解説

2004年のサーバ・プラットフォームを先取りする
―― IntelとAMDのサーバ向けプロセッサ戦略 ――

デジタルアドバンテージ
2003/08/06

解説タイトル


 2003年も半分が過ぎ、IT管理者はそろそろ2004年の情報システムについて計画を練り始めるころだろう。2004年にリプレイス対象となるサーバは、主に2000年前後に導入されたものだ。該当するサーバの多くは、OSにWindows NT Server 4.0を搭載したものやRISC/UNIXサーバとなる。これらのサーバを置き換える、もしくはこれから新たにサーバを導入する上で、どのプラットフォームを選択するのが最良なのだろうか。2003年後半から2004年前半までのサーバ・プラットフォームの動向を、主にプロセッサのロードマップから解説し、何を選ぶべきなのかを考えてみよう。

プラットフォームの変更が予定されるIntel Xeon

 Intelは現在、サーバ向けの32bitプロセッサとして、32bitのIntel XeonIntel Xeon MPの2種類をラインアップしている。Intel Xeonがデュアルプロセッサ向け、Intel Xeon MPが4ウェイ以上のマルチプロセッサ向けである(以下、デュアルプロセッサ用Intel XeonをIntel Xeon DPとする)。従来はIntel Xeon DPが、ほぼデスクトップPC向けのPentium 4と同等のコアを採用するのに対し、Intel Xeon MPは1Mbytesもしくは2Mbytesの3次キャッシュをプロセッサ・ダイに同梱しているという違いがあった。

 この違い、Intel Xeon DPが主にフロントエンド・サーバもしくはアプリケーション・サーバとして、Intel Xeon MPがバックエンド・サーバ(データベース・サーバ)として、それぞれ利用されることを想定し、それに最適化したためという。データベース・サーバでは、データベースのインデックスなどの局所性が高いデータをキャッシュすることで、大幅な性能向上が期待できるからだ。一方、フロントエンド・サーバやアプリケーション・サーバでは、データの局所性がそれほど高くなく、むしろ動作クロックを向上させた方がシステム全体としての性能が向上する。しかし、Intel Xeon DPにも1Mbytesの3次キャッシュを内蔵するバージョンがリリースされたことから、主な違いはデュアルプロセッサ向けか、マルチプロセッサ向けかになっている。

 こうした用途の違いから、IntelではIntel Xeon DPの性能向上を主に動作クロックの引き上げによって担ってきた。システム・バス(FSB)の動作クロックは当初の400MHzから533MHzとなり、プロセッサ・コアもサーバ向けにリリースされた2002年3月の1.80G/2.0G/2.20GHzから、2003年3月には3.06GHzにまで引き上げられている。この動作クロックの向上パターンは、ほぼデスクトップPC向けのPentium 4に沿ったものであり、Pentium 4のほぼ1四半期遅れで同等のIntel Xeon DPがリリースされている。つまりIntel Xeon DPは、パッケージなどの一部仕様が異なるものの、Pentium 4をデュアルプロセッサ対応にしたサーバ/ワークステーション対応版といえるのだ。

 ところが、2003年7月に発表されたIntel Xeon DPの動作クロックは3.06GHzに据え置かれ、代わりに1Mbytesの3次キャッシュを内蔵した。これまでの例からすれば、最新のPentium 4と同様、今回の発表でシステム・バスが800MHzに引き上げられるわけだが、それは見送られることになった。システム・バスやプロセッサ・コアの動作クロックを引き上げる代わりに、Intel Xeon MPと同様、3次キャッシュを内蔵したことで、既存のIntel Xeon DP-3.06GHzに対して10〜15%の性能向上を実現したという。

 想定される用途から考えると、プロセッサ・コアもしくはシステム・バスの動作クロックを向上させた方が効果的なはずだ。製造コストの面においても、ダイ・サイズが大幅に大きくなる3次キャッシュの内蔵よりも、すでにPentium 4の量産化で実績がある動作クロックの向上の方が有利なはずである。それにもかかわらず、3次キャッシュの内蔵を選択した理由について、Intel Xeon DPの記者発表会でインテルのエンタープライズ・プラットフォーム・マーケティング本部の廣田洋一氏に伺った。その回答を要約すると、「システム・バス・クロックを現在の533MHzよりも引き上げるためには、マザーボードを製造する上でいくつかの障害がある」ということだ。Pentium 4はすでに800MHz化しているが、これはシングルプロセッサだからであり、デュアルプロセッサ対応のIntel Xeon DPでは800MHz化は容易ではないという。また、システム・バスを引き上げると、同時にチップセットなどの変更も生じ、ひいてはプラットフォームそのものの更新とそのための各種テストが必要になる。それよりも、既存のプラットフォームが利用可能で、なおかつ性能向上が実現できる3次キャッシュの内蔵という手段が、インテルが持つ現在の選択肢の中では最良のものであった、と述べている。

 インテルはロードマップにおいて、次期Intel Xeon DPとして2003年末に90nmプロセス製造による開発コード名「Nocona(ノコナ)」で呼ばれる新しいプロセッサを投入することを明らかにしている。Noconaは、既存のプラットフォームに搭載可能で、1Mbytesの2次キャッシュを内蔵する。プロセッサ・コアの動作クロックも引き上げられる見通しだ。さらに、2004年前半にはPCI Expressを採用する新しいプラットフォームへの移行が予定されている。このことから、2004年にデュアルプロセッサ対応サーバを導入するタイミングは、冒険を避けるのであれば既存のプラットフォームに搭載可能なNoconaのリリース時点、新技術を積極的に採用したいのであればPCI Express対応チップセットのリリース以降ということになる。

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Intelのサーバ向けプロセッサのロードマップ
Itaniumプロセッサ・ファミリ(IPF)とIntel Xeonシリーズのプロセッサ単体の価格レンジはほぼ同じである。システム価格では、IPFの方が高く設定される傾向にあるが、その差は今後縮まっていくだろう。

 もう一方の32bitのサーバ向けプロセッサであるIntel Xeon MPは、2004年前半に3次キャッシュを4Mbytesに増やした開発コード名「Gallatin 4M(ギャラティン 4M)」が投入される予定だ。その後、2004年末に90nmプロセスで製造した開発コード名「Potomac(ポトマック)」で呼ばれるプロセッサがリリース予定となっている(Potomacの前に動作クロックを引き上げたGallatin 4Mがリリースされる可能性もある)。Potomacでは、キャッシュが増量されるほか、若干の機能拡張があるようだ。いまのところIntel Xeon MPに対しては、2004年中のプラットフォームの変更は予定されていない。Intel Xeon MPは、ほぼ半年ごとに製品がリリースされていることから、次はGallatin 4Mということになりそうだ。つまり、Intel Xeon MP搭載サーバについては、Gallatin 4Mのリリースが1つのタイミングとなるだろう。

 これまでサーバ向けの32bitプロセッサというと、事実上、Intelが独占していた。しかし、2003年4月26日にAMDがAMD Opteronをリリースしたことで、2004年は少し状況が変わってきそうだ。すでに、日本IBMや日本コンピューティングシステム、ビジュアルテクノロジーといったサーバ・ベンダがAMD Opteron搭載サーバの出荷を開始している。ただこれらのサーバは、主に64bitのハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)分野向けとして販売されているようだ。このようにAMD Opteronというと、64bitプロセッサとしての側面が強調されるが、Intel Xeon DP対抗の32bitプロセッサとしても十分な性能を誇っている。今後は32bitプロセッサとしてのAMD Opteronにも注目すべきだろう。

 
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AMDのロードマップ
2003年後半には、すべてのプラットフォームで64bit化が実現される。ただし、ノートPCやデスクトップPCでは当面、アプリケーション環境などが整わないことから、主に32bitプロセッサとして利用されることになるだろう。

 懸念材料としては、いまのところItaniumプロセッサ・ファミリ(IPF)対応の64bit版Windows Server 2003がEnterprise EditionとDatacenter Editionの英語版でしか提供されないことだ。2003年末に発表が予定されている開発コード名「Deerfield(ディアフィールド)」で呼ばれるデュアルプロセッサ向けItanium 2/低電圧Itanium 2では、フロントエンド・サーバやアプリケーション・サーバとしての利用が想定されている。こうしたサーバにEnterprise EditionやDatacenter Editionというのは、あまりにもオーバースペック(特に価格面で)である。より広くIPFが普及するためには、64bit版Windows Server 2003の広範囲なサポートは必須だろう。

64bitプロセッサ採用はトレンドか?

 IPFも3世代目に入ってラインアップが広がり、またAMDからも新たに64bit化したAMD Opteronがリリースされたことにより、ミッドレンジ・クラスのサーバにまで64bit化の波が迫りつつある。

 Intelは、2003年第4四半期に開発コード名「Deerfield(ディアフィールド)」で呼ばれるデュアルプロセッサ対応のItanium 2(以下、Itanium 2 DP)の出荷を開始する予定だ。Itanium 2 DPには、Itanium 2をデュアルプロセッサ対応したバージョンのほか、主にフロントエンド・サーバ向けとして消費電力を引き下げた低電圧版Itanium 2 DPをラインアップする。Itanium 2 DPの価格は、Intel Xeon DPに近いものになるといわれていることから、システム価格でもIntel Xeon DP搭載サーバの上位モデル並みが期待される。

 IPFは、Intel Xeon DP/MPに比べてトランザクション性能が高いため、特にデータベース系のアプリケーションでの利用に向いている。ただIPFは、既存のx86命令のアプリケーションも動作可能であるが、IFPの性能を活かすには、64bit対応が不可欠である。すでに32bitアプリケーションを利用している場合は導入の敷居が高い。一方、RISC/UNIXサーバからのリプレイスを考えている場合は、IPF(特にItanium 2 DP)+Linuxの組み合わせはコストパフォーマンスの点で魅力的かもしれない。IPFとIntel Xeon DPのどちらを導入するか、利用するアプリケーションや現在の環境などによって考慮が必要である。しかし、サーバの新規導入やアプリケーションの新規開発を含めたリプレイスを検討しているのならば、32bitプロセッサよりも高い性能向上が期待できるIPFも候補に入れるとよいだろう。

 もう1つの期待の64bitプロセッサであるAMD Opteronはどうだろうか(AMD Opteronについては「特集:x86互換の64bitプロセッサ「AMD Opteron」の実力と課題」を参照)。AMDは64bit化において、Intelとはまったく異なる方法を選択した。Intelがx86命令とは互換性を持たないEPICを採用したのに対し、AMDはx86命令の延長として64bit化する道を選んだ。この方法は、64bit環境が整わない間でも、32bitプロセッサとして利用できるという大きなメリットがある。一方で、IPFとの互換性を持たないため、AMDはAMD Opteronの64bitモードに対応したアプリケーションを独自に揃えなければならなくなった。IPFは、初代Itaniumをリリースしてから2年が経ち、64bit対応アプリケーションが揃い始めている。AMDは、ソフトウェア・ベンダに働きかけて、なるべく早くアプリケーションの対応を進める必要があるだろう。AMD Opteronの64bitモードに期待している場合は、対応アプリケーションの状況を見ながら導入を判断すべきだろう。 

コラム
HPC分野で導入が始まったAMD Opteron

 企業の業務向け64bitプロセッサ・サーバとしてAMD Opteronの市場導入を進めるためには、汎用アプリケーションの64bit対応は必須である。しかし、汎用のアプリケーションが必要ない分野では、高い演算性能と価格が評価され導入が進みつつある。同志社大学は、演算クラスタリング・サーバとしてAMD Opteron搭載サーバの導入を発表している。また日本IBMは、独立行政法人産業技術総合研究所が構築するクラスタ・システム向けに1058台のAMD Opteron搭載サーバを納入するとしている。このようなHPC分野では、Linuxを採用したクラスタ・システムが主流になりつつある。この分野は、これまでAlphaプロセッサが強かったが、Hewlett-Packardが2005年をメドにIPFへの移行を宣言しており、その代替としてAMD Opteronに注目が集まっているようだ。

64bitプロセッサ普及のカギはOS

 2004年は、Itanium 2 DPやAMD Opteronの本格的な普及により、ミッドレンジ・サーバにおいても64bit化への移行が行われそうだ。しかし、その阻害要因としてOSの対応が挙げられる。現在マイクロソフトは、IPFに対して64bit版Windows Server 2003を提供しているが、それはEnterprise EditionとDatacenter Editionの英語版に限定されている(Standard EditionとWeb Editionは用意されていない)。これは、Windows Server 2003のService Pack 1のタイミングで対応が行われるAMD Opteron対応版も同じだ。その上、パッケージでの販売はなく、ボリュームライセンスもしくはOEM(サーバ・ベンダ)からの供給となっている。たとえ安価なIPF搭載サーバやAMD Opteron搭載サーバが登場してきても、Windows Server 2003のStandard EditionやWeb Editionがなければ、普及はおぼつかないだろう。もちろん、64bit版Linuxという選択肢もあるが、Linux/UNIXの管理が可能な管理者はそれほど多くない。「Windows Serverならばユーザー管理程度は可能だが、UNIXとなると……」という管理者が増えており、それが企業のLinux導入の障害になっている、という話をSIerから聞く。64bitプロセッサ搭載サーバの普及のカギは、意外とマイクロソフトの対応が握っているのかもしれない。記事の終わり

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