4ウェイのサーバまでラインアップした。zx1は、AGPをサポートした、Itanium 2対応のワークステーション向けとしては現時点で唯一のチップセットである(すでに公表されているIntelのE8870チップセットはサーバ向けのため、AGPに対応していない)。

 こうした積極的な姿勢へ変化したのは、もちろんItanium 2がHPにとって魅力的な性能を持つようになったこともあるだろう。しかし、Compaqとの合併も無縁ではないはずだ。HPはCompaqとの合併によって、自社のPA-RISCのほか、Alpha、MIPS(NonStop Himalayaで採用)と、Intelアーキテクチャ以外にも多くのプロセッサ・ラインを抱えてしまった。CompaqはHPとの合併発表前に、これらのプロセッサ・ラインをIPFに置き換えていくことを表明していた。もちろん、HPとCompaqの合併によって、AlphaやMIPSをPA-RISCへと置き換えていくという戦略もあり得ただろうが、HP自身もPA-RISCとIPFとの統合を発表しており、2004年ごろにはPA-RISCからIPFへの完全な移行が行われる予定であった。

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HPのIPFシステムのロードマップ
2004年にはPA-RISCからIPFへの移行が完了する。そのときには、フルラインアップでIPFのサポートが行われることになる。

 こうしたIPFへの統合という戦略は、価格競争力を維持するためには、莫大なプロセッサへの投資が必要になり、それを1社で確保するのは難しくなっていることに起因する。つまり、新生HPにとって、IPFこそが複数のプロセッサ・ラインを統合でき、プロセッサに対する投資を圧縮できる唯一のソリューションなのである。PA-RISC搭載サーバで確保している市場をテコに、IPF搭載システムを先行させることで、バックエンド・サーバやハイエンド・ワークステーション市場で大きなシェアを奪おうということだろう。

 次ページでは、日本電気やIBM、Dell ComputerなどのIPFに対する取り組みについて見ていこう。

  関連記事 
明らかになるItanium 2の性能とプラットフォーム

  関連リンク 
Itanium 2の量産出荷に関するニュースリリース
Itanium 2の性能について英語
 

 INDEX
  Itanium 2はバックエンド・サーバ市場を切り崩せるか?
  1.エコシステムの構築がIPF成功のカギ?
    2.各ベンダの思惑とIntelの期待
 
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