解説

IDF Fall 2002 Japanレポート
「融合」の先にあるIntelの展望

1. Intelが描く「融合」の世界とは?


デジタルアドバンテージ
2002/10/30

解説タイトル


 10月22日〜24日の3日間にわたって都内ホテルでインテルの開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum Fall 2002 Japan(IDF Fall 2002 Japan)」が開催された(インテルの「IDF Japanに関する情報ページ」)。IDFは、基調講演と技術トラック、デモショーケース(展示会)で構成されており、Intel本社などから多くの技術者が来日して講演やデモなどを行うイベントとなっている。

 基調講演は、2日目にインテルのジョン・アントン(John Antone)代表取締役社長の挨拶から始まった。基調講演の冒頭、「Intel is computing company, or communication company?」「Yes.」というビデオが流された。これは、今回のテーマの1つでもある「コンピューティングと通信の融合」をIntelが推進していくことをアピールするもの。今回の基調講演では、「Convergence(集中、融合)」がキーワードになっており、「コンピューティングと通信の融合」のほか、家庭向けとしては「コンピューティングとAV機器との融合」などがテーマとなっていた。

 ここでは、IDF Fall 2002 Japanで提示されたIntelの展望や製品情報などについて紹介しよう。

コンピューティングと通信の融合で生まれるもの

Banias搭載ノートPCを持つゲルシンガー氏
Banias搭載ノートPCの無線LAN機能について説明を受けるパトリック・P・ゲルシンガー(Patrick P. Gelsinger)CTO(左)。

 最初の基調講演は、Intel副社長 兼 CTO(最高技術責任者)のパトリック・P・ゲルシンガー(Patrick P. Gelsinger)氏が「コンピューティングと通信の融合を加速するシリコン技術」について行った。内容は、9月9日〜12日に米国カリフォルニア州サンノゼで開催されたIDF Fall 2002に沿ったもの。

 ゲルシンガー氏は、現在Intelの研究開発をCTOとして統括しており、Intelが目指す方向を決める重要な立場にいる。同氏によれば、シリコン技術によってコンピューティングと通信の融合が可能になり、いつでもどこでもコンピュータはネットワークに接続された状態になるという。また、これまでは関係が薄かった伝統的な通信分野においても、ネットワークのIP化などによってコンピューティング能力が求められるようになってくると述べている。さらに、将来的にはすべてのチップに通信技術が統合され、自動的かつ自律的にネットワークが構築される時代がやってくると予想している。

 また「融合」後は、さらなるセキュリティ強化が必要であり、そのためにはハードウェアによる実装が不可欠であるとも述べた。Intelでは、開発コード名で「LaGrande(ラグランデ)」と呼ぶセキュリティ関連技術を開発中であり、プロセッサならびにチップセットの拡張によりハードウェア・レベルでのセキュリティ対応を行うという。LaGrande技術により、メモリやストレージだけでなく、実行中のプログラムに対してもセキュリティの保護が可能となる。LaGrande技術は、2〜3年後の実用化を目指して、ソフトウェア・ベンダやPCベンダ、OSベンダとの話し合いを現在行っているという。

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LaGrande技術の背景
LaGrande技術には、プロセッサおよびチップセットの拡張が必要であると述べられている。

サーバとネットワークの将来

マイケル・J・フィスター氏とアンソニー・アンブロース氏
右がマイケル・J・フィスター(Michael J. Fister)上席副社長 兼 エンタープライズ・プラットフォーム事業本部長、左がアンソニー・アンブロース(Anthony Ambrose)コミュニケーションズ事業本部マーケティング・ディレクタ。サーバならびにネットワークの将来について講演した。

 ゲルシンガー氏に続いて、マイケル・J・フィスター(Michael J. Fister)上席副社長 兼 エンタープライズ・プラットフォーム事業本部長とアンソニー・アンブロース(Anthony Ambrose)コミュニケーションズ事業本部マーケティング・ディレクタの2人が「エンタープライズ・インフラストラクチャのモジュール化」と題して、サーバならびにネットワークの将来について講演を行った。

 世界的に景気が低迷する中でも、インターネットのトラフィックは急速に拡大しており、それを処理するためにはネットワークとサーバの拡張が必須であるとしている。例として、Intel社内の1日当たりの電子メール数を挙げ、2000年初頭は300万件であったのが、2001年初頭には400万件を超え、さらに伸びていることを示した。こうしたトラフィックを滞りなく処理するために、IntelではクライアントPCのギガビット・イーサネット対応や、メトロネットワーク(都市内ネットワーク)から企業内LANの10ギガビット・イーサネット化を推し進めると述べている。

 
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Intel社内の電子メールのトラフィック
1日当たりの電子メール量は確実に増えており、これらを処理するためにはネットワークとサーバの強化が不可欠になっているという。
 
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ギガビット・イーサネットへの移行状況
2003年には、ギガビット・イーサネットの出荷量が大幅に伸び、10/100BASE-TXとほぼ肩を並べるまでになるという。

 クライアントPCのギガビット・イーサネット対応としては、デスクトップPCでは積極的にギガビット・イーサネット対応を推進していくことと、ノートPC向けにもギガビット・イーサネット・コントローラを投入していくことを明らかにした。10ギガビット・イーサネットについては、マルチモード光ファイバ対応の小型トランシーバや可変長レーザーの開発によって低価格化を実現し、企業内の基幹ネットワークなどにまで適用可能にしたいと述べた。なお、将来におけるクライアントPCの10ギガビット・イーサネット対応については、既存のカテゴリ5による銅線ではなく、光ファイバが主流になると見ているようだ。

 一方のサーバ分野においては、ロードマップのとおり、2003年にItaniumプロセッサ・ファミリに開発コード名「Madison(マディソン)」で呼ばれるプロセッサを追加するという。基調講演では、日本電気のItanium 2搭載サーバ「TX7」を使ったデモを行い、Itanium 2の性能の高さをアピールした。また、Itanium 2搭載モジュールとMadison搭載モジュールを通電状態で交換し、自動的にOSまでを起動させるというデモも行った。なお、MadisonとItanium 2はピン互換となり、同じプラットフォームが利用可能であることが公表されている。

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Itaniumプロセッサ・ファミリのロードマップ
2003年に発表予定の開発コード名「Madison(マディソン)」で呼ばれるプロセッサは、「Itanium 2」のブランドで販売されることが示されている。

 基調講演の前日に開催された記者説明会の会場において、フィスター氏にモジュラー・コンピューティングに関していくつか質問を行った(モジュラー・コンピューティングについては、「マンスリー・レポート:N1とモジュラー・コンピューティングで情報システムが変わる?」を参照のこと)。その内容についても簡単に紹介しよう。フィスター氏によれば、モジュラー・コンピューティングによって、企業内のサーバ/ストレージ・リソースが各種アプリケーションの負荷に応じて最適に配分できるようになるため、今後の主流になっていくものと考えるという。また、モジュラー・コンピューティングの標準化については、APIレベルでの互換性を実現するに留め、ブレード・サーバの形状やインターフェイスなどについては時期尚早だと述べた。そのため、ブレード・サーバのバックプレーンは、当面はギガビット・イーサネットが主流となると述べていた。

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モジュラー・コンピューティングの構成要素
モジュラー・コンピューティングを実現するには、ハードウェアばかりでなく、ソフトウェアの対応も必要なことが分かる。自動化を実現するための各種ソフトウェアが今後の課題となると思われる。

 次ページでは、IDF Fall 2002 Japanの3日目の基調講演の模様を解説する。基調講演のテーマは、クライアントPCと通信の融合についてである。

  関連記事 
N1とモジュラー・コンピューティングで情報システムが変わる?

  関連リンク 
IDF Japanに関する情報ページ
 

 INDEX
  IDF Fall 2002 Japanレポート
  1.Intelが描く「融合」の世界とは?
    2.クライアントPCと通信の融合で変化するオフィス
    3.ショーケースでは「融合」を実現するためのコンポーネントを披露
 
目次ページへ  「System Insiderの解説」


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