解説

Intel Xeon搭載サーバの工夫を検証する
――「Express5800/120Me」に見る最新ワークグループ・サーバのハードウェア――

3. 高密度実装で標準規格対応のマザーボード

デジタルアドバンテージ
2002/08/28

解説タイトル


 次は、サーバの中核といえるマザーボードを見てみよう。本機に搭載されているマザーボードは、サーバのフォーム・ファクタ標準規格「SSI(Server System Infrastructure)」に含まれる「SSI Specifications for Entry Server Rev.3.0」に対応したものだ(SSI initiativeのホームページ)。IAサーバで国内最大手の日本電気がこうした標準規格を採用しているということは、少なくともワークグループ・サーバにおいて、こうした標準規格がベンダ独自の仕様に取って代わっていくことを暗示しているように思える。

大型で密度の高いマザーボード (拡大表示:94Kbytes)
主要な機能はマザーボードに集約されており、RAIDを必要としない限り、特に拡張カードを必要としない。それゆえ、330×288mmという大型の割にマザーボードの部品実装密度は高い。
  最大2基まで搭載可能なIntel Xeonプロセッサ
 評価機には2.4GHz駆動のIntel Xeonが2基、搭載されていた。写真はヒートシンクを取り外したところ。なお、BIOSセットアップの初期設定では、「Hyper-Threading Technology」は無効になっていた。
  最大6枚のDIMMを装着可能なメモリ・ソケット
 同容量のPC1600 ECC Registered DIMMを2枚単位で装着する。最大容量は6Gbytes。なお、つい最近になってBIOSアップデートにより、メモリ・エラー発生時に不良のメモリ・モジュールを正常な予備のメモリ・モジュールで代替するオンライン・スペア・メモリ機能が利用できるようになった。
  標準装備のSCSIホスト・コントローラ
 Adaptec製のAIC-7899Wという、Ultra160 SCSI×2チャネル対応としては非常にポピュラーなコントローラが搭載されている。マークのすぐ下にある2つの細長い黒色の部品がSCSIコネクタだ。2チャネルあることで、片方は内蔵デバイスに、もう一方は外付けデバイスに接続する、といった使い分けができる。
  合計6本のPCIスロット→
  システム管理用コントローラ「BMC」→
  サーバ専用チップセット「GrandChampion LE」→
  2個のイーサネット・コントローラ→
 
合計6本のPCIスロット
このクラスのサーバとして、拡張スロットが6本というのは少なく思えるかもしれない。しかしマザーボード上に多数のI/Oデバイスが標準装備されていることを考慮すると、十分なスロット数といえるだろう。PCIバスは3系統あり、がそれぞれ別々の系統に接続されている。なお、に見えるホコリ防止のコネクタ・カバーは、全スロットにも装着されていた。
  64bit PCI-Xスロット
 最大100MHzのバス・クロック周波数に対応しており、帯域幅は最大800Mbytes/sである。多チャネルのRAIDコントローラなど、高速なデータ転送を必要とする拡張カード向けのスロットだ。実際、評価機ではRAIDコントローラがここに装着されていた。
  32bit/33MHz PCIスロット
 高速性を必要としないPCIカードを装着するためのスロット。帯域幅は最大133Mbytes/s。のスロットには、広く流通している5V対応のPCIカードが装着できないが、このスロットには装着できる。つまりこのスロットには、5V対応カードとの互換性を維持する役割もある。
  64bit/66MHz PCIスロット
 これはPCI-Xではなく、従来のPCIに対応したスロット。帯域幅は最大533Mbytes/s。このバスを制御するコントローラはPCI-X対応だが、同一バスに64bit/66MHz PCI対応のSCSIコントローラ(AIC-7899W)が接続されているため、このスロットも64bit/66MHz PCIまでのサポートに制限されている。PCIやPCI-Xでは、単一バス上で最も対応バス・クロック周波数の低いデバイスに合わせて、実際のバス・クロック周波数が設定されるからだ。とはいえ、従来に比べると、スロットごとでも拡張バス全体でも、帯域幅は向上している。
 
システム管理用コントローラ「BMC(Baseboard Management Controller)」
組み込み向けプロセッサで知られるARMプロセッサを内蔵するシステム管理用コントローラ。このコントローラは、システムにとって非常に重大なハードウェア・エラーを常時監視して、OSなどに通知する役割を持っている。具体的には、電源ユニットからの供給電圧や冷却ファンの回転数、プロセッサを含む各種パーツの温度、SCSIターミネータの電源電圧などが挙げられる。たとえ本体の電源がオフでも、コンセントからの電源コードが電源ユニットに接続されているかぎり、BMCには電力が供給され、監視が継続される。つまりBMCは、OSなど上位ソフトウェアとは独立した管理システムを司っているわけだ。
 
サーバ専用チップセット「GrandChampion LE」
これはServerWorks(Broadcomのサーバ・チップセット部門)によるIntel Xeon対応チップセット。左がCMIC-LE(Champion Memory and I/O Controller)と呼ばれるチップで、主にプロセッサ・バスとメイン・メモリを制御している。最大2基のプロセッサと100MHz×2倍クロックのDDR SDRAMをサポートする。右はCSB5(Champion South Bridge 5)と呼ばれるチップで、IDEやUSBなど各種I/Oデバイスが集積されたサウスブリッジの役割を担っている。このほかに、主にPCIバスを制御する(CIOB-X2)Champion I/O Bridgeも装備されている。
 
2個のイーサネット・コントローラ
このようにマザーボード上には、2基のイーサネット・コントローラが標準装備されている。は広帯域の高速通信用、はインターネット接続など低速回線向け、およびシステム管理用やバックアップ回線として、それぞれ利用される。
  10/100/1000BASE-T対応の「82544GC」
 82544GCはIntel製のギガビット・イーサネット・コントローラだ。1チップにPHY(物理層)の機能まで内蔵し、かつ小型パッケージを採用することで省スペースを実現している。高密度サーバや小型ケースのサーバ向けの製品と位置付けられている。本機には、64bit/100MHz PCI-Xという十分に高速なバスで接続されている。
  10/100BASE-TX対応の「82550PM」
 これもIntel製のイーサネット・コントローラだ。やはりPHYを内蔵しているほか、IPSecもサポートしている。なお、イーサネットを介したリモート監視/制御には、このコントローラが利用される。

 従来のPentium III/Pentium III Xeon(2プロセッサ版)搭載サーバに比べると、プロセッサとチップセット以外にも、さまざまな変化が見受けられる。1つは、メイン・メモリがSDRAMから、より高速なDDR SDRAMに移行している点だ。また拡張スロットには従来のPCIに対して、高速なPCI-Xが追加されている。イーサネットは、ギガビット対応が標準になってきた。このように、I/Oにおいてもプロセッサと同様に高速化が進んでいることが分かる。

 次のページでは、SCSI RAIDコントローラやリモート管理機能など、サーバの付加機能をチェックし、さらにワークグループ・サーバの選択について考察してみる。

  関連リンク 
Express5800/120Meの製品情報ページ
サーバ関連のフォーム・ファクタを規定している団体
GrandChampion LEの製品情報ページ
82544GCの製品情報ページ
82550の製品情報ページ
 
 

 INDEX
  Intel Xeon搭載サーバの工夫を検証する
    1.やや大きめだがメンテナンスのしやすいケース
    2.工夫が見られる冷却ファンでの排熱の仕組み
  3.高密度実装で標準規格対応のマザーボード
    4.Intel Xeonサーバか、Pentium III-Sサーバか?
 
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