解説

IDF 2003 Fallレポート
4つのTでIntelがサーバとPCを変革する

1. 発表間近のPrescottが展示されなかったIDF

元麻布春男
2003/10/09

解説タイトル


 2003年9月16日から18日の3日間、Intelが主催する開発者向けのカンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)2003 Fall」が、米国カリフォルニア州サンノゼ(San Jose)で開催された。IDFでは、次世代のサーバ/クライアントPC向けの技術や規格などが披露される場でもある。サーバ/クライアントPCの導入に失敗しないためにも、その次世代の姿を把握しておくことは重要だ。そこで、ここではIDF 2003 Fallで披露された技術やプロセッサ・ロードマップを中心に紹介していく。

発表間近なるも、なぜかPrescott不在のIDF

 2003年第4四半期中には、デスクトップPC向けの「Prescott(開発コード名:プレスコット)」と、ノートPC向けの「Dothan(開発コード名:ドーサン)」で呼ばれる90nmプロセス製造による初のプロセッサの出荷が開始されるといわれている。そのリリースを直前に控えたIDFということで、これらに関する詳細な情報の開示が期待されていた。しかしフタを開けてみると、PrescottやDothanに関して新たに公開された情報は極めてわずかであった。

 特にPrescottは、単なるシュリンク(製造プロセスを単純に微細化したもの)や動作クロックの引き上げだけでなく、「Prescott New Instruction」と呼ばれる新たな12個の命令が追加されることが明らかになっている。当然、製品発表直前のカンファレンスなので、これら新命令を使ったアプリケーションの効率化といったテクニカル・セッションやハンズオン・ラボ(実機をベースとした技術解説)があると思われた。またPrescottは、Hyper-Threadingテクノロジの強化などマイクロアーキテクチャの拡張も含むことから、こうした拡張部分についての概要説明があってもおかしくなかった。今回、こうした説明がなかったのは、これまでのIDFからすると少々異例であると感じた。

 そもそも今回のIDFは、前回までの4日間開催が3日間に短縮されたものだった。4日間といっても初日は午後から、最終日は午前中までというスケジュールであったため、実質的な開催日数に違いはないのだが、前回までとは異なり、今回は明らかに1日の終わりが早かった。前回までは最終のテクニカル・セッションの終了は19時近くになることもあったのに、今回は17時過ぎにはすべてのセッションが終了している。直前にセッションの数が減らされたのではないか、という印象を拭い去ることができない。

基調講演のポール・オッテリーニ社長
今後もインターネット・ユーザーが爆発的に増加すると述べた。

 異例ということでは、基調講演も例外ではない。2日目と3日目の基調講演が朝8時にスタートするのはこれまでどおりであったが、冒頭を飾るポール・オッテリーニ(Paul Otellini)社長の基調講演は朝9時開始とゆったり。しかも、2番目のデスクトップ・プラットフォーム事業部のルイス・バーンズ(Louis Burns)副社長による基調講演は、一般のテクニカル・セッションをはさんだ午後に設定された。これまでだったら、基調講演は午前中に2つ並べられるところなのだが、開始を1時間遅れせた影響で変則的な形になってしまった。加えてそのテーマは「デジタル・ホーム」と、ビジネス・デスクトップの話題はそっくり抜け落ちている。

 こうした基調講演の偏りについて、IDF終了後、デスクトップ・プラットフォーム事業部のウイリアム・スー(William M. Siu)副社長にたずねてみた(デスクトップ・プラットフォーム事業部とモバイル・プラットフォーム事業部はともに、2人のジェネラル・マネージャ兼副社長により率いられている)。その答えによると、今回のIDFおける基調講演でデスクトップ・プラットフォーム事業部は、主に利用モデルにフォーカスすることにしたのだという。「ロードマップについては、OEMにはそれぞれ個別に告知しており、改めていう必要はないのではないかと考えたから」ということであった。

 しかしそういってしまうと、これまでのIDFの基調講演は何だったのか、ということになる。これまでもOEMには個別にロードマップを告知してきたし、それがときにWebサイトなどで暴露されてきたのは、広く知られた事実だ。また、それではこれまでの通例どおり基調講演でロードマップのアップデートを行ったエンタープライズ・プラットフォーム事業部の立つ瀬がなくなる(?)というものだろう。

 Dothanについても状況はほぼ同じだ。モバイル・プラットフォーム事業部のアナンド・チャンドラシーカ(Anand Chandrasekher)副社長の基調講演で触れられたものの、その詳細についての説明はついに聞かれなかった。こちらもキャッシュの増量だけでなく、アーキテクチャの強化も含まれているハズなのだが、それに関する情報は伏せられたままだ。PrescottにせよDothanにせよ、まったく新しい製造プロセスを用いた新しい製品であり、本来ならIntelとして大々的に発表したいハズである。使い古された演出だが恒例となった、動作クロックを次々と上げて性能を強調する「クロック・アップ・デモ」の1つも基調講演でやっておかしくない。それがなかったというのは、何かが起こっていると考えて間違いないだろう。

 同様のことは併設の展示会でも見られた。こちらにも、きれいサッパリとPrescott/Dothan関連の展示はなく、PCI Expressのデモはわざわざデュアルプロセッサ・サーバ向けのプロセッサである「Nocona(ノコナ)」と「Lindenhurst(リンデンハースト)」チップセットならびに「Tumwater(タムウォータ)」チップセットで行われた(名前はいずれも開発コード名)。マザーボードの新規格「Bigwater(開発コード名:ビッグウォータ)」改め「BTX」の展示も、ケースや電源ユニットが無造作に置かれているだけで、実機は現行のPentium 4/Intel 875Pチップセット・ベースのコンセプト・プラットフォームのみであった(BTXの詳細については後述する)。2月に開催されたIDF 2003 Springに比べて後退した印象さえある。展示会場にあったPrescottをうかがわせるような展示は、おそらくすべてモックアップ(実物そっくりに作った模型)だったのではないかと思われる。基調講演、テクニカル・セッション、展示会とも、直前になってPrescott/Dothan関連の内容を全部引き上げた、という印象さえ受けた。

Tumwaterのデモ・システム
グラフィックス用のx16 PCI ExpressスロットにATI Technologies製のカードが実装されていた。

突然発表されたPentium 4 Extreme Edition

 Prescottの代わり、というわけでもないのだろうが突然発表されたのが、「Pentium 4 Extreme Edition(Pentium 4 EE)」だ。ルイス・バーンズ副社長の基調講演で飛び出したPentium 4 EEは、既存のPentium 4-3.2GHzに2Mbytesの3次キャッシュを内蔵した構成のプロセッサである(従来のPentium 4は2次キャッシュまで内蔵)。同様な構成のプロセッサには、Intel Xeon MP(開発コード名:Gallatin)が存在することを考えれば、3次キャッシュを追加したというよりも、GallatinコアをPentium 4の478ピン・パッケージに押し込んだものとも考えた方が分かりやすいだろう。

 Intelの説明によるとPentium 4 EEは、既存のPentium 4とピン互換で、メモリなどのユーザー資産はそのまま継承できる。位置付けとしてはマニア向け、特にPCゲームのマニアをターゲットにしているという。通常のメインストリーム向けのプロセッサは、ハイエンドから導入が開始され、時間の経過とともに下位のセグメントに降りてくが、このPentium 4 EEは、あくまでもハイエンド向けで、下位のセグメントへ降りてくることはないニッチ市場向けプロセッサだ。

 過去にこのような製品をリリースしたことのないIntelが、Pentium 4 EEをリリースした真意は何なのだろうか。すぐ思い付くのは同じくサーバ向けプロセッサの派生型である「AMD Athlon 64 FX-51」対抗ということだ。しかし、もう1つ考えられるのは、「Prescottの遅れをカバーするためのプロセッサ」というものである。Intelの計画では、現行のPentium 4-3.2GHzの次は、Prescottで性能を引き上げることになっていた。Prescottが遅れるということは、長期に渡ってプロセッサの性能が停滞してしまうことにつながる。Pentium 4 EEはそれをカバーするもの、という見方だ。

 こうした状況にもかかわらず、Intelの役員は90nmプロセス製造によるプロセッサの出荷スケジュールは、2003年第4四半期で変わらないといい続けている。もちろん第4四半期といっても10月から12月まで幅がある。Prescott/Dothan関係の情報が極端に少なかったこと、Pentium 4 EEが投入されるタイミングからいって、すでにクリスマス商戦には間に合わず、出荷可能だとしても年末ギリギリに近い線になる、と筆者は予想する。もしかすると、発表は年内に間に合っても、実質的な製品出荷は年明けになるのかもしれない(最悪の場合、年内に間に合わないことも覚悟はしているだろう)。ただ、Intelはまだ年内出荷を完全に諦めたわけではない、ということだと思われる。

 次ページでは、Intelが次世代プラットフォームの開発で、現在最も力を入れている「4つのT」について解説する。

 

 INDEX
  IDF 2003 Fallレポート
  4つのTでIntelがサーバとPCを変革する
  1.発表間近のPrescottが展示されなかったIDF
    2.Intelが注力する「4つのT」とは
    3.サーバもPCI Expressへ移行
    4.PCI ExpressとBTX規格がクライアントPCを変える
 
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