解説

バックアップ・ツール「Norton Ghost」のお手軽度
――DVD±R/RWなどをサポートした「Norton Ghost 2003」――

1. 手軽なバックアップ・ソフトウェアとしてのイメージング・ツール

元麻布春男
2003/01/15

解説タイトル


 重要なデータやOSそのものをインストールしたハードディスクは、PCを利用する上での生命線だ。どんなに高性能なプロセッサを搭載していても、どれだけメモリを実装していても、ハードディスク上のデータが壊れてしまえば何の役にも立たない。近年、ハードディスクの信頼性が向上したことで、ハードディスクが「壊れやすい」デバイスだという認識が薄れつつある。しかし、可動部品で構成されるハードディスクは、いつか壊れる運命にある。そのうえ、ハードディスクが故障しなくても、操作ミスによるデータの消去、ソフトウェアのバグに起因する事故、さらには地震や雷といった天災、火事や落下といった人災など、データを失う可能性はいくらでも存在する。ハードディスクのバックアップは、ハードディスクの誕生と同時に生まれたテーマなのである。

ハードディスクが最適なバックアップ・デバイスである理由

 ハードディスクのバックアップに使うデバイスというと、一昔前までは個人であろうと企業であろうと、テープ・デバイスを利用するのが一般的であった。いまでもテープ・デバイスは、企業などのサーバのバックアップでは中心的な役割を担っているが、個人や小規模の事業所などで用いる機会はほとんどなくなってしまった。たとえサーバのバックアップにテープ・デバイスを用いる企業であっても、クライアントPCのバックアップにテープ・デバイスを用いることは、ほとんとないだろう。

 クライアントPCのバックアップにおいてテープ・デバイスが廃れてしまったことについては、さまざまな理由が考えられる。最大の理由は、ハードディスクの容量増大のペースに、テープ・デバイスの記録容量の伸びがついていけなかった、ということに尽きる。PCに搭載されたハードディスクの容量が数十M〜数百Mbytesであった時代には、フロッピー・インターフェイスやパラレル・インターフェイスを用いた、この容量に見合った安価なQIC(Quarter-Inch Cartridge:古くからあるテープ幅1/4インチのカートリッジ規格)対応などのテープ・ドライブが提供されていた。ハードディスクが数Gbytesの時代になっても、ATAPISCSIに対応したTravan(QICをベースに拡張したテープ・カートリッジ規格)やDDS(Digital Data Storage:音楽用のDATをベースにしたテープ・カートリッジ規格)などのテープ・ドライブがかろうじて生き残っていた。しかし、ハードディスクの容量が数十Gbytesになると、もはやこれに見合った記録容量のテープ・デバイスが安価に提供されることはなくなってしまった。テープ・ドライブは、ハイエンド・サーバ向けに特化し、エントリ・サーバやクライアントPCで利用可能な製品は次々と消えていったのだ。ハードディスクの容量が飛躍的に増大しながら、価格も低下するのに対し、テープ・デバイスの量産規模は絶望的なまでに小さく、ついに追いつけなくなってしまったからだ。

 テープ・デバイスに代わってクライアントPCにおけるバックアップ・デバイスの主役の座についたのは、ハードディスクとCD-R/RWや記録型DVDといった光ディスク・デバイスだ。特にハードディスクは、容量増大を続けるハードディスクを唯一、現実的な価格と時間でバックアップ可能なデバイスである。現在市場には、すでに1ドライブで250Gbytesの容量を持つハードディスクが登場しており、2003年には300Gbytesを超えると予想されている。記録型DVDであっても片面の容量は4.7Gbytesに過ぎず、200Gbytesのすべてをバックアップすることは現実的ではない。とはいえ、メディアを簡単にPCから分離して安全な場所に保管できること、ならびにメディア単価が安いというメリットは大きく、システムの初期状態の記録(自家製のリカバリCD/DVD)や重要なデータのバックアップに広く用いられている。

イメージング・ツールとは?

 バックアップ・デバイスが、テープ・デバイスのようなOSの標準コマンドなどで読み書きできないデバイスから、ハードディスクや光ディスクといった、直接アクセス可能なデバイスに変わったこと(光ディスクの場合、MOやDVD-RAMを除くとパケットライト・ソフトウェアが必要になるが)は、バックアップの手法にも大きな影響を与えている。専用のバックアップ・ソフトウェアなしでは、ファイルの読み書きができなかったテープ・デバイスに対し、ハードディスクならばファイルを単にドラッグ&ドロップするだけでバックアップ/リストアができるからだ。手軽なユーザー・データのバックアップなら、これだけでも済んでしまう。

 だが、ことシステムの起動を行うブート・パーティションのバックアップやリストアとなると、こうした手法ではできない。システム・ファイルが使用中でロックされているファイルの取り扱い、リストア時に稼動中のシステム・ファイルの上書きなど、単なるファイル・コピーでは処理できない多くの問題が生じるからだ。システムのバックアップには、やはり専用のバックアップ・ソフトウェアが必要となるが、バックアップ・デバイスの変化に伴い、バックアップ・ソフトウェアも大きく変わった。いわば、ハードディスクをハードディスクにバックアップする時代のバックアップ・ソフトウェアの登場である。

 この種のソフトウェアの特徴は、ハードディスクをドライブ単位、あるいはパーティション単位で丸ごとバックアップし、それを1つのイメージ・ファイルとして記録する点にある。このため、これまでのバックアップ・ソフトウェアとは区別して、ハードディスクのイメージング・ツール、イメージ・バックアップ・ソフトウェアなどとも呼ばれることが多い。記録されたイメージ・ファイルは、ファイル・サイズが大きいことを除けば、ごく普通のファイルと同じ感覚で取り扱うことができるため分かりやすい。

 現在、イメージング・ツールは、基本的な機能を持った個人向け(クライアントPC向け)と、高度なネットワーク機能やライセンス管理機能を備えた企業向けの2種類が存在する。企業向けのイメージング・ツールは、個人向けに対して機能的に上位互換であることが多い。逆に個人向けのイメージング・ツールは、企業向けに対する入門版的な色彩も持っている。少なくとも個人向けのイメージング・ツールに馴染んでおくと、上位版である企業向けのツールの導入においても参考になることが多いのは間違いない。

 現在、個人向けのイメージング・ツールで、市場において双璧となっているのがシマンテックの「Norton Ghost」と、ネットジャパン(PowerQuest)の「Drive Image」だ。両者にはそれぞれ特徴があるが、最も大きな違いを1つだけ挙げるとすれば、ブート・ディスクがフロッピー1枚で済む代わりに英語表示となるNorton Ghost、ブート・ディスクがフロッピー3枚におよぶものの表示が完全に日本語化されたDrive Image、ということになるだろう。両ツールとも、毎年のようにバージョンアップを行い、機能を拡張している。ここでは、2002年末にバージョンアップを行ったNorton Ghost 2003を取り上げる。

基本機能が英語のままのメリット/デメリット

 Norton Ghostは、シマンテックが発売する個人向けのイメージング・ツールだ。企業向けには、名称が少々紛らわしいが「Symantec Ghost」が用意されている。最新版であるNorton Ghost 2003は、当初2002年10月18日に発売予定だったのが、一度延期になり、12月に発売となった。今回のバージョンアップの特徴は、Windows上から利用可能なウィザードによる使い勝手の改善、仮想パーティション(後述)のサポートによるブート・ディスク起動の省略、書き込み先ファイル・システムとしてNTFSをサポート、ハードウェア・サポートの拡充といったところだ。

 Norton Ghostの本体は、DOS上で動作するGHOST.EXEというプログラムになる。上述したように、基本的には英語版のままなので、表示は英語となる(画面1)。そのため、日本語のフォルダ名やファイル名は文字化けしてしまう。また、表示が英語であることから、警告のような重要なメッセージを見落としがちになるので注意が必要だ。

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画面1 Norton Ghost 2003の本体であるGHOST.EXE
GHOST.EXEは、DOS上で動作するプログラムとなる。簡単なグラフィックス・インターフェイスとなっており、操作にはマウスが利用可能だ。
 
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画面2 GHOST.EXEの警告文
メッセージはすべて英語であるため、操作ミスに気をつけないと警告文を無視してしまい、パーティションなどを失うことになる。

 Norton Ghostは、バックアップとリストアをドライブ単位、パーティション単位、ファイル単位のそれぞれで行える。例えば、1つのパーティションをファイルにバックアップし、そのファイルをドライブ単位でリストアする、という使い方も可能だ。つまり、C:ドライブとD:ドライブの2つのパーティションから構成されるハードディスクのC:ドライブ(のあるパーティション)だけをバックアップし、それをドライブ単位でリストアすると、ハードディスクからD:ドライブのあるパーティションが消えてしまうことになる。このときC:ドライブのパーティション・サイズは自動調整される。パーティション単位のリストアを行う場合、画面上でパーティションへのリストアを選択し、C:ドライブのあったパーティションを選んでリストアしなければならない。しかし表示が英語だと、間違いを起こりやすい。実際、筆者自身も評価中に何度かこの間違いにより、D:ドライブに割り当てたパーティションを失っている。

  関連リンク 
Norton Ghost 2003の製品情報ページ
 
 

 INDEX
  バックアップ・ツール「Norton Ghost」のお手軽度
  1.手軽なバックアップ・ソフトウェアとしてのイメージング・ツール
    2.日本語対応のウィザード機能と充実したインターフェイス・サポート
 
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